ComingOut:77

俺の朝食の半分を鈴木の皿へ移動。
これから遊園地だなんて、考えただけで食欲が失せた。
少なくなった朝食を胃に無理矢理詰め込む。

「・・・お前等も早く食えよ」
「寝不足なんだよ」
「どっかの誰かさん達がうるさくて」
「いい子守歌だったろうが」
「ンなわけあるか!」
「あっ原田!寝たまま飯食べるなよ!」

原田が目を瞑ったままパンを食べている。
最早特技と自慢してもいいんじゃないかな。
俺は少ない飯を胃袋に詰め込んで先に準備をする。
・・・先に電車で帰れないかな。



富士急につけば眠気はどこへやら。
みんなして何このハイテンション。
何パスポートで変顔とかしてんのこの人達。

「吉田くん、2人でカフェと洒落込まない?」
「いい考えね、デートしましょうよ。今なら女装だってできるわ」
「はーい、ええじゃないか行くぞー」
「「嫌だアアァァァ!!!」」

無理矢理引きずられて列に並ぶ。
順番になったら眼鏡と鞄をロッカーにぶち込んでシートに座る。

「佐藤、手握っていい?」
「汗べったりでよければ」
「大丈夫!俺もぐっちょりだから!」
「よし、お互いに手を拭こっうぉぉ!」
「いやああぁ!動いたあぁ!」
「ちょっ吉田揺らすな!落ち着け!」
「だってコレシート回転するんだよ?!」
「初耳イイイィィ!何ソレ何も楽しくない!」
「あっあっやだやだ!落ちる落ちる落ちる落ちイ゛ア゛ア゛ァァ!!!」
「う゛お゛お゛お゛!!!」
「い゛い゛っい゛っ下っ下アアァァァ!!!」
「痛っ!首痛っ!ガタガタすっぶふぉっ」

終わる頃にはもうボロボロ。
もう駄目だ。
こんなぐるんぐるん回る乗り物嫌いだ。

「写真買っていこうぜ」
「そうだな」
「こんな悲壮感溢れた佐藤はなかなか見れないな」
「吉田もなかなかだぞ」
「すみませーん。6枚下さい」

アイツ等・・・絶対殴ってやる。
ベンチに吉田と2人仲良く空を見上げて座る。

「佐藤、俺ふわふわしてる」
「俺はぐらぐらだ」
「じゃあふわふわぐらぐらしながらナガシマスカ乗るぞ」
「濡れたくないっ!」
「酔うっ!」

反対は完全無視。
結局安いし蒸れるゴミ袋みたいなレインコート・・・いやこれもうゴミ袋でいいや。
ソレ着てまたぐるんぐるん回るボートに乗る。
3人と3人で分かれられるのは富士急だからだな。
TDLじゃ詰め込むからな。
そして俺原田と山下と一緒とか最悪なんだけど。
暴れるだろコイツ等。

「いいかお前等、微動だにするな」
「無理無理ー!」
「背中から落ちてぇ!」
「ソコは運だろ!」
「マジ背中から落ちるとか冗談じゃね゛え゛え゛えぇぇ!!!」
「背面佐藤かよ!」
「次俺がいい!原田揺らせ!」
「おー!」
「落ち着け馬鹿共がアアァ!」
「「むしろお前が落ち着け」」

波に揺られてどんぶらこどんぶらこだよ。
もう気持ち悪い。

「やだ気持ち悪い・・・揺れてる・・・」
「足浮かせてるからだろ」
「後ろに見えるBMライダーを見習え。いつも吉田の上で揺れてるからものすごくはしゃいでるぞ」
「俺バリタチだからライダー未経験なもんで・・・」
「じゃあ今度俺の上でライダーしてみてよ。目隠ししたら佐藤相手で勃起するかも」
「目隠しはいらねぇよ。目玉くり抜いてやるから」
「っていってる間に佐藤背後に気をつけろ」
「え」
「落ちるぞ」
「また俺かよオオオォォ!!!」
「あーっははは!佐藤びっしょりだな!」
「水も滴るいい男!ひゅーひゅー!」
「・・・お前等もう黙れ」

降りる前によっぽど水に沈めてやろうかと思った。
びしょびしょの服をパタパタさせて早く乾けと祈る。
あー・・・マジで気持ち悪い。
吉田はさほど怖くなかったらしくテンション高めだ。
裏切りものめ。

「高飛車乗れるかな?結構並んでる」
「俺並んでてやるよ。気分悪いし。お前等回って来れば?」
「俺も並んどく。昼過ぎまで並ぶだろうしついでに飯も食ってくれば?」
「じゃあお言葉に甘えて」
「何乗る?」
「メインじゃないやつ乗ろうぜ!」
「FUJIYAMAと戦慄迷宮はアイツ等乗せたいしな!」
「「むしろ乗ってこい」」

吉田と売店でジュースとクレープ、ハンバーガーを買って列に並ぶ。
炭酸飲んだら少しは胃のむかつきが薄れた気がする。

「もう帰りたい」
「俺もだ」
「列が進む度に気が気じゃなくなる」
「ホントだよな」
「コレ120度で落下だよ?!投げ出されたらどうすんの?!」
「お前嫌いなくせにやたらに詳しいな!」
「自分の命がかかってるだろうが!ググるよ!めっちゃググったよ!!!YouTube見たよ!」
「そんなに嫌なら泣いてでも乗らなきゃよくないか?」
「原田と山下が絶対、力ずくで乗せるだろうが!勝てねぇ!」

目を血走らせて嫌だと訴える吉田。
・・・こんな顔するから山下が意地になるんだろうな。
落ち着いた吉田とハンバーガーを食べながらしばしの休息。



待ち時間が後1時間待ちのところで全員にワン切り。
中村と原田が先に到着、待ち時間20分を切ってようやく鈴木と山下が来た。

「マッド・マウス面白かった!マジ笑った!」
「な!カクカク動くからケツ痛かった!」
「俺等トンデミーナ乗ったぜ!マジウケる!」
「何が面白いって中村の足が地面につがお゛え゛え゛ぇぇぇ」
「黙れチャラ田、殺すぞ」

原田が高飛車を目の前に沈んだ。
そしてあまりのおもしろさに中村以外涙目だ。
笑ったら殺される。
順番がきたのでまたロッカーに眼鏡と鞄を入れて座席へ。
ガタガタ音を立てて真っ暗な道を進む。

「鈴木くん」
「何?」
「死ぬときは一緒に死んギャアアアァァ!」
「うおー!!!早い早い!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ」
「っはー!佐藤っ佐藤っ!コレ上ったら120度から落下だぜ!」
「黙れ天パ!上るも何も景色変わらねぇじゃねぇか!空しか見えねぇよ!」
「うぉっ!高っ!」
「ココで止まるんじゃねあ゛あ゛あ゛!!!」
「うわアアァ!!!はははっ!」

髪の毛をボサボサにして到着。
よろよろと荷物を手にその場を後にする。
俺も吉田も放心状態だ。

「いやー、楽しかったな!」
「うるさかった奴等もいたけどなー」
「しかしあんな所で止まるとか最初事故かと思ったぜ」
「思った思った!」

腕を引かれながらついた先は戦慄迷宮。
放心状態が一気に覚醒した。

「待て!絶対嫌だ!」
「いいじゃん。オバケよりお前の顔のが怖いぞ」
「ふざけんな!俺は世界で2番目にお化け屋敷が嫌いだ!」
「あれ、幽霊信じてる?」
「いや、非科学的なものは認めていない」
「じゃあいいじゃん」
「よくねぇよ!お化け屋敷が嫌だ言ってるだろ!びっくりするのが嫌なんだよ!」

昔から脅かされた事がないから免疫が全く無いのだ。
マジで無理。
それこそ心臓止まる。

「俺も嫌だ!オバケ嫌い!900メートルもあるのにっ!60分も中にいたくない!」
「死ぬぞ!俺この場で自殺してやろうか!」
「小便もらしてやろうか!」
「死ね死ね、漏らせ漏らせ。さ、行くぞー」
「「覚えてろよテメェ等アアァ!!!」」

必死の抵抗虚しく中へ。

「やだやださとっ佐藤いる?ちゃんといる?やだ出たいやだやだやだやだ」
「吉田、俺が死んだらちゃんと埋葬してギャアアアァァ!!!」
「イヤ゛ア゛ア゛ア゛ァァ!!!」
「うわあ゛ぁっ!テメエエェ!バイト終わったら覚えてろよ!!ブチ殺すからな!」
「こっち来ないでー!!!」
「佐藤っ!あの幽霊おっぱいでかい!」
「マジで?!」
「「「「本能に忠実だな!」」」」
「DかE・・・マジででけぇな・・・暗いし少しぐらい触っても・・・」
「逃げてお姉さん!」
「あっあ゛っ中村っあっオバケにちかよっちゃだめっ」
「少しちんこを触るだけだって・・・」
「もっとダメエエェ!!!」
「あ、佐藤後ろ」
「はっ?えっうわあああぁぁ!!!」
「佐藤が・・俺に抱き付いた・・・?」
「目を覚ませ鈴木!身代わりにされただけだ!って山下くうぅぅん!好みの体型漁りやめてー!」
「暗いし1発ぐら」
「よくない!よくないからオバケさんから手を離しなさい!」

道に迷いに迷って、ようやく1時間15分後に外へ出た。
喉渇いた・・・寿命が縮んだ気がする。
売店で飲み物を購入して今度は吉田と2人でFUJIYAMAへ並ぶ。
他の奴等はまた遊びに行った。

「俺もう1人じゃ寝れない・・・」
「添い寝してやるよ・・・」
「おっぱい触らしてくれる?」
「乳首千切っていい?」
「中村くんに頼む・・・」
「俺は諦めないぞ」
「諦めて!戦慄迷宮より怖い!」

ぎゃーぎゃー言ってたら割と早く鈴木と山下が帰って来た。

「何乗ってきたの?」
「トンデミーナ。さっきとチェンジ」
「マジ楽しかった!佐藤と吉田も行ってくる?」
「鈴木くん、冗談キツいよ」
「俺等があんなに回転する乗り物に乗った日には空中ゲロをするぜ」

いやぁ・・・回転してあんなとこから振り子みたいにぶんぶんぶんぶん・・・人間を何だと思っているんだ・・・!
原田と中村も帰って来てしばらく並べば俺等の番。
またロッカーに眼鏡と鞄を入れて座る。
ため息をついたらガタンと一段階落ちた。
まぁまだこのぐらいの高さなら落下しても平気か。
高飛車に乗ったんだ、多少のことじゃもう驚かない。
隣で期待を膨らませてる原田は落ち着きがない。

「馬鹿は高いところが好きだな」
「だって今から上がるんだぜ?!」
「・・・ん?」
「うわー!テンション上がるわー!」

頭にはてなマークを浮かべていたらガクンとシートが傾いて傾斜をゆっくり登り始めた。
待て待て待て、この角度は駄目だ。
下がっ下が見える・・・!

「ちょっまっえっ今から上がるのか?」
「おう!」
「嫌だ降りる降りる降りる!飛び降りる!」
「暴れんなって!テンション上がるって!」
「あがらねぇよ!俺高い所嫌いなんだよ!世界で1番目に嫌いなのは高い所なんだよ!」
「しらねぇよ!」
「ごじゅっ・・・?!50メートルとか書いてあった!うわっまじ無理!まじでまじで原田助けっ」
「お前うるせぇよ!ってか手を握らないで!気持ち悪い!」
「無理無理無理!いっそ殺せ!俺を殺せ!ころお゛お゛お゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!!」

もういい。
もうチキンでもなんでもいい。
俺はチキンだと認めよう。
頭を走馬灯が走り去り、頭が真っ白になった。



気が付いたら俺はほうとうを食ってた。

「あれ・・・FUJIYAMA・・・」
「あ、戻って来たな。お前何も喋らなくなってさー」
「吉田もさっき戻って来た」
「大丈夫か?」

とりあえず口にぶら下がるほうとうを胃に流し込む。
あ、うめぇな。

「深夜バスの時間があるから急いで食え」
「あぁ、悪いな」

とりあえずほうとうを半分食べて残りは鈴木に。
またバスに乗らなきゃいけないのか。
まぁ長い時間寝れるしまだマシかな。
鈴木が俺のほうとう食い終わった所で店を出る。
コテージのオーナーさんに夜行バスが出ている乗り場まで連れて行ってもらう。
何から何まで世話になったので深々挨拶をして早々とバスに乗った。
あぁ・・・これでやっと帰れる・・・。



「面白いもんたくさん見たな」
「ええじゃないかの写真たまらないな」
「たくさん遊んだし満足だー」
「お父様と真壁さんにありがとう言っといてね」
「うん」
「それからコレ俺からお父様にお土産でチョコレート買ったんだけど」
「パパが原田くんからは何も貰わない言ってたからいらねー」
「お父様・・・?!」




※無断転載、二次配布厳禁
この小説の著作権は高橋にあり、著作権放棄をしておりません。
キリリク作品のみ、キリリク獲得者様の持ち帰りを許可しております。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -