ComingOut:57

俺は鈍いらしい。
実際鈴木のこんなにだだ漏れな恋心にも気付かなかった程だ。
最近自覚した。
甘えたい盛りらしい鈴木は俺に何かと求めてくる。
一生をあげたのだから尽くしてやろうと俺なりに精一杯だ。
今だって鈴木に好き放題されてる。
今日は俺を弄りたいらしい。
背中とか腕をつついてみたり、俺の指で遊んでみたり。
いちゃいちゃするのが余り好きではない俺としてはこーゆーのは嫌いなんだが鈴木が満足してるからそのままにしてやってる。
まぁ割と落ち着いたと思うのだ。
そうなれば気になるのは他人なわけで。
最近は吉田が気になって仕方ない。
あぁ、恋愛感情を持って吉田が気になるとかそーゆーんじゃない。
なにそれ気持ち悪い。
アレだ、吉田と中村の馴れ初めとか吉田の考えてる事とか知った上でだ。
アイツ等は隠すのがうまい。
今だっておっぱいおっぱい言ってる吉田に中村がほどほどになーんていいながらおっぱいしゃぶらしてるけど何考えてんだか。

おそらくホリーは中村の気持ちを理解した上で身体だけの、所謂セフレをしてる。
同じ匂いと陰湿な匂いがするから大体わかる。
俺は本気の奴をセフレにしない。
たぶんホリーもそうだ。
だけどなまじ中村が大人なだけにイケんじゃねぇ?ぐらいの気持ちでホリーは中村を相手してるに違いない。
中村が傷付かないとでも思ってんのか、あのクソ野郎。
そもそも振り方も気に入らない。

「信じたのか?」

その一言だ。
ぐだぐだ言う前にソレはないだろう。
そう言ったなら関係を持つべきではないだろ。
平気そうな顔してビール飲んでた中村にも腹が立った。
ノリで買った酒で酔っ払ってふと零した言葉を俺は忘れてない。
吐きそうなほどムカついたのも中村の痛い笑い方も平然としてた吉田の顔も全部覚えている。

鈴木はようやく飽きたらしく鞄からDS取り出してゲームを始めた。
原田は携帯弄ってるし山下は雑誌(原田の)を読んでいる。
相変わらず吉田はおっぱいしゃぶってるし、そんな吉田の背中に中村は本を置いて読書をしている。
俺は鈍いしエスパーでもないからアイツ等がわからない。
腹のさぐり合いは苦手だ。
面倒だしわかりにくいアプローチが嫌いだ。

「鈴木くん」
「んー?何?」
「デートしない?」
「・・・」

あれ、無反応?
背中の向こうにいる鈴木を見てみれば口を開けたまま間抜けな顔をしてる。
開いたままの口に舌を突っ込んで、気が済むまで貪る。
ぐちゃぐちゃ音を立てて、口が離れたときには涎まみれ。
だって鈴木くん口塞がらないんだもの。

「嫌ならいいよ。俺帰るから」
「ひく!」

呂律が回らない口から吐き出された言葉に従って鈴木くんは鞄を手にする。
俺は他の開いた口が塞がらない奴等に笑いながら手を振った。

「じゃあな、アホ共」

恐ろしいほど居心地が悪かった視聴覚室を出る。
あー首が凝った。

「どっどこ行く?」
「鈴木くんが行きたいとこでいいよ」
「今考える!」

あぁ、鈴木は楽でいい。
ただこれだけでこんなに喜ぶんだから。

「お前は簡単だな」
「我ながらそう思っている」
「頼むからまどろっこしい事だけはしてくれるなよ」
「俺そんな器用にできてないから平気だろ」
「そうね、単純だもんな」

隣でスキップでもしそうな程鈴木は喜んでいる。
いつか俺の頼みを全てきいてくれるぐらいにならないかしら。
この前アナルプラグ挿れて1日過ごして言ったら殴られたんだけどいつかしてもらいたい。
本当はローターかバイブがいいんだがさすがに音がアレだしな。
・・・ローターならいけるか?

「鈴木くん、今度授業にローター挿れたまぶへっ」
「いきなりなんの話だ。アタマそればっかだな」
「男のロマンじゃない」
「・・・佐藤が処女くれるなら考え」
「ハァ?」
「すみません。ごめんなさい。調子に乗りました。だからその拳はどうか納めて下さいすみません」

絶対、意地でぶっ込んでやる。
トイレに押し込んで縛り上げて鍵開けっぱで放置してやる。

「つかさ、」
「ん?」
「何かあった?」
「なんで?」
「なんつーか、突拍子のないこと口走るのはいつもだしアタマピンクもわかってんだけどさ」
「オイ」
「なんか変だぞ、今日。いきなりデートもそうだし、それにどっか上の空」

鈴木くんのくせによく見てるじゃない。
鈴木くんがそー言うなら吉田と中村は気付いたかもな、失敗した。
原田もおかしいとは思ったに違いない。

「よく知らんけど無理すんなよ。俺別に今日デートしなくてもいいよ」
「じゃあ俺のためにいい気晴らしになるデートを提案してよ」
「・・・カラオケ?」
「不正解」
「じゃあボーリングは?」
「不正解」
「・・・・・ホテル」
「大正解!」
「結局かよ!嫌だよ!お前最近フィストしようとしてるだろ!」
「なぜバレた・・・!」

ひっそりガバらせていきなりぶっ込んでやろうと思っていたのに!

「わかるわ!最近やたらに解す上にがっつりケツ弄るし終いにはアナルプラグ挿れて生活しないかなんてわからない奴がいるかよ!」
「チッ」
「裂けたらどうすんだよ!嫌だよ!絶対痛い!」

痛いの好きなくせに。
鈴木の肩と腰を掴んで少し強引に抱き寄せる。

「・・・腕突っ込ませてよ」
「かっ、かっ、格好いい顔して言っても嫌なものは嫌なんだからな!」

・・・サービスしてやったのに。
サービスし損じゃないかこの野郎。

「ハァ・・・テンション上がることねぇかなぁ・・・」
「うーん・・・」

壁に額を当てて悩む。
俺が悩んだところで変わりはしないって言うのがさらにもどかしい。
傍観決め込むのも楽な話ではないよなぁ。
俺は不器用だな。

「佐藤、」
「ん?」

ガチン

「う゛っ・・・痛い」
「コッチの台詞だ馬鹿野郎」

不意打ちちゅーに失敗して歯キスって今時中学生でもしないぞ。
めっちゃ口が痛いんだけど。
加減をしらないのか。

「くそー・・・前歯が痛ぇ」
「慣れないことをするからだ。見てみろ、中兄が固まってるだろうが」
「ギャアアアアアア!!!」

不意打ちちゅー(と言う名の歯キス)現場を目撃してしまった中兄はショックの余り動けないでいる。
中兄未だに俺が無理矢理付き合わせてると思ってんのかな。
むしろ逆だ、そろそろ強姦疑惑が晴れてほしい。

「すすす鈴木、お、お前、そ、そういうのは家で」
「動揺しすぎでしょ、中兄」
「黙れ!俺はお前等の中だったら鈴木はまともな部類だと信じていたんだ!」
「コイツちんこ踏まれてイけるんだぜ」
「何バラしてんだ!やめろ!やめてください!」
「う゛お゛お゛お゛・・・!そんなこと知りたくなかった!」

教え子の知らなくていい情報で消化不良おこしている中兄の肩を掴む。

「じゃあ俺今から鈴木くんとアナルセックスしてくるから。中兄も混ざる?」
「さっさと帰れエエエェェ!!!」

あースッキリした。
鈴木くんと中兄はダメージでかそうだけど俺はスッキリした。

「お前・・・最悪・・・」
「でもスッキリした。だから鈴木くんを俺イチオシのケーキ屋に連れて行ってやる」
「・・・あんまり甘すぎるのは嫌だ」
「ピスタチオのムースがうまい店教えてやるよ」

結局5つもケーキを奢らされたが気持ちはいくらか軽かった。
あぁ、俺は傍観者に向いていないな。
でもけしかけるのは俺じゃない。
だから今は鈴木くんで遊びながら我慢していようと思う。




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