ComingOut:79

夏休みも終盤、2泊3日で俺の別荘へ来た。
文字通り俺の所有物だったりする。
まぁ未成年だから今のところ父親が管理はしているんだけど。
細かく言えば真壁さんが管理しているんだけど。

「う、運転手さん・・・もう少し優しく運転を・・・」
「我慢しろ、佐藤。後少しだ」

電車で最寄り駅まで3時間、駅からタクシーで1時間。
駅近くのスーパーで買い物をしてタクシー2台に別れて移動中。
そして後部座席に横たわる佐藤は瀕死だ。
吉田の膝枕で佐藤は背中をさすられながら吐き気と戦っている。
ちなみにはしゃぎ過ぎた連中が別のタクシーだ。

「山下・・・まだか・・・」
「まーだー」

ものの数分とたたずに佐藤が音を上げた。



佐藤が何度も吐きそうになっていたがなんとか吐かずに別荘へついた。
佐藤は吉田に肩を借りて引きずられるようにしてタクシーを降りる。
久しぶりに来たが先月父親が来たし、真壁さんがハウスクリーニング手配してくれたから中は綺麗だ。
とりあえず佐藤をトイレへぶち込んで冷蔵庫に買ったものを詰め込んでいく。
移動に大分時間を使ったし今日の予定はプールで遊ぶことだけ。
メインは明日の海だ。
おそらく時期も時期だし誰もいないからほぼ貸し切り。

「とりあえず窓開けて」
「2階はー?」
「2階も。あ、あとベッド確認してきて」
「シーツ?」
「そうそう。鈴木、プールはまだだぞ」
「原田もだよ」
「「はー・・・い」」

すでに海パンの用意をしている馬鹿共を吉田と中村に任せる。
2階がバタバタうるさくなった頃に佐藤が死にそうな顔をしながらトイレから戻ってきた。

「お前先に着替えろよ」
「もうプール行くの?」
「鈴木と原田はそのつもりらしいぞ」
「俺少し休んでから行くわー」

リビングのソファーに倒れ込むようにして佐藤が沈んだ。
山道を1時間は地獄だったらしい。
換気をしていた連中も戻ってきて各々着替え始める。
恥らいをどこかへ忘れてきた奴等ばっかりなのでリビングがケツだらけだ。
とりあえず手当たり次第に叩いてやった。
あ、中村が1番いい音する。

「痛っ!ちょ、止めろ!痛い!」
「いやぁ、いい音」
「腫れるだろ!い゛っ痛っ、マジテメェゴルアァァ!!!」

反撃される前に鈴木でガード。

「痛い!中むっ痛アアァ!ちょっ俺、関係ない!」
「沈め」
「「あぅ・・・!」」

鈴木と俺の股めがけて足が振り上げられた。
金的は、反則だろぉ・・・。

「クリーンヒットだったね・・・」
「見ただけでちんこ縮んだんだけど見る?」
「見ない。汚い」
「汚いとはなんだ!むしろ聖域だろうが!」

覚えてろよ、クソチビ。
タマの痛みが引いてきたところで俺も着替える。
原田がビーチボールを膨らませている間に荷物を簡単に片付けた。

「佐藤も早く来いよー」
「うんー」

プールは2階から行けるようになっている。
さすがに事前に掃除を頼んでいただけあって綺麗だ。

「ひゃっほおおぉう!」
「しゃああぁぁい!」

奇声を発しながら鈴木と原田が飛び込んだ。
・・・浅いんだがな。

「「ケツ打ったアアアァァァ!!!」」

ほらな。
健康志向の吉田だけちゃんと準備運動をしてからプールへ入った。
とりあえず何をするでもなく浮かんでみる。
泳ぐには小さいプールだからな。

「いやー・・・持つべきものは金持ちの友達だな・・・」
「わかるわかる」
「毎年別荘借りれるもんなー・・・」
「タダだしなー・・・」
「お前ら全員沈めてやろうか」

人の価値を金で測りやがってこの野郎。
とりあえず隣で浮かんでいた鈴木の上に乗って沈めてやった。
それから吉田の足を引っ張ってやる。
溺れてしまえ。

「ぶほぉ!あ゛ー!!!鼻痛い!」
「じぬ゛がどおぼっだだ・・・」
「死ねばよかったんだ」

浮上してきた2人を放置して残り2人を沈めてやろうと思ったらプールからあがってやがった。
チッ・・・行動が早いな。

「佐藤来ねーなー」
「相当気分悪そうだったからな」
「飯食ってからの1時間の車移動が堪えたんだろ。よっと」
「ちょっと山下さあああん!落ち着いてってこの野郎オオオォォ!!!」

ドボンと言う音とともに中村がプールの底へ消えた。
俺でも中村を抱えるぐらいはわけない。
次は原田なんだがアイツでかいしな。

「吉田、上がって来い」
「何するの?」
「原田沈めるから」
「わかったー」
「ちょっと吉田くううぅん!わかったじゃないよね?!わかったじゃないっ!」

足は俺の方が早い。
ソッコーで原田捕まえて背中をのけぞらせると吉田に足を持たせる。

「いいか吉田、プールサイドに背中をぶつける感じで落とすんだ」
「大怪我!大怪我だよ、山下くん!」
「ちょっと暴れないでよ。プールサイドに落とすよ、マジで」
「ごめんなさい!やさしくなげぶべらっ」
「あ、手が滑った」
「はっ原田アアアアアァァァ!!!」

思わず手がつるりと滑って頭から落とした。
吉田が足離したからぎりぎり頭は打ってない気がするんだけどまぁ馬鹿だから頭打ったぐらいでちょうどいいよな。
しばらくしたらザバーっと海坊主よろしく原田がプールから出てきた。

「背中打った・・・」
「おお、割と平気そうだな」
「頑丈だね、ホント」
「俺じゃなかったらアウトだったからな!」
「すまんすまん。許せ」
「ちょ、まっまっあ゛あ゛あ゛ぁぁ!!!」

原田の顔に向かって飛び込んだ。
ドスっと音がしてまた原田がプールに沈んだ。
自分の股から原田が這い出てくる。

「ばじで、ゆ゛る゛ぜい゛っでるやづの行動じゃねぇ・・・」
「お前ホント頑丈だな」
「あのね、山下くん!一応言っておくけども俺だって死ぬんだよ、人間だもの!」
「え?お前自分を人間だと思ってるのか?」
「「「すごいびっくりー」」」
「アレーなんだろーこれー?どうしてハモったのかなー?」

えーえーうるさい原田を放置して中村と鈴木の水中ドッジボールに混ざる。

「負けたらどうする?」
「犬神家」
「鼻痛そうだな」
「よし、いくぞー!」

吉田と原田も混ざって本気で投げる。
本気で投げても所詮はビーチボールだから上手いこといかない。
ようやく投げたボールが鈴木の顔面にブチ当たった。

「ちゃんと逆立ちしろよー」
「わかってるよ。金的すんなよ」
「え?フリ?」
「違ぇよ!」

鈴木が水に潜って逆立ち。
大爆笑していたらようやく佐藤が来た。

「何やってんだ?」
「「「「犬神家!」」」」
「質問を間違ったな。どうしてそんなことをしているんだ?」
「「「「罰ゲーム!」」」」
「馬鹿やってるんだな。もう喋るな」

佐藤はどっと疲れた顔をしている。
っていうか着替えてねーじゃん。

「お前泳がねぇの?」
「あぁ。今日はいいや。飯作ってた」
「食う!」
「じゃぁ用意するから犬神家してる馬鹿も引き上げとけよ」

鈴木を引き上げてプールサイドに移動。
佐藤が全員分の飯を持ってプールサイドまで来た。
今日は簡単にカレーだ。
本当は皆で飯を作るつもりだったが佐藤の気分転換になったらしい。
まぁ俺等は楽だしいいけどな!

「もう晩飯?早くねぇ?」
「まぁ腹減ったけど」
「とりあえずだ。どうせ夜飲むんだろ?」
「夜はつまみだけー?」
「腹減ったらカレー残ってるし食えばいい」
「なぁ食べていい?まだ駄目?」
「もう少し待て。飲み物持ってくるから」

びしょびしょの身体をとりあえずタオルで拭いておく。
海パン脱いでタオルを腰で巻いた。
よし、スッキリ。
プールサイドのテーブルに椅子を追加して佐藤を待つ。

「ウー茶とコーラでいいよな?」
「OKー!俺コーラにしよー」
「山下、俺にもコーラ」
「鈴木、中村、食べていいぞ」
「「いただきます!」」

海を見ながらガツガツとカレーを食べて涼む。
暗くなる前でよかったな。

「いやー、金持ちの夏の過ごし方体験だな」
「BBQじゃなくてカレーだけどな」
「プールサイドでBBQするには準備が足りなかったな」
「明日の晩飯BBQにしようよ」
「馬鹿を言え。3日分の食材を買っただろうが」

次は必ずBBQセットも持ってこよう。
っていうか置いといてもらおう。
別荘の管理している人に言えばよかったんじゃなかったかな。
真壁さんに頼んでおけばよかった。

「佐藤、おかわり」
「おかわり」
「テメェでしろ」
「「濡れてる」」
「甘えるな!」
「「ママー!」」
「黙れボケエエエェェ!!!」

佐藤は盛大に舌打ちをしてからおかわりを頼んだ鈴木と中村の皿を持って下へ降りた。
それから戻ってきた佐藤に俺と原田がおかわりを頼んで皿を渡した。
結局佐藤も吉田もおかわりをして夕飯が終了。
片付けをしている佐藤を放置で全裸で泳いでからプールからあがった。
テンションも上がって調子に乗って片付けをしている佐藤に水をみんなで掛けた。
佐藤に殴られたのは言うまでもない。




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