赤ずきん

理想と現実の狭間で

CAST
赤ずきん:間々原 充
狼:高岡 良樹
猟師:柏木 一星
お婆さん:町田 裕二
お母さん:西 恭平



ある町に赤い頭巾をかぶった可愛い男の子がいました。
今日も元気におつかいに行く様です。

「本当はね、すごくすごくお母さんが行きたいんだけどね。おばあちゃんが赤ずきんがいいって言うからね」
「なっ泣くほど行きたいならお母さんも一緒に行けば」
「ダメよ!だって、だって何を話したらいいのかわからないじゃない!」
「て、天気の話とか!」
「・・・そんなんだから友達少ないのよ」
「う゛・・・!」

2人は床に沈んでメソメソしています。

「これ、お婆さんが好きな緑茶と和菓子ね。あとタッパーにナタデココ詰めておいたから冷蔵庫に入れてね」
「うん。おばあちゃん喜ぶよ!」
「そうかな?!もっといるかな?!」
「ナタデココの賞味期限知らないけどタッパー5つもあれば十分じゃないかな!」

お母さんは赤ずきんにポーチを掛け、バスケットを手渡します。
赤ずきんはずっしりと重いバスケットを抱えるように持ち、それから家を出ました。

「お母さん行ってきます!」
「いってらっしゃい!狼と変態に気をつけるのよ!」
「はーい!」

赤ずきんはお母さんに手を振るとお婆さんの家に向かって歩き出します。
お婆さんは赤ずきんの家から少し離れた森の中に住んでいます。
狼や熊がいるから森で遊ばないようにとお母さんやお婆さんは言っていました。
でも森には兎や栗鼠、小鳥がいっぱいいて赤ずきんは森を散歩するのが大好きでした。

「くちぶえはなぜーとーくまできこえるのー」

赤ずきんは上機嫌で歌を口ずさみながら歩いて行きます。
野兎を見つければ追いかけ、小鳥を見つければ囀りを真似しました。
のんびりのんびりと森の奥へ進みます。

「るららららーらーらららんらんらん歌詞がわからなーい!」

元気いっぱいの赤ずきんは調子に乗ってスキップまでしていました。
さらに調子に乗ってくるくる回っていると目が回り小石に躓いて転んでしまいました。

「ぎゃっ!」

転んだ拍子にバスケットをひっくり返し、たくさんのナタデココが零れてしまいました。
和菓子も潰れてしまっています。

「うっ、うぅぅ・・・どうしよう・・・」

赤ずきんは困ってしまいました。
お婆さんへの荷物をぐちゃぐちゃにしたとお母さんに知られたら怒られてしまいます。
赤ずきんが悩んでいると甘い匂いに誘われて狼がやってきました。

「うぇっ・・・なんだこの甘い匂い・・・」
「ぎゃー!!!」
「ぎゃー!!!びっくりしただろ!」

赤ずきんの悲鳴に狼が耳を塞ぎます。
涙目で震えている赤ずきんを見て狼はニヤリと笑いました。

「どうした?俺が怖いのか?」
「うっうぅっ・・・」
「食べちゃうぞー」
「お母さんに怒られるよー!どうしよう!狼さん助けてー!」
「狼よりお母さんが怖いのかよ!」

泣きつく赤ずきんを狼は宥めます。
狼は大変お人好しでした。

「ナタデココこぼしてっ和菓子潰れてっ」
「と、とりあえず拾えば食えるんじゃないか?」
「森の中にはたくさんの微生物がいて腐葉土の上を歩くと靴裏にだって1億を越える微生物がつくのにそんなのおばあちゃんに食べさせられないよー!」
「気持ち悪っ!そんな事言われたら有名な3秒ルールとかどうするんだよ!」
「アレはダニの死骸や糞、埃などが付着し」
「言うな!言わなくていい!」
「うわああぁっお母さん怒ったら怖いんだよー!」

狼は困り果てました。
久々のカモだと思っていたのにとても面倒なことになりました。
狼は目の前の赤ずきんを食べることができればそれでいいのです。
とりあえず泣き止まない赤ずきんの服についた埃を払い、無事だったナタデココや和菓子をバスケットに戻していきます。

「狼さんどうしよう・・・」
「そうだなー。とりあえず花でも摘んでおばあちゃんにでも謝ればいいんじゃないか?」
「お母さんは?」
「おばあちゃんに黙っててって言えば?おばあちゃんも怖いのか?」
「おばあちゃんは優しいよ!」
「じゃあ大丈夫だ。ほら、花摘みに行くぞ」

狼は赤ずきんの荷物を持ち、赤ずきんの手を引きながら花畑へ向かいました。
花畑までは差ほど遠くなく、すぐにつきました。
そこには色とりどりの花が咲いていました。

「狼さん・・・割とメルヘンチックな所を知ってるんだね」
「馬鹿にしてるよな?お前俺を馬鹿にしてるよな?」
「わー!綺麗なお花!」

赤ずきんは狼の手を離すとたくさんの花を摘みました。
狼もそれを手伝い、バスケットには色とりどりの花が溢れます。
赤ずきんは夢中になり、たくさんの花を摘みました。
狼は途中から面倒になりその場でごろごろし始めました。
はしゃぐ赤ずきんを見てどうやって食べてしまおうか悩んでいました。
頭の中は厭らしい妄想でいっぱいです。
そうとは知らない赤ずきんはたくさんの花を持ち狼へ近寄ります。

「この花可愛いよ!狼さんにも分けてあげる!ここ教えてくれたお礼だよ」

にこにこと無邪気に笑う赤ずきんを見て狼は我慢できなくなりました。
赤ずきんの口を塞ぎ、その場に押し倒します。
服の中に手を入れ、赤ずきんの感触を確かめるように手を動かします。

「ふっんんっんっ」
「お前感度いいな。初めてじゃないのか?」
「ふうぅっうっ!やっお、狼さん!やだやだ!」

赤ずきんは目に涙を浮かべながら抵抗します。
狼はその反応を楽しむようにさらに手を動かしました。
狼が赤ずきんで遊ぶ事に夢中になっていると目の前で何かがキラリと光りました。
次の瞬間、こちらに何かが飛んできました。

「う゛あ゛っ」

狼の頭には矢が刺さり、狼はその場に倒れてしまいました。

「お、狼さん?!」
「赤ずきん!大丈夫?」
「へっ?だ、誰?」
「町で猟師をしている者です。あぁっ可愛い赤ずきん!この変態狼にあんなことされて!このっ下衆野郎が!」
「う゛っう゛っ」

猟師は怯える赤ずきんを抱き締めると狼の頭を殴りつけます。
容赦ないです。

「痛ェなコラ!」
「うるさいですよ、この変態狼!」
「なんだと?!」
「さぁ赤ずきん。寄り道はこの辺にしておばあちゃんの家に行きましょうね」
「うん?猟師さん何でおばあちゃんの家に行くの知ってるの?」
「え゛っ、その、お母さんとの話を聞いて?」
「なんで聞いてるの?」
「ほ、ほら、見て。猟師さんはこんなに耳が大きいからね」
「そうかなぁ?」
「テメェただのストーカーじゃねぇか!」
「違う!ボディガードだ!俺はお前みたいな変態から赤ずきんのボディを守っているんだ!」

実は猟師は赤ずきんの家からここまでひっそりと後を付けていました。
猟師は自称ボディガードです。

「テメェも変態じゃねぇか!どうせ隙あらばぶっ込みたいとか考えてたんだろ!」
「そんな事は考えていない!俺はまずお友達から始めてゆくゆくは旦那として生きていく気構えだ!」
「ハァ?結局はセックスまでする予定だろうが!俺と何が違うんだ?」
「変態狼みたいにこんな場所で無理矢理なんて考えてはいない!」
「ヤるにはかわらないだろうが!」
「ムードとか必要道具とかいろいろあるだろうが!」

狼と猟師は赤ずきんそっちのけで喧嘩をしています。
赤ずきんは度々聞こえる卑猥な言葉に顔を真っ青にしていました。
赤ずきんは震える手でポーチに手を伸ばすとスタンガンを取り出します。
お母さんが変な人に襲われそうになったら使いなさいと教えてくれたのです。

「え、あ、赤ずきん?」
「それは何かな?」
「うわああん!お母さあん!変な人が出たよおおぉ!!!」
「「ぎゃあああっ」」

スタンガンはバチバチと音を鳴らして狼と猟師を攻撃します。
しばらくすると狼と猟師は気絶してしまいました。
赤ずきんはバスケットを手に取ると急いでお婆さんの家に向かいました。
息を切らしながら一生懸命走り、やっとの思いでお婆さんの家に着きました。

「うわっ赤ずきん?どうしたの?」
「おばあちゃああん!変な狼と変な猟師に襲われそうになったああっ!」
「だっ大丈夫?」
「大丈夫じゃないっ!家帰れないっ!」
「今からお母さん呼んであげるから。赤ずきん落ち着いて」

お婆さんは赤ずきんにお茶を出すとお母さんに電話をして赤ずきんを迎えにくるように言いました。
お母さんは大喜びでお婆さんの家まで駆けつけてくれました。




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