22:知らないことは山のように

人生何が起こるかわからないものだと改めて思った。
まさか、まさかイッセイの試合を応援しにきただけなのにこんな眩しい程のアイドル集団に囲まれることがあるだなんて・・・!

「間々原ちょー久しぶり!相変わらずおちびちゃんだねー」
「うっう゛っう゛っ」
「渋谷、あんまり間々原いじめんなよ」
「いじめてませーん。ね、間々原?」
「ぶふっう゛、う゛ん」
「言わされてんじゃん」
「ひょんらこどないお!」

久しぶりに会った渋谷君と森君と山田君。みんなでイッセイの応援に来たらしい。
みんな相変わらず格好良くて、渋谷君以外は多分彼女と来ている。渋谷君はいつものように何人かの女の子と来ていた。
というか・・・そろそろ頭もさもさするのも顔をぐにぐにするのもやめてほしい。僕はここに1秒たりともいたくない・・・!女の子嫌!生け贄(ヨシキと西君)の意味がない!

「柏木は?」
「あっ僕もまだ会ってないんだ」
「そうなんだ」

山田君は相変わらずクールだな・・・。用事が終われば僕みたいなのに話しかけないし。
渋谷君にもみくちゃにされてたら僕の救世主、ヨシキが現れた。神様!

「何やってんだ?」
「ほひき!はろへ、こにょひほが」
「何を言ってるか一切わからないんだが」
「ひょんら!」

目の前にヨシキが来たからかみんなが少し僕から離れる。渋谷君もようやくその場を退いてくれた。

「あっあのね、この人が渋谷君でこの人が森君、ンでこの人が山田君!みんな同中なんだよ」
「どうも」
「「「どうも」」」
「でね、これがヨシキ!僕のルームメイトなんだー」
「背高いですね、羨ましいです」
「あ、森君、ヨシキはタメだよ」
「マジで?!敬語でしゃべって損した」
「いきなり態度変えすぎだろ」

森君が山田君に突っ込まれた。痛そうだな・・・。

「ねーねー間々原、試合一緒に見ようよー」
「え゛・・・」
「嫌だって。諦めろ、渋谷」
「間々原ってば相変わらず俺に冷たいよなー」
「お゛ぶふっうっそ、そそんなことないよ!」

また頭をわしゃわしゃされる。もう僕の頭はもさもさなる部分がないほどにぐちゃぐちゃだ。最早いつものことと山田君も森君も助けてくれない。
っていうかヨシキも助けてくれていいんじゃないかな?!チラチラヘルプ視線をビームしてるのに!

「あー・・・ちょっと渋谷君だっけ?あんまりミツルに触らないほうが・・・」
「えぇー?なんでー?間々原何も言わないしもう持って帰りだごぉっ」
「・・・ほらな」

渋谷君めがけてサッカーボールが飛んできた。解放されたのはいいんだけど、いいんだけど・・・

「しししし渋谷くうぅぅん!!!」
「あははー!ごめん渋谷!足元狂っちゃったあ」
「あっイッセイ!し、渋谷君が!」
「平気平気!むしろ頭よくなったよ!」

イッセイが笑いながら渋谷君を蹴った。あ、平気そう。
青いユニフォームを着たイッセイはなんて爽やかなんだろう。あ、今日の靴は委員長が選んだやつなんだ。僕には違いはわからないけどフィールドに合わせて変えるんだって。

「あ、柏木いた。おーい!」
「柏木君、ユニフォーム着るとなんかイメージ違わない?」
「あぁ、ナルシスト感がパないな」
「ヨシキ君、うるさいよ」

倒れた渋谷君を起こしてたら委員長と西君が帰って来た。西君の委員長と2人になりたい作戦だ。とりあえず販売機までの買い物だったんだけど。け、決して友達を売ったとかじゃないんだ・・・!
あっ紹介してない。森君と山田君が困ってる。

「あ、あのね、眼鏡かけてるのが委員長でかけてないのが西君!友達なんだ」
「どうも、委員長と西君」
「ちわー、委員長と西君」
「委員長じゃなくて町田です。訂正します」
「はっ!ごめんっ委員長!」
「西でーす。この人達が間々原君と柏木君の同中の人?」
「うん!渋谷君と森君と山田君!」
「そうなんだー。っていうか女の子暇そうだけどほっといていいの?」

さすが西君!神様はヨシキじゃなくて西君だ!

「それもそうだな。柏木にも会えたし。まぁまた後で来るよ」
「そうして。あぁ、渋谷は来なくていいから」
「柏木酷い!」
「お前・・・ホント相変わらずなのな」

山田君は森君と渋谷君を促して女の子達の方へ。多分イッセイを知らないらしいから同じ高校の女の子達なのかな?
なにはともあれようやく嵐が去った。

「じゃあ俺戻るから。暑くなるだろうから熱中症には気をつけてね」
「うん!頑張れー!」
「スタンドで応援してるから」

委員長と手を振りながらイッセイを見送る。
最近イッセイといろいろあったけどやっぱりイッセイは格好良いな・・・。もうなんか爽やかすぎてキラキラしてる。イケメンフラッシュオーラが全開だ。

「柏木はやっぱり格好良いな」
「ね。僕も思った」
「・・・西、顔がキモいぞ」
「ほっといてっ」

開会式が始まって色んな学校があるんだなぁと思った。私立も公立も入り混じって色とりどりのユニフォームが並ぶ。まったく馴染みがない体育会系の開会式なんてなんか新鮮だなぁ。

「委員長、ポテチ食べる?」
「うん。ポッキーあるよ」
「・・・お前等遠足気分か?」
「あっヨシキも西君もポテチ食べていいよ!」
「ポッキーもあるよ!」
「食べるっ!俺ポッキー食べたい!」
「はぁ・・・俺はのりしおが好きなんだけどな」
「おぉ、結構コアなポテチファンですな」
「知らねーよ!」

完全に遠足気分で試合観戦をする。この日の為に委員長とお菓子を買いに出掛けたのだ。お昼ご飯は朝コンビニで買ったし準備は万全だ。
ポテチを食べてポッキーを食べてグミを食べてプリングルスを食べてお茶を飲んでせんべいを食べてとノンストップでお菓子を食べる。だってまだイッセイの試合始まらないし暇なんだ。
オレオを開けたところでようやく1試合目が終わった。

「あ、ナルシスト野郎出てきたぞ」
「頑張れー!」
「早いだろ!まだ整列しかしてないじゃねぇか!」
「応援するなんて初めてなんだもん!」

かけ声とかもわからないしなんて応援したらいいのかもわからない。そもそもサッカーのルールもあやふやだったりする。
ようやくボールが蹴られて試合がスタート、早速イッセイが前に出た。

「プレイ始まるとさすがに目立つね。SBなのに」
「悔しいがうまいな」

ヨシキと西君はルールがわかっているらしい。サッカー得意言ってたもんな。
さて、イマイチわからない僕は同じくわからないらしい委員長とお茶しながら観戦しよう。
オレオを開けて委員長に差し出す。委員長からはプリッツが返ってきた。

「柏木ゴール決めないな」
「そうだね」
「・・・お前等サッカーナメてるだろ」

ボールがあっちへこっちへ転がって、そうこうしていたらイッセイがゴール前に走った。ボールと逆なのに。
って思っていたのにボールがイッセイの方に飛んできた。すごいすごい!
・・・でも目が回りそう。
プリッツくわえたまま見ていたらゴールが決まった。イッセイじゃなくて違う人が入れたんだけど。

「アシストついたな」
「さすがだよね。マーク外した時なんてあの身のこなし」
「すごかったね!」
「うん、すごかった」
「・・・お前等よくわかってないだろ」
「さっオレオ食べよ!」

僕等の周りは開けたお菓子がいっぱいだ。実はポテチとポッキーしか食べ終わっていない。

「あれ?アレ他校のチアじゃね?」
「近くの女子高だろ。なんで来てんだ?」
「ホントだ。どこの応援?」
「うーん・・・それがどうもウチっぽい」
「ウチが応援頼んだのか?」
「まさか。生徒会でも交流ないよ?」

ヨシキと西君と委員長が他校のチアを見て思案顔。アレ近くの女子高なんだ。僕はこの辺中学とは学区全然違うし知らなかったなぁ。
・・・チアとか女の子しかいない集団にはあまり目を向けたくない。

「あの中央の子、レベル高くない?」
「確かに。美人だな」
「大人っぽいね。年上かな?」

みんなが盛り上がるチアにちらりと目を向ける。ホントにちらりと目を向けて見るんじゃなかったと思った。

「は、羽鳥さんだ・・・」
「えっ・・・知り合い?」
「嘘?!間々原君知り合いなの?!」
「お前女嫌言いながらレベル高い子知ってんな!」
「ちちちち違うよ!」

ものすごい勢いで首を振る。知り合いだなんてそんな恐ろしい・・・!

「イッセイの彼女だよ。多分、それでウチの応援してるんだと思う」

あ、アレ?
そんなに固まるような情報だったのかな?そらイッセイぐらい格好良かったら彼女の1人や2人いると思って当たり前だと思うんだけども。

「あ、アイツ彼女がいたのか?」
「うん?中学でも美男美女のカップルだと有名で・・・」
「別れたとかはないの?」
「いや・・・別れたとか聞いてないけど・・・」
「柏木、彼女いたのか。全然知らなかったな」

この後せっかくイッセイがゴールを決めたのに誰も見てはいなかった。ごめん、イッセイ。



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