09:お茶とお菓子の罠

「クラス役員は委員長が町田裕二、副委員長が柏木一星、書記が間々原充で決まりだ。頑張れよー」

よし、なれた・・・なれたぞ書記・・・!
立候補の時に手を挙げただけだったけどなれたっ!

「他の役員も頑張れよー。美化委員は明日さっそく校内清掃だから朝7時に校庭だからな。じゃ、役員も決まったし部活については配られた冊子を参考に各自で見学に行けー」

そして夏木先生はすばらしく適当だった。部活紹介については冊子を配っただけで説明らしい説明もなく終わった。ちなみにオリエンテーション開始時にはジャージになっていた。絶対スーツ嫌いなんだ・・・。
どうやら部活動紹介は今から放課後にかけて回るらしい。

「ああ、柏木は今から職員室だ」
「はい」

おそらく部活の話だろうな。イッセイはようやく正式に部活が決まるらしい。

「じゃ、解散。みんな気をつけてまた明日な、柏木行くぞ」

イッセイは僕と委員長の方に小走りで来た。

「じゃあまた後で。遅くなるだろうから先帰ってて。その時は夕飯の時にでも部活の話聞かせてね」
「わかった。じゃあ俺らは寮のラウンジにでもいるよ」
「頑張ってね!」

イッセイはイケメンスマイルフラッシュをばらまきヒラヒラ手を振ると夏木先生を追いかけていった。さ、爽やかだ。

「よ、よし!茶道部にいざ参らん!」
「ははっ間々原意気込みすぎ!」

委員長に笑われた。今日は委員長に笑われてばかりだ。

「さ、さ、さ・・・あった茶道部」
「どこどこ?」

──────────────────
●茶道部
──────────────────
楽しく、ゆっくり
日本の伝統を学びませんか?
お茶菓子用意して待ってます!

活動場所:二号館4F 茶室
──────────────────


「委員長!お菓子だって!」
「期待しない方がいいよ。コンビニの和菓子バラエティパックだから」
「お団子!麩菓子!ポテチ!」
「ポテチは和菓子じゃないだろっ」

委員長っ・・・好きだっ!
無駄に笑ってお腹が痛い。クラスのみんなが冷ややかな目で見ていた。・・・気にしないでおく。

「あっそう言えばヨシキが終わったら迎えに来る言ってたんだ」
「そうなの?じゃあ高岡君のとこ行ってから行こうか。何組?」
「8組!」



8組まで来て思ったんだけど僕他のクラスに訪ねるとか初めてかもしれない・・・!極力教室の隅で目立たないようにしてたもんな。・・・わがままになっていく女の子が怖くて。
化粧品とか香水とかなんかケバいしみんな女王様みたいでこ、怖かったんだ!特にイッセイの取り巻きは恐ろしかった。
8組はまだオリエンテーションが終わってないらしい。ヨシキたちのクラスの担任はビシッとしたなんか真面目そうな先生だった。夏木先生と真逆だ。

「くーるびゅーてぃーな先生だね」
「間々原、意味分かってないでしょ」
「テへ★」

ペコちゃんのモノマネをしたら委員長が廊下に沈んだ。・・・このネタいけるかもしれない!必死に練習したかいがあった。

「あ、終わったみたい」
「ハァハァ・・・ま、間々原そのネタ笑い死ぬ」
「テへ★」
「おおぉぉぉ!笑い死ぬ・・・!」
「・・・何してんだ、お前等」
「あっヨシキ!テへ★」
「「・・・」」

一緒にいた西君にもドン引きされた。このネタ封印しよう。
でも委員長は悶絶してた。

「あのね、部活見学行こうと思って!ヨシキたちは部活決めた?」
「とりあえず文化はパス。性に合わないし。運動部見学に行く」

さすがだ。運動得意そうだもんなあ。

「西君は?」
「俺はバスケかな。中等部もバスケだったんだよん」

ふと西君を見る。

「・・・バスケしたら西君ぐらいに背が高くなるのかな」

委員長と一緒にじーっと西君を見つめる。西君も背高い。まあ僕からしたら大半が背高い人なんだけども。

「あー・・・たしかにジャンプしたら高くなるとは言うけども・・・君らはもう無理なんじゃ・・・」

委員長と二人で廊下ににめり込んだ。無理とか・・・もう無理とか・・・!

「いや、伸びる!まだ伸びるんだと思うんだけどさ!無理してバスケやらなくても、ね?それに向き不向きもあるし・・・」
「確かに。僕バスケできないし」
「俺その場でドリブルなら・・」

委員長、ソレできないって言うんじゃ・・・。

「まあ僕に運動部は無理だから茶道部でお茶してくるよ」
「部活見学な、間々原」
「俺らはバスケと後はサッカーかな。俺はサッカーのが得意だ」
「へー!ヨシキもサッカーするんだ!」
「“も”?」

ヨシキに睨まれた・・・!顔がっ・・顔が恐ろしい!このアングルだと余計に恐ろしい!

「柏木がサッカーかバスケらしいんだ。ンでおそらくサッカーなんじゃないかって」

僕の代わりに委員長が説明してくれた。

「スポーツ推薦枠らしくてさ、サッカーもバスケも強化合宿参加してたとかで。まだ正式に部が決まってないって事は顧問で取り合いになってるんじゃないかな」
「そうそう!イッセイすごいんだよ!中学の時からスポーツはなんでも得意でね」
「柏木はさらりと格好いいよなあ」
「なー」

委員長と二人でイッセイ自慢をしていた。自分のことではないが鼻が高い。
ヨシキと西君が無口になった。二人とも無表情だ。

「高岡、俺もサッカー部見学行くよ」
「そうか。早いとこ行って殺らなきゃな」
「そうだね。選抜が何だってんだ」

そんなにサッカーしたいのかな。目が本気だ。

「じゃあ柏木もいるだろうし、茶道部見学終わったら見に行こうか」
「だね。じゃ後で!」

ジャージに着替えていた二人に手を振り茶道部がいる茶室に向かった。



茶室はさすが私立と言うか・・・立派だった。綺麗な畳の部屋でワクワクする。
どうやら本格的に体験するわけではなく、テーブルが用意されていてそこで話を聞くらしい。上履きを靴棚にしまって委員長の後をこそこそついていく。

「あっ町田!久しぶりだなあ!」
「お久しぶりです、佐橋先輩」
「そっちのちまいのは?」
「ちまっ?!」

デリカシーないなっ!気にしてんだぞ!

「友人の間々原です。高等部からここで、茶道部の見学に」
「へー。じゃ、こっちおいでチビーズ」
「「チビッ・・・!」」

屈辱的なコンビ名をつけられた。見学に来て30秒で立ち直れないほどの傷をおった。

「佐橋先輩は裏表ない人でね、いい人なんだ。・・デリカシーないけど」
「うん・・・」

佐橋先輩はお茶を点ててくれた。はー、いい香りだ。

「「に゛、に゛がい゛」」
「はははっ!俺お茶点てるの下手でさー」
「佐橋先輩少しもうまくなりませんね・・・。間々原お菓子食べなよ」

あまりの苦さと粉っぽさに開いた口が閉じれないでいると委員長が羊羹を口に入れてくれた。うぅ・・・修学旅行で飲んだ京都のお抹茶の数倍まずかった。なんかもっとおいしかった気がしたんだけど。

「那波先輩はいないんですか?」
「那波は買い出し行ってるよ。意外に見学者が多くてな」
「でしょうね・・・紹介文に堂々とお菓子があると書いてありましたから」
「部員ゲットの為だ!高等部は中等部より部が多いからな。毎年大変なんだぞ」

佐橋先輩はプリントを僕らにくれた。活動日とか年間行事が詳しく書かれた紙だった。裏表刷りで裏はなぜか華道部の案内が書かれていた。

「茶室は華道部と合同使用だから、活動日は基本的に火曜と木曜だけだ。ちなみに華道部が月曜と水曜。月最終週の金曜が合同だ」
「合同?」
「お互いの成果を発表するんだ」

おお・・・!なんかかっこいい!

「騙されるな、間々原。ただのグダグダする会に決まっている」
「町田、心証悪いだろ?確かにそうだけど」

認めちゃった!ホント適当な部活なんだな!

「あ、あの、華道部は今日どこにいるんですか?」
「ここで一緒にしてるぞ?その辺の花は華道部の作品で、お茶出しながら茶道部と華道部の説明をしてるわけ」
「にしては人が少ないですね」
「ああ。茶道部と華道部で総勢8名だからな」

す、少なー!ホント部員集め大変なんだな!

「茶道部が3人と華道部が5人だ。で、うちの部長と那波、華道部の部長が今買い出しに出てる」
「中等部の時にはまだ人が多かったのに」
「だから高等部は部の数が多いから茶道や華道なんてやらないんだよ。根暗なイメージだし」

茶道部員がとんでもないこと言った!全国の茶道部員と華道部員に失礼だ・・・!きちんと日本の伝統を学んでる人もいるよ!会ったことないから知らないけど!

「ま、チビーズが入るからこれで5人だ」

入部確定しちゃった!

「間々原、なんかごめんね。無理して入部しなくていいから」
「ううん!どうせたくさん人がいても喋れないし、お菓子美味しいし」
「それも違う気がするけども」

でもあまり人がいなくて安心したのは事実だ。やっぱりまだたくさん人がいるのは苦手だ。
佐橋先輩がお抹茶のおかわりをすすめたが二度と飲みたくないので委員長と一緒に失礼することにした。
僕らは入部届けをもらってそれを鞄にしまい販売機へ急ぐ。

「うぅっ喉がいがいがするっ・・・!」
「僕口が苦いぃ!」

佐橋先輩のお茶は本当に強烈だった。



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