愛と憎悪と献身
俺の主人は酷く泣き虫だ。
今日もまた頬を腫らして帰ってきた。
それから俺を見るなり目に涙を溜める。
あぁ、そんなに頬を腫らしているのに目も腫らしてしまうのか。
また殴られたのか?
あぁ、酷い、酷い、酷い。
こんなに綺麗なお前の顔を、こんなに綺麗なお前の肌を、こんなに赤くする男が見てみたい。
泣かないで、涙がもったいない。
お前を殴ることしかしない男など放っておけばいいのに。
俺はその男の変わりにすらなれないのか。
あぁ、悔しい、悔しい、悔しい。
俺がその男よりも背が高かったのなら。
俺がその男よりも手が大きかったなら。
俺がその男よりも口が達者なら。
俺はお前を泣かせはしないのに、笑わせてやるのに。
どうして俺はこんなにも小さな生き物なのだろう。
「ニャア」
「慰めてくれてるの?」
「ニャア、ニャア」
「ありがとう、もう大丈夫」
お前はまたそうやって無理して笑うんだな。
俺じゃ駄目なのか。
そんなにあの男がいいのか。
あぁ、憎い、憎い、憎い。
どうすればお前は俺を愛してくれるのだろう。
「見て。今日はたくさんあるの。これは今日彼が使った紙コップ。コーヒーを飲んでいたんだ、ここに口を付けて」
お前の赤い、滑った舌が紙コップに伸びる。
それから赤い唇も腫れた頬も全てその紙コップに。
あぁ、羨ましい。
俺はそんな無機物にすら劣るのか。
「ンフフ、関節キス。内緒だよ?」
赤く腫れた頬をさらに赤くしてお前は俺に笑う。
綺麗な綺麗な笑顔。
「これは彼がプリントミスした書類。持ち出し禁止だから内緒ね。はあ、同じプロジェクトに参加できたらいいのに。そうすれば彼を1秒たりとも見失わない」
何かに酔うように、誘われるように紙の束を抱き締める。
紙の束を胸に抱えて、それから体を丸めて。
お前を殴った男を思いながら抱き締めているのか?
それとも抱き締められているのか?
ああ、寂しい、寂しい、寂しい。
俺はこんなに側にいるのにお前は俺を見てもくれない。
「はぁん、これは彼がお昼に食べてたお弁当。お箸もあるんだよ?」
何も入っていない、空の弁当箱に頬を寄せて、涙まで流しながらあの男の名前を呼ぶ。
それから箸をくわえて、ゆっくり舌で味わって、恍惚とした表情をする。
「あぁ羨ましい。お弁当は何もしなくても彼に食べてもらえる。お箸だって使ってもらえる。僕も食べてくれればいいのに」
お前は目を瞑って、それからそっと殴られた頬に手を当てる。
嬉しさと寂しさをあわせた表情で、痛々しい笑い方をする。
お前はそっと寄り添った俺に気付いてくれただろうか。
気付いてはないんだろうな。
「はあぁ・・・勃っちゃった」
身体を起こして、お前は膨らんだズボンを上から撫でる。
優しく揉むように、時には潰すように。
ぐしゃぐしゃと擦り上げていくとズボンの前に染みが広がる。
にちゃにちゃした粘着質な音が耳が良い俺にはよく聞こえる。
あの男を想像して、あの男にめちゃくちゃにされる自分を想像して、そうやっていつもお前は自慰をする。
そんなにペニスや睾丸を潰したら痛いだろうに。
ついには手で潰すだけじゃ飽きたらず、柱に擦り付けて潰している。
まるで誰かの足に縋るようにして。
ズボンの前を酷く濡らした彼は服を脱ぎ捨てる。
白い肌には不釣り合いな真っ赤なペニス。
鞄から大きなクリップを取り出して俺に見せてくる。
「これ、会議で彼が使ったの。緊張するとクリップを触る癖があるの。今日は業務報告があったから、すごく緊張しててね、たくさんたくさん触ってたの。あぁ、あの指で、グリグリって。そうやって僕の乳首も虐めてくれたらいいのに」
起立した両乳首にクリップを押し当てて、よだれを垂らしながら譫言のようにあの男を呼ぶ。
そしてお前はクリップから手を離した。
「い゛ぎぎぎいぃぃ!!!あ゛っあぁぁ!痛いっ痛いっ!もっと、もっと虐めて、もっと抓って!う゛あ゛あ゛ぁぁ」
ギリギリと乳首を締め上げるクリップをさらに捻って、指で弾いて。
終いには床に擦り付けて涎まで撒き散らしている。
「あ゛ぁっらめ、まだぁっまだ遊ぶのぉ・・・」
身体をびくんびくんと跳ねさせながら手探りで箸を掴んだ。
身体をゆっくり起こすとぐちゃぐちゃに濡れて、ピュッピュッと先走りを零すペニスを掴む。
そして彼ははくはくと息をする尿道口に箸を押し当て、ぶっすりと差し込んだ。
「ぎゃあああぁぁ!!!」
余りの痛みに目を見開いて悲鳴をあげている。
でもお前はそれだって嬉しいんだろう?
だってペニスに押し込まれた箸はお前が愛してやまないあの男の箸なのだから。
俺の目の前には痛々しいお前の勃起したペニスが揺れている。
ペニスから出た箸をつつくように俺の手を伸ばした。
「はひっはひぃっ!らめぇっ!あ゛あ゛っ僕のおちんちん虐めらいれぇぇ!」
「ニャー」
「はぅぅっあっああ゛あ゛!おちんちん壊れりゅ!あ゛んっあ゛あ゛っおちんちん、おちんちんもっと壊ちてぇ!はひい゛ぃ」
左右に揺れる振り子のようにペニスを揺らす。
ぴっちりと塞いだはずのペニスからは先走りが止まらない。
あぁ、こんなにも美しい。
あの男なんかにこんな姿を見せたくはない。
彼は濡れたアナルに指を当てて、ぎゅちぎゅち音を立てながら一気に3本もの指を押し進めた。
早急にアナルを押し拡げて、4本の指でさらに拡げる。
俺の手が大きいなら、器用なら、俺がお前にしてやるのに。
俺の小さくて不器用な手はお前のペニスに刺さる箸を叩く事しかできない。
彼は鞄からペットボトルを取り出してどぱどぱとローションを零す。
「あの人が、触ってた。飲んでた。はあぁ・・・ここ、ここに指を当てて、彼が!あ゛があ゛あ゛ああっ」
かなりの容量オーバー、ミチミチ音を立ててペットボトルは彼のアナルを犯した。
涎を垂らして、息も絶え絶えに俺と同じ姿勢になる。
少し短い尻尾まで生えて、俺とお揃いだ。
あぁ、そのまま小さくならないだろうか。
俺を見てはくれないだろうか。
目の前にいるのに、お前の視界にいるのに、どうしてお前の目は俺を映していないんだろう。
「あ゛っあぁぁっあんっあっシンゴさんっシンゴさぁんっあっああ゛っしょこぉ!ひぃん!あ゛あ゛あ゛おなかっあっあ゛っこわれりゅうぅ!」
「ニャアニャア」
「あうっあっあああっシンゴさんっあん!シンゴさんっイく、れる、あっあっシンゴさっふあああぁぁ!!!」
目に涙を溜めて、ペニスから精液を出すこともなく彼はイった。
ぐぽっと音を立てて抜けるペットボトル。
彼はびくびく震えて、そのまま仰向けに寝そべった。
そしてペニスに刺さったままの箸を乱暴に動かし始めた。
「あぎゃ、あ゛っあ゛っあああ゛あ゛おちんちんああ゛っあっ」
「ニャー」
「おぢん゛ぢん゛ごりゅごりゅされてる、おちんぢん゛がっあ゛ああぁっシンゴしゃあぁんっあ゛ぁ」
「ニャアニャア」
「も、らめらめ!もぉおぢん゛ぢん゛おがじぐなるう゛ぅぅ!あひあああぁぁ!」
ペニスから箸を引き抜き、お前は獣のような声をあげる。
俺はドロドロと零れている精液をざらつく舌で舐める。
残さないように、丁寧に、ペニス周辺を汚している先走りまで舐める。
「あぁんっ、まだ舐めちゃ駄目。おしっこでちゃうぅ」
「ニャア」
「んんっもう!駄目でしょ」
「ニャーニャー」
「んふふ、一緒にお風呂入ろうか」
お前は痛々しい胸元のクリップを外してから俺を抱えてゆっくりと身体を起こす。
目の前にある赤い、血が滲んでいるようにも見える乳首に舌を這わす。
痛いだろうに、こんなに自分ばかり虐めて。
俺はこんなに優しくお前を舐めてやれるのに。
あぁ、なんてもどかしい。
「んぁっだめぇ。シンゴ大人しくしてて」
「ニャアニャアニャア」
「甘えても駄目。もう、シンゴはホント甘えん坊なんだから」
あぁ、嬉しい、嬉しい、嬉しい。
お前の口がようやく俺の名前を呼んだ。
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