君は俺の×××

Happy Birthday! TO.ゆかsan



好きになる女の子が毎回同じだった。
でもみんなケンのが好きだっていう。
だから俺は毎回負けっぱなし。
ケンは俺の幼なじみで、とにかくいい奴だ。
贔屓目なしにしても格好いいし優しい。
毎回好きな人が同じなのに抜け駆けしないで告白されたら毎回断ってる。
理由は下校するときに俺が1人じゃ寂しいからだって俺のせいにするけど。
小学校から高校まで毎日一緒に下校してるからそら少しは寂しいけどすごい寂しいわけじゃないのに。

「あゆみちゃんって可愛いよね」
「うん。優しいしね。この間ノート貸してくれた」
「俺調理実習で作ったお菓子もらった」
「ノブうらやましいー」

今好きなのは同じのクラスのあゆみちゃん。
またケンと被った。
ケンと違って俺は背も低いし運動もあまり得意じゃなくてさらには馬鹿だ。
また勝ち目はないけど、でもあゆみちゃんが好きだった。
髪を後ろでお団子にしてて、うなじがちょっとエロい。
じっと見てると触りたくなるからあまり見ないようにしてる。
健全な高校男児ならこの気持ちがわかるはずだ。

「ケン、あゆみちゃんに告られたらどうすんの?」
「付き合わないよ?」
「なんで?付き合えばいいじゃん」
「ノブが寂しいでしょ」
「またそれかよ!寂しくない!」
「またまたー」

なぁんて言いながら笑って帰宅した次の日。
告られたのはケンじゃなくて俺だった。

「ノブくん、私と付き合ってほしいの」
「え、あ、あ・・・・・俺?」
「うん?」
「ケンじゃない、の?」
「どうしてケンくんなの?」
「そ、そうだ、うん。そうだよね」

まさかの事態に頭がパニック。
笑えるぐらいに目はキョロキョロしてるし顔は引きつる。

「ダメ?」
「ダメじゃない!」
「ホント?」
「うん!お願いします!」

テンション上がって浮かれまくって頭の中はお祭り騒ぎ。
嬉しくてたまらない!
クラスメイトにも、もちろんケンにも報告。
教室で携帯ピコピコしてるケンに飛びついてやった。

「ケン!あゆみちゃんに告られた!」
「マジで?!」
「うん!うわぁもう俺どうしよう!」
「落ち着いて!とりあえず離れて!」

ケンから離れてあゆみちゃんと結ばれるまでを多少の脚色交えて報告。
ケンは笑いながら話を聞いてくれて餞別だとパックの牛乳をくれた。

「なぜに牛乳?」
「大きくなるように」
「嫌味!」
「あはは!ごめんごめん!」
「少しでかいからってこの野郎ー!」

それから当たり前のようにケンと帰ろうとしたらあゆみちゃんに呼び止められた。
ケンは俺の肩を叩いてまた明日と言って先に帰った。
あ、そうか。
今日からケンと帰らないのか。
それから俺はあゆみちゃんと並んで帰った。
何を話したらいいかわからなくて愚痴っぽいことを話した。
担任とか進路とか、つまらない話。
でもあゆみちゃんは笑って話を聞いてくれた。
腕や肩が当たる度に顔を赤くして、別れ際に手なんか振って。
むず痒い桃色の青春。



あゆみちゃんと帰宅し始めて3週間。
楽しいはずなのに何か物足りない。

「ケン」
「何ー?」
「俺等倦怠期かも」
「早い!」

説教してくるケンに相槌を打つ。
倦怠期じゃなければなんなんだろう。
相変わらずあゆみちゃんのうなじにはドキドキするし手を繋げば息も止まりそう。
でもなんだか違う。
ケンはまた俺に牛乳をくれた。

「大きくなーれ」
「また馬鹿にしてる」
「してないしてない」

ケンは俺の前の席に座る。

「あんまり悩んでも良いことないよ」
「うー・・・ん」
「あゆみちゃん好きなんでしょ?」
「うん」
「じゃあ大丈夫だよ!」

笑っているケンを見たらなんだかほっとした。
握っていたら生暖かくなった牛乳を飲んで、匂いをガムで消してあゆみちゃんと帰宅する。
あゆみちゃんはやっぱり可愛いくて、俺には勿体無いぐらいだ。
爪もつやつや、唇もぷるぷる。
どこもかしこも柔らかそう。
それから親もいないし暇だから俺の家で遊ぶことにした。
俺の部屋で足を投げ出して座るあゆみちゃん。
手を握って唇にはじめて触った。
ちょっとした違和感を感じたけど頭は次の事でいっぱい。
慌てるようにおっぱいに触って。
それから俺は飛び退いた。

「ご、ごめん」
「ううん。別にいいよ」

俺がよくなかった。

「わ、悪いんだけど、悪いんだけどさ・・・今日は帰ってくれる?」

あゆみちゃんは笑って気にしないで、と言っていなくなった。
部屋に残ったのは俺1人。
さようなら、あゆみちゃん。
君は俺のアイドルだった。
俺は携帯も財布も持たずに部屋を、家を飛び出した。
向かった先は走って2分の幼なじみの家。

「ど、どうした?」
「入っていい?」
「いいけど。部屋にいて、飲み物取ってくるから」
「うん」

漫画とゲーム、雑誌で少し散らかるケンの部屋。
柔らかい雰囲気はない男の部屋だ。
俺はケンのベッドに潜り込んで息を吸う。
枕はケンのシャンプーの匂い、布団はケンの匂い。
部屋に飾るカレンダーはおばさんが保険会社からもらったオマケのカレンダー。
可愛いものは何もないケンの部屋。

「ポテチ持ってきたんだけどって眠いの?」
「ううん」
「どうした?言わなきゃわからなーい」
「いだだだだ」

俺の頭をぐりぐりと撫で回して、ケンが背中に倒れ込んできた。
重い。

「ケンって今誰が好きなの?」
「今はいないかなー」
「あゆみちゃんは?もういいの?」
「自分の彼女を譲るのかー?」
「いいよ。譲っても」

真剣な顔して言ってみた。

「いらない」

真剣な顔して返された。

「ケンさぁ、あゆみちゃんのどこが好きだったわけ?」
「優しいとこ」
「麻衣子ちゃんは?」
「優しいとこ」
「葉月ちゃんは?」
「優しいとこ」
「じゃあ俺は?」

言葉に詰まった。
ケンは少しの間目を泳がせて、それから俺を見る。
もう目は泳いでない。

「牛乳が効いた?」
「そうかも」
「身体は小さいままのくせにー」
「これから身体はついてくるんだ!」

俺を押さえつけるようにしての照れ隠し。
長い付き合い、よくわかってる。
柔らかいおっぱいに触った時には違うって思ったのに今はこの硬い胸板がたまらなく安心する。
甘い匂いは全然しないけどこの匂いが好き。
背中だって硬いし脇腹も腹筋も足だって硬い。
香水の匂いもしない。
ケンは俺の何になるんだろう。

「ちょ、ちょっ離れて」
「いいじゃんー。今更何を気にすんの?」
「お前、頭成長してない!」
「うぶっ!なんだよ!」

身体を起こせばケンは前屈み。
まさかと覗けばズボンの前が不自然に膨らんでる。

「う、嘘・・・」
「ノブだって勃ってるからな」
「・・・へ?」

自分のを見てみればケンに言われた通りになってた。
っていうかケンより上向いてる気がする。
ケンに触っただけで勃起とか・・・・・変態の仲間入り?
一気に恥ずかしくなってケンの布団に潜る。
さ、最低だ・・・!

「ノブはさ、あゆみちゃんいいの?」
「うん。いい」
「俺男だよ」
「俺も男だよ」
「そう、だけども」
「あゆみちゃんに触ったらなんか違った」

布団から顔だけ出してケンを見ると情けない顔してた。

「でも俺ケンに触ったら勃起しちゃった」
「笑うとこ?」
「だって俺の答えはそれだもん」

潔いなぁって笑うケンはやぱり格好良かった。

「俺と付き合って下さい」
「もちろん」

これで君は俺の恋人。



「あ・・・」
「何?」
「俺、まだあゆみちゃんと別れてない・・・」
「え・・・」
「俺今ナチュラルに二股?」
「そうなるね」
「あはは・・・許し」
「ません」
「ダ、ダヨネー・・・」




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