桃太郎
ねぇ、本気で言ってるの?
CAST
桃太郎:鈴木 夏彦
犬:吉田 昌秋
猿:中村 冬真
雉:山下 綾平
おばあさん:佐藤 清春
おじいさん:原田 由希也
鬼:中西 和樹
あるところにおじいさんとおばあさんが適度に仲良く暮らしていました。
「なぜだ、なぜ・・・!ミスキャスト感がパないぞ!!!」
「俺も思っている・・・!なんでお前なんだ!俺はっ俺はお前なんかと一緒に一生を終えたくない!」
「っていうかなぜ俺がおばあさんだ畜生っ!おかしいだろうが!」
最初から世界観完全無視なおじいさんとおばあさんですがちゃんとやることはやります。
おばあさんは洗濯籠を抱え、おじいさんは斧を手に面倒臭そうに出掛けていきました。
「洗濯とかぜってー籠重くなるじゃん。お前運べよ」
「俺だってなんか芝刈るんだぞ。斧でどう刈るんだよ、鎌ないのかよ」
「お前相変わらず馬鹿な。柴だ、小枝のことだ」
「マジで?!」
「俺はなんでこんな馬鹿が相方なんだ・・・!畜生!」
おばあさんは嘆きながら川へ、おじいさんは頭が良くなった気がして浮かれながら山へ向かいました。
おばあさんが川で洗濯していると目の前を大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。
「桃・・・俺そんなに好きでもないな。あんなでかいと運ぶの面倒だし食べきらないし腐ったら虫集るし」
おばあさんは流れていく桃を見送りながら洗濯を続けました。
全て洗い終わると籠へ移し、夕飯用の魚を数匹捕りました。
「ババァ!見ろ、でけー桃!」
「何拾ってきてんだジジィ!!!俺見捨てたのに!柴刈りはどうした!」
「拾えよ!珍しいだろ!興味を持て!柴刈りは後でします!」
捨てろと言うおばあさんの意見を無視しておじいさんは桃を担いで家へ帰りました。
その後おばあさんに柴刈りが終わるまで帰ってくるなと言われ、おじいさんは家を追い出されました。
おじいさんはしぶしぶまた山へ向かいました。
適当に柴を刈ったおじいさんが家に戻るとおばあさんが日本刀を手に桃を切ろうとしていました。
「・・・なぜ日本刀?」
「バカでかいから包丁じゃ無理だろ」
「種あるだろ、種。回し切ればいいんじゃねぇ?」
「もしかしたら種切れるだろ。俺今なら某海賊漫画にでてくる最強の剣士になれそう」
「なれねぇよ!お前中学生か!」
おばあさんは舌打ちをすると包丁で種を避けるように桃を切りました。
「ん?種がない?品種改良か?」
「割ってみようぜ」
おじいさんが無理矢理手で桃を裂くと中から半泣きの男の子が出てきました。
男の子はおじいさんに飛び付くと泣き始めました。
「殺されるかとおもった・・・!」
「うわあああ!離れろガキ!なんかベタベタする!ババァなんとかして!」
「汚ぇ!近寄るな!」
おじいさんは桃から飛び出てきた男の子に桃太郎と投げやりな名前を付けました。
そしておじいさんとおばあさんのもとですくすく育ちました。
桃太郎はよく食べる男の子でした。
おばあさんは毎日毎日山のようにご飯を食べさせました。
「ふまい。ばあちゃんのめひふきらー」
「汚ぇ。飯口に入れたまま喋るな」
「ほうらぞ。ばあちゃん怖ぇはらな」
「テメェも口を開くなジジィ」
「「ふぉめんらはい」」
「お前等明日の味噌汁の具にしてやろうか」
おばあさんに殴られた桃太郎とおじいさんは大人しくご飯を食べました。
桃太郎がすくすく育ち、おじいさんとおばあさんと身長も余りかわらなくなると家の手伝いに励みました。
川で魚を捕り、街へ売りに行き、山でキノコを捕り、夜な夜なおじいさんとおばあさんと遊びました。
そんなある日おばあさんはきびだんごをこしらえ、おじいさんは旗を作りました。
それらを桃太郎に渡しおじいさんとおばあさんは言いました。
「鬼ヶ島ってとこにな、なかなかいい男がいて宝を持ってんだと。その宝は町の人のものらしい」
「だから宝盗ってきて。あぁ、間違った。取り返してこい」
「ついでにマジでいい男だったら攫ってこい」
かなり邪な頼みでしたがおばあさんが行けと言うので桃太郎は行くことにしました。
鬼ヶ島について町で聞き、その道すがら犬に会いました。
「ねーねー、どこ行くの?」
「鬼ヶ島」
「一緒に行ってあげようか?」
「いいのか?」
「うん。その代わりお前遊んでよ」
「いいぞ」
犬は桃太郎に覆い被さると桃太郎で遊びました。
桃太郎はしばらく好き放題にされてからようやく解放されました。
痛い腰をさすりながら歩いていると猿に会いました。
「どこ行くんだ?」
「鬼ヶ島」
「ふーん・・・お前等で勝てるのか?」
「きびだんごやるからついてきてよ」
猿はきびだんごにつられて寄ってきました。
うまいうまいといいながらきびだんごを全て食べてしまいました。
桃太郎は食べたかったきびだんごを猿に食べられて酷く怒りました。
猿は悪かったとお礼にたくさん遊んでくれました。
またしばらく歩くと今度は雉に会いました。
雉は大変偉そうでした。
「テメェ等どこいくんだ?」
「鬼ヶ島」
「ふん。鬼退治か?ダルい事してんな」
「鬼がすげぇイケメンで細マッチョでちんこでかいって噂だ」
「よし、仕方ないから俺様が付いて行ってやろう」
こうして桃太郎は仲間と共に鬼ヶ島へ向かいました。
数日間歩いて、夜な夜な遊び、重い身体を引きずりながら港町までなんとかつきました。
船を借り、ゆっくりと先へ進みます。
「宝盗って男攫えばいいのか?」
「うん。じいちゃんとばあちゃんがそう言ってた」
「じゃあ俺が宝の場所を探そう。犬は鼻が利く」
「じゃあ俺は犬と一緒に宝を探そう。猿は両手が器用だ」
「じゃあ俺は上から鬼を探そう。雉は空が飛べる」
「じゃあ俺が鬼を攫おう。危なくなったら助けて下さい」
桃太郎と仲間達は船の上で作戦を立て、静かに鬼ヶ島につきました。
鬼ヶ島は岩だらけの場所でした。
桃太郎達はこそこそと岩陰に隠れながら鬼がいそうな洞窟を見付けました。
ゆっくりと中へ入り、明るい部屋をひっそり覗きます。
「フロイト・・・ユング・・・ベンサム・・・」
何か呪文を唱える鬼はなかなかいい男でした。
ですがとんでもなく強そうでした。
「アレから宝を盗るのか?」
「アレを攫うのか?」
「「「「絶対無理」」」」
桃太郎達は鬼に見つからないようにこそこそと洞窟を出ていきました。
そして船に飛び乗るとものすごい勢いで漕ぎました。
「無理無理無理無理!」
「なんか呪文唱えてたぞ!」
「怖っ!鬼のくせになんか陰湿そう!」
「執念深そうだったしな!」
桃太郎達は一目散に逃げ、急いでおじいさんとおばあさんの家に戻りました。
犬も猿も雉もなんとなく桃太郎についておじいさんとおばあさんの家に行きました。
「・・・で?逃げた上に犬や猿や雉まで拾ってきたのか?」
「飼っていい?」
「駄目に決まってるだろうが!俺は馬鹿を2人も面倒みているのに馬鹿が増えてるだろうが!」
「一緒にしないでくれ」
「黙れ猿!川に沈めるぞ!」
「いいじゃん。許してあげなよ。雉可愛いよ」
「黙れジジィ!!!お前働け!柴刈りついでに熊に狩られろ!」
「じゃあ雉さんは俺と柴刈りついでににゃんにゃんしようねー」
「ちょ、離れてくれ。テメェ近いぞ。俺様に寄るな」
「おばあさん、魚捕ってきてあげるよ!行こう、猿さん」
「おー」
部屋に残ったのは怒りで震えてるおばあさんと桃太郎だけになりました。
桃太郎は恐る恐るおばあさんを見上げます。
「ねぇ、飼っていいでしょ?」
「捨ててきなさい」
それからしばらくの間おばあさんは桃太郎と口を利いてくれませんでした。
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