ComingOut:78

青い空、白い雲、汚ぇ海!

「サーファー狩るぞー!!!あっ右から2番目は俺のな!」
「・・・山下さん、俺ちょー帰りたいんですけど」
「鈴木ィ!テンション低いぞ!アゲてけアゲてけ!」

朝早く鈴木を連れ出して電車に揺られて海へ。
チャラい系引っ掛けてその場限りのさよならでいいやとモテるためにサーフィンしてる奴等渦巻く海に来た。
マジでサーフィンやってる奴等は波チェックしたりするがこの辺はボード片手にナンパする奴等ばっかだ。

「ねぇねぇ、2人で来たの?一緒に遊ばない?」
「遊ばねぇ。失せろブス」
「・・・は?」
「ちょっアンタその言い方ないんじゃないの?!」
「俺もないと思うぞ!」
「ほっとけ、ヤリマンに興味はない」
「ヤリマッ・・・!」
「サイテー!」
「ご、ごめんなさい!あのっコイツ今すげぇ機嫌悪いんで勘弁してください」

鈴木がブス共の相手をしている間にラムネ2本買って獲物物色。
色黒すぎのロン毛はアウトだな。
髪が黒なら考えたが自分ブリーチはねぇ。
アイツは腰が細すぎる。
アッチは・・・あ、いいな。

「山下!お前もう少し態度どうにかしろ!」
「俺に釣り合うだけの顔面じゃないブスだっただろうが」
「それでもナンパしてもらったんだからもう少しどうにか」
「いつものことだ」
「俺っ・・・俺お前と海来たくなかった!ものすごい敗北感!」

とりあえず何か食い物買うか。
焼そばは青海苔気になるしなぁ。
カレーは臭いが気になる。
あ、かき氷にしよう。

「鈴木何味?」
「ブルーハワイ」
「俺レモンにしよー。お兄さん、ブルーハワイとレモン1つずつねー」

お兄さんからかき氷受け取って鈴木が買ってきたフランクフルト食べながら移動。
人が割と少ない砂浜に胡座をかく。
かき氷をサクサクいわせながらサングラス越しに好みの体型を物色。
ハズレとまではいかないがストライク少ねぇなぁ。

「なんで俺なんだ・・・中村と来たらよかったじゃないか・・・」
「ダメダメ、好み被る」
「・・・そうか?」
「テキトーな相手を見繕うと被るんだ」

ガチムチなんてそうそういないから細マッチョで妥協すると中村と顔の好みまで被るしな。
スポーツしてる奴の筋肉がいいとか割と温厚そうな顔して強気な奴とか。

「よし、とりあえず慣らしに突っ込むからお前勃てろ」
「俺もうお前と話するの疲れた!話が何も噛み合わない!」

ちょっとテンション上がりすぎてるかも、俺。

***

青い空、白い雲、憎きサーファー。

「佐藤、大丈夫?」
「気分良くなってきた」
「ほら、サイダーやるよ」
「お前等真面目に見張りをしろ!」

可愛い可愛い俺の綾平が俺に内緒で海に・・・!
サーファーなんか狩りに・・・!

「俺がサーフィンさえできれば!」
「サーファーじゃなくて海が似合うマッチョと海で立ちバックがしたいだけだろ」
「ビッチだからな」
「1人より2人の方が成功率高いからって鈴木をチョイスするあたりもなかなか」
「黙れ!綾平は俺のだ!誰にもやらん!」
「やらんも何も逃げ出して一夏のアバンチュールに出掛けてるだろうが」

付き合い始めて3年目、今まで当て付けに遊ぶ以外の浮気をしなかった綾平が自ら浮気をしに出掛けた。
しかも俺に内緒で!
佐藤にリークされて一晩悩んだけど俺が普段浮気しちゃってるから止めるに止められなくて!
どうしたらいいかわからずにとりあえずコイツ等引っ張って追いかけて来たけども!
あああああぁぁぁ!!!
コイツ等とヤるならまだしもわざわざ狩りに行くなんて!
俺の何が不満なんだ!

「つか佐藤はいいのか?鈴木のアバンチュール」
「別にどうでも」
「砂浜でヤってケツ痛いとかでセックス拒否されるかもよ?」
「・・・鈴木一応タチだぞ。今でも突っ込みたい側だ」

・・・忘れてた。
そう言えばそうだったかもしれない。

「鈴木の心配はいらないし、そろそろストーカー放置して帰らないか?」
「そうだね」
「裏切り者共!うちの綾平がサーファーに強姦されたらどうしてくれる!」
「山下が強姦されるなら鈴木は死んでるだろうな」
「間違いないね」
「さ、帰るか」
「待ってエエエェェ!待って下さい!」

1人で綾平見張ってたら俺不審者!
捕まる!
っていうかもし見つかって綾平の逆鱗に触れてしまったら俺生きて帰れる保証がない!

「わかったって、わかったから。離してよ」
「何か食いもん調達しようぜ。腹減った」
「朝から何も食べてないもんね」
「俺気分転換に買ってくる。何がいい?」
「焼そば!おにぎり!つかとりあえず飯!」
「俺もそれで!」
「はいはい。吉田行こうぜ」
「うん」

佐藤が吉田を連れて買い出し。
その間に双眼鏡(持参)で綾平を見張る。
今のところまだサーファーをナンパした様子はない。

「原田」
「何」
「買い出し、佐藤と吉田に任せてよかったのか?」
「いいよ。後で金払うし」
「じゃあ俺は自分の焼そばを先に買いに行こうかな」

その場を立ち上がる中村の服を掴む。
なんだって?

「え?先に?」
「ナンパされてるから。吉田もめんどくさそうだったし多分しばらく帰って来ないぞ」

俺は中村に双眼鏡を押し付けて佐藤と吉田を回収しに行った。

***

隣に座る鈴木はすでに2つ目のかき氷。

「本当なら佐藤とデートだったのに・・・」
「どうせ電気屋だろうが」
「ヘッドホン買いに行く予定だったんだ」
「でも佐藤は快くお前を貸し出してくれたぞ」
「畜生オオオォォ!」

佐藤は鈴木を大切にしてるんだかしてないんだかわからないな。
俺は佐藤の良さが一切わからない。
あ、浮気しないし記念日を覚えてる辺りは評価対象だな。
今鈴木の腕に付いてるブレスレットは佐藤からのプレゼントらしいし。
その場で買わずに後々1人で買いに行くあたりもいい。
アメとムチがしっかりしてるよな。

「早くあがって来ねぇかなぁ」
「どれ狙い?」
「白と青のボード。チョイ黒くて髪がオレンジっぽい茶色入った黒の奴。右から3番目」
「ブサイク」
「黙れ面食い。お前どれだよ」
「左から4番目の金髪」
「金髪好きだなー!アレセルフブリーチじゃん!」
「でも格好いい。掘りたい」
「・・・お前まだタチだったんだな」
「タチだよ!俺はいつか佐藤だって組み敷くんだ!」
「がんばれよ、おうえんしてる」
「棒読み・・・!」

無理無理無理絶っっっ対無理。
体格差に加えて経験値が違いすぎるだろ。
俺は原田に突っ込みたいとは思わないしな。
それ以前に原田が本気になったら俺は勝てないしな。
伊達にあの幼なじみをもっているわけではない。

「なぁ鈴木」
「ん?」
「俺が原田に突っ込むってどう思う?」
「笑えばいいのか?」
「そうだな、笑ってくれ。殴るから」
「理不尽!」

ぬるくなったラムネを飲み干して立ち上がる。
次はサイダーでも飲むかな。

***

もちゃもちゃシャクシャクずるずる・・・隣がうるせぇ!

「中村くん、焼そば頂戴」
「いいよ。カレー頂戴」
「原田かき氷食う?宇治金時、マズい」
「マズいならなぜ勧める!」
「俺もう食べたくないから」

吉田と中村はいちゃいちゃしてるし佐藤は俺の口に白玉やらあんこやらマズい汁やら押し込んでっていうか氷!
氷が食べたいのになんで氷くれないのこの人!

「あ、サーファーあがりだしたな」
「波が凪いだしな」
「これで沖に行くサーファーはにわかでしょ」
「つかココでやってる事態がにわかじゃねぇの?」
「だから山下もココ来たんだろ」

中村までサーファー物色し始めた。
サーファーが憎い。
俺来年サーフィンはじめる。

「鈴木疲れてんね」
「今日デートの予定だったからねー」
「お前っお前なんでデートの約束を優先しなかったんだ!」
「俺が譲ったから山下追いかけてこれたんだろー?むしろ感謝してほしいね」
「そうだよ。もしそれで中村誘ったら完全に浮気が隠蔽されてたからね」
「そうだなぁ。俺はリークしないしな」

鈴木でよかったと言うべきなのか・・・?
アレ綾平止めるって選択はないのかな?

「あ、ナンパしてら」
「何だと?!」

双眼鏡を手に綾平を観察。

「男2人、雰囲気見る限りガチだな」
「いるもんだなー」
「山下綺麗系だしね。悪い気はしないでしょ」
「さすがだな。山下嗅覚パネェ」
「鈴木は乗り気じゃなそう」
「ブサイクだからじゃね?鈴木面食いだし」

他の奴等の会話をBGMに双眼鏡越しに綾平をガン見。
こ、媚びてる・・・!
目が媚びてる・・・!
あのにわか波乗り野郎っ!
何まんざらでもない顔してんだ!
俺の恋人だぞ!
俺の綾平だぞ!
何さらりと腰触ってんだゴルアアアァァァァ!!!

「我慢ならん。綾平回収してくる」
「やっとかよ」
「いってらっしゃーい」
「手は出すなよー」

双眼鏡を佐藤に押し付けて歩きにくい砂浜をダッシュ。
岩場の陰で何晒すつもりだアアァ!!!

「綾平!」
「あ゛?!えっ、ハアアァ?!」
「帰るぞ、今すぐ」
「ちょっ待て待て!後1時間待て!」

すげぇリアルな時間提示してきた!
でも待てないつか待たない!
腕を引いたのにニヤニヤした顔のクソ野郎が綾平の腰を離しやがらねぇ。
イライラしたから思いっきり腕をはたき落としてやった。

「コイツ俺のなんで」

今度こそ綾平の腕を引いて歩き出す。
くそー・・・顔面殴ってやればよかった。

「どうしよう」
「何が?」
「ちょっとときめいた」

どうしよう。
初めてそんなこと言われた。

***

「じゃあ俺も鈴木くん迎えに行ってくるわ」
「「え゛」」
「原田が強めに腕払っちゃったからさー。萎えてないみたいだし鈴木引っ張られてるし」
「鈴木ヤバいんじゃないの?」
「強姦されちゃいそう?」
「そうかも」
「でも俺、佐藤は強姦されてる人を見てるタイプだと思ってた」
「1メートルぐらい後ろで視姦的な感じで」
「友達は駄目。場合によっては潰してくるからタクシー捕まえといて」
「わかったー」
「いってらっしゃーい」
「おー」
「・・・・・佐藤怒ってたよね?」
「鈴木はお気に入りだからな。手を出せば後が怖いぞ」
「タクシー捕まえようか」
「そうだな」




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