ComingOut:55

梅雨時期になると髪が重たくて仕方ない。
伸ばし始めてもう2年、短髪だった俺の髪はそろそろポニーテイルができそう。
佐藤だけが知っている俺の髪を伸ばしている理由。



中村と付き合い始めて早いものでもう3ヶ月目。
付き合っちゃおーぜなーんて軽い言葉で始まって、まだ続いてる。
深いところまで干渉しないのは俺がしないでいるから。
今みたいに楽しければいいって言う佐藤の気持ちもわからないでもない。
でもそれ以上に俺は知ることを拒否しているんだろうなって思ってる。
そうでもしなきゃやってらんないのも事実。

『は、あっああぁ!』
『相変わらずココ好きだな、お前』
『うあっあ、好き、そこ好き』

外にまで響いてますよー。
俺が見張ってなかったらどうするのって話よね。
教師とデキてるなんて知られたらどうするのよ。
中村破滅するんじゃないの?
英語科のホリー、堀切裕也センセーは俺等のクラス担当の英語教師。
中村の兄ちゃんの友達だ。
そんでもって中村の本命だ。
俺はこの行為のためのカモフラ要員ってところかしらねー。
中村は放課後課外授業っていうか補習っていうかなんか英語の勉強目的にココに来ている。
表向きはって話だよね。
毎回毎回迎えに来ればこの状況、俺はただ終わるのを待ってるだけ。
バレてないと思ってんのかもね。
いつも終わったころにその場を離れて、それからまた迎えに行ってるから。
迎えに来なくていいって言われるけど、冷たーいとか照れ屋さんとか言ってはぐらかしていつもいつも迎えに行ってる。
俺って健気でしょー?

『あっソレいやだって、やあぁっ』
『っは、締めすぎ』
『あっあっふあぁぁ、あぅっ』
『は、ヨさそうだな』

初めて中村とヤったのは童貞卒業間もない、それも彼女と別れたばっかだったとき。
割とへこんでたときに流されて流されてしてしまった。
友達とそーゆーことシて、割り切れるのかなーなんて思ったけど割と簡単に割り切れた。
俺はもともとンなごちゃごちゃした性格でもないし、それにヤってて誰かの代わりなんだろーなーって思ったし。
それからしばらくして佐藤含めて3人で遊んだ時に相手がわかった。
まさかソレがウチの先生だなんて思いもしなかったけど。
話を聞いた時、佐藤が一番初めにキレた。
マワしてやるって言ってたけど中村が終わったことだから気にしてねーなんて言うから佐藤は引き下がった。
俺はまぁ当たり前だろうなぁって思ってた。
だって教師と生徒なんて不毛じゃない、無理無理。
いくら知人だったとしてもバレたら中村は退学免れないし、先生だって教員免許はく奪されるんじゃないの?
よく知らないけどね、どうなるかーなんて。
危険な橋は渡らないに限る。

『あ、イく、出るっあうっあっああぁ!』
『っは、んん』
『やあぁっ、中、ああぁ・・・』

中村とホリーの行為も終了。
中出しされたってことはトイレは避けるか。
とりあえず教室戻ろうかな。
他の面子は佐藤が連れて帰ってくれてるかしら。
重い腰を上げてじめじめしてる廊下を歩いて教室へ。
髪が重たい。
切りたいけど切るのは我慢。
髪って失恋したら切るって言うでしょ?
だから俺は切らない。

「あれ、吉田まだいたの?」

あ、原田に会っちゃった。
まだ帰ってなかったのか。

「中村迎えに行ったんじゃなかったの?」
「お腹痛くなっちゃってさー、うんこしてたのー」
「汚ぇな、スカトロ吉田」
「言葉責め?勃つよ?」
「原田帰るぞ。あれ、吉田?お前も帰る?」
「帰る帰る。中村くん迎えに行ってくるー。校門で待ってて」
「オケー」

佐藤と鈴木、それから山下もまだいたらしく原田を連れて行く。
何も言わなくても分かったらしい佐藤は一瞬で不機嫌になった。
もう少し感情隠すの上手くなりなさいよ。
顔が鬼よりも怖いじゃないの。
俺その顔嫌いなのよ、チビりそう。
教室に戻って鞄を取るともう一度英語科準備室へ。
またじめじめした廊下を歩いて、重たい髪を後ろに流す。
英語科準備室のドアをノック、クラスと名前を言えば入っていいぞと言われる。

「しつれいしまーす。中村くんはー?」
「今トイレに行ってくるって出て行ったぞ」

テメーが中出ししたからだろうが。
後始末ぐらいしてやれっつーんだよ。

「そうなんですかー。じゃぁココで待ってまーす」
「お前も中村見習って少しは勉強しろよ?この前の中間、赤点だったろ?」
「佐藤と原田もじゃないですかー。俺だけじゃなーい」
「お前等3人追試だからな」
「いやーん、何回受けるんだろー」
「1回で終わらせてくれ・・・」

お前が担当っつーだけで勉強する気がしねぇんだよ。
佐藤と原田は単に苦手なんだけど。
佐藤にホリーが勉強しろ言ってた言ったらマジギレしそうだなー。
佐藤は我慢してるだけでいつ退学になってもいいとか言ってるしなー。
まったく少しは大人になりなさいよね。
やり方ってものがあるでしょうに。
ホントいつだって自分より友達なんだから。
友達のことと自分の脱処女のことになるとホント短気なのよね。

「そう言えばお前中村と付き合い始めたんだって?」
「ヤダー、誰に聞いたんですかー?」
「中村が言ってたから。ほら、俺アイツは昔から知ってるし」
「お兄さんと仲良いんでしたねー。付き合ってる件については否定はしませんよー」
「仲良くやれよー?先生そーゆーの偏見ないから」

黙れ、クズ。
モロに自分がソッチ系だからだろうが。
喧嘩売ってんのか、コイツ。
顔も見たくなくてホリーに背を向ける。
中村くん早く帰ってこないかしら。
ココで待つって選択は間違ったかも。
しばらくテキトーに書籍棚弄ってたら中村くんが帰ってきた。
それはそれはお疲れのご様子で。

「あれ、吉田来てたの?」
「お帰り、中村くん。下で佐藤達も待ってるよ」
「そうか。じゃぁ先生、ありがとうございました。俺帰るんで」

鞄に机に一応出してあった英語の教科書やらノートをしまって帰り支度をする中村。
全部しまい終わったこところで英語科準備室を後にする。

「中村、お前の兄ちゃんは元気か?」
「さぁ?連絡ないんで元気なんじゃないですか?」
「相変わらずお前等兄弟は淡泊だなぁ・・・。じゃぁ次は来週でいいか?」
「はい、それで構わないです」

ふーん、俺の前で次の約束ってねー。
ホントコイツ嫌い。
感情が顔に出ない中村は何を考えてるのか一切わからない。
少しぐらい後ろめたいとか思ってくれてるのかしら。
ま、それはないよねー。
ホリーだって俺をいいカモフラ要員だって思ってるに違いない。
中村とホリーの話を聞いてるのも嫌になったから中村の腕を引く。

「早くしないと佐藤がキレるよ。じゃぁね、ホリー」
「アイツ待つの嫌いだもんな。じゃぁさようなら」
「全く、見せつけやがって。気をつけて帰れよー」

ホリーのその笑い方嫌いなんだよね、俺。
暴力嫌いだけど殴りたくなる。
中村の手を引いたまま、じめじめした廊下を歩いて校門へ。
あー、髪が重たい。
早く切ってしまいたい。

「吉田、お前機嫌悪いの?」
「ん?なんで?」
「なんとなく」
「梅雨時期は髪の毛重たいから不機嫌なのよ」
「少しぐらい切ればいいと思うんだが」
「ヤダ、この髪型最先端なのよ?この良さがわからないのー?」
「ああ、全く分からないな。短髪だった時の方がよかった」
「あらー、中村くんが好きだって言うなら切ろうかしら」
「好きだとは言ってない」
「照れなくてもいいじゃないの、かわいいー」
「うぜぇぞ」

俺はホリーが失恋したらこのうざったらしい髪を切る。
これは俺の復讐戦なのだ。




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