05:噂の男の子 side充

夢か現か幻か。
目の前にいたのはあの柏木君だった。
全寮制男子校、偏差値もそこそこよくて公立の中学からはめったに人がこないこの学園にまさか、まさか同じ中学で憧れていた柏木君がいるなんて思いもしなかった・・・!確か受験の時には見かけなかったような気がするんだけど。

「柏木君だよね?」
「そうだよ?柏木一星、ほら本物でしょ」

僕の手を取り、自身の頬へ手をあてる柏木君。駄目ダメだめdameDAME刺激が強すぎる・・・!
顔面真っ赤を通り越して真っ青になってしまった。口からは挨拶どころか声もでずにただぱくぱくしてる。

「そんな驚かなくても」

近くの椅子を引き寄せて僕の側に座るとにっこり笑って話し始めた。

「いやさ、知り合いなんていないんだろうと思ってたら間々原がいるんだもんな、俺びっくりしたよ」
「あっあ、ぼぼぼ僕も!」
「ははっ間々原緊張しすぎだよ」
「ごっごめんなさぃ・・・」
「謝ることないって」

そう言って頭を撫でてくれた。

ドキドキしすぎて死んじゃうかも・・・!

柏木君は僕の席にある予定表をつかみ、今日の予定を確認する。僕はすでに予定なんて頭から吹っ飛んでいて、今脳内メーカーとかしたら頭いっぱいに『柏』と書かれるに違いない。

「SHRで担任挨拶の後ソッコー身体測定かあ。俺最近太った気がするんだよね・・・」
「全然!柏木君、いい身体してるよ!」

しまった・・・!これじゃ変態だ。

「ははっ、ありがと。間々原はもっと食えー!腰細いぞ!」
「ひあっ」

腰を掴まれて変な声がでた。思わず口を押さえて柏木君を見るとなんか驚いた顔をしてる。

「あ、あのっくすぐったい・・・です・・・」
「うわっ、ごめんごめん!」
「あっ、き、気にしないでいい、からっ」
「わかったわかった。じゃあまた後でな!身体測定一緒に回ろう!」

そう言ってイケメンスマイルフラッシュを撒き散らしながら去っていった。僕の心臓はまだバクバクしてる。



「はーい、席につけー。俺は夏木隆文、お前等の担任だ。担当教科は保健体育。まあ見慣れた顔が多いだろうが各自出席番号と名前を言っていけ。それを出欠の代わりにするから」

担任の先生はいかにもスポーツマンって感じの先生だった。スーツが見事に似合わないしシャツの第一ボタンは閉まらないのか開いている。

「出席番号6番、柏木一星です。よろしくお願いします」

凛としたよく通る声で柏木君は自己紹介を終わらせた。一部の男の子達がきゃっきゃしているのも無理はない。僕もきゃっきゃしたいもの・・・!

「出席番号23番町田裕二です。よろしくお願いします」

いつの間にか僕の前の席の人が自己紹介が終わったらしい。
町田裕二君か、覚えておこう。眼鏡をかけたいかにも委員長っぽい顔だ。覚えやすい。

「しゅ、出席番号24番まままま間々原充ですっ!お願いします!」

噛んだ間違えた失敗した。よりによって自己紹介で失敗した。

「あー・・・間々原、緊張しすぎだ」
「・・・すみません」

頭を下げたまま、上げることなく座って机に突っ伏した。撃沈。
そのまま放心状態でいると立候補で委員長だけは先に決まった。町田君だった。



「間々原、大丈夫?」

SHRも終わり、委員長の指示でみんなすみやかにジャージへ着替えて体育館へいくらしい。一年全員が今日の午前で身体測定を終わらせるのだ。
しかし立ち直れない僕は未だに机にめり込んでいた。

「気にしちゃだめだよ。ほら着替えよ」
「うん・・・」

いそいそ服を脱いでいたら柏木君にシャツをまた着せられた。

「へ???」
「ま、間々原ジャージ持ってきた?」
「ううん。体操服だけ」
「じゃあ俺の貸してあげる!外はまだ寒いからさ、ね?」
「う、うん・・・」

そう寒くもないが柏木君が貸してくれると言うし、それにイケメンスマイルフラッシュに勝てなかった。・・・ホンット鼻から血液垂れ流して倒れてしまいそう!
柏木君は悶えてる僕に体操服とジャージを着せ、手を引いて体育館へ向かった。

「あ、こっちこっち!」
委員長が手を振っていた。どうやら僕たちが最後の到着だったらしい。

「ご、ごめん」
「集合時間は過ぎてないし平気だよ。それじゃ各自指定されたルートに沿って回って、終わったら教室待機!解散!」

委員長はパキパキと指示をして、予定を把握していない子にもきちんと指示をしていた。素敵だ。委員長素晴らしい。

「最初は身長だね、行こうか」
「うん!」

柏木君と歩き始めようとしたらジャージの襟を掴まれた。

「ぐぇっ」
「間々原?!ちょっと」
「ミツル、ジャージ持っていってたの?」
「ヨシキ!違うよ、寒かったから借りたの!」
「ふーん」

腰に手を回し、弄るヨシキから逃げようとするがびくともしない。

「はーなーせー!」
「ソッチの彼は誰?ミツルのお友達?」
「柏木君だよ。柏木君!コイツがヨシキって言って僕のルームメイト!」

柏木君はにっこり笑ってヨシキに挨拶をする。

「初めまして、柏木一星です」
「どーも。高岡良樹です」
「そろそろ間々原を返してもらっても?急がなきゃクラスに迷惑がかかるから」

柏木君は僕を引っ張りヨシキを引き剥がす。そしてぐるりと首を回して僕の方を見た。

「間々原は高岡君の事はヨシキって言うの?」
「う、うん。とっ友達だから馴れ馴れしく呼ぼうってヨシキが」
「そんな言い方はしていない」
「じゃあ俺の事もイッセイでいいよ」
「へっ?」

か、柏木君をイッセイだと・・・?!ハードルがチョモランマ級だ・・・!

「ミツルと俺はずっと友達だったじゃない」

そんなまさか!柏木君が僕を友達だと思っているなんて夢か幻?!どうか醒めないで、夢・・・!

「ミツル、いいでしょ?」

あまりの出来事に放心状態の僕。柏木君はヨシキとなにやら話している。
僕は口をぱくぱくさせて、ジャージの裾を握りしめて意を決して柏木君の名前を呼んでみた。

「わっわかっわかった・・・いっィ、イッセイ・・・」

そして僕は体育館の床へ沈んだ。顔というか身体中の血が沸騰してしまいそうなぐらい恥ずかしい・・・!

「ははっ、そんな照れなくても」
「う゛ー・・・」
「じゃあね、高岡君」
「チッ」
「ヨ、ヨシキ!そんな態度!ヨシキと、そのっそのっ、い、イッセイも友達でしょ?」
「「え?」」

アレ?僕何か変なこといったかな?
二人とも仲良くしゃべってたよね?

「だって自己紹介したし、しゃべってたし・・・それに二人とも友達の方が僕も楽しいし」
「いや、あのなミツル・・・」
「ミツルがそう言うなら。ヨシキだっけ?これからよろしく」
「え゛」
「さ、ミツル。また委員長待たせたら悪いから早く行こうね」
「うん!じゃあね、ヨシキ!」
「あっ待てっ」

イッセイと走って身長計測へ。とりあえずこの学園での友達二人目。それはあの『柏木君』、基イッセイだ!



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