ComingOut:51

拉致・監禁・拘束。
俺ちょー不機嫌。

「風呂入りたい・・・」

バイト終わり、店先で待ちかまえていたのは山下と中村だった。
嫌な予感がしてソッコー走ったんだが山下の足に勝てずあっさり捕まった。
そのままタクシーで山下の家まで拉致。
その後山下の家で待ちかまえていた吉田と鈴木によって監禁。
更にビニル紐で椅子に拘束。
そして現在4人に囲まれて俺ちょー不機嫌ってわけ。
くそー・・・バイト先で汗かいたし油使ったからシャワー浴びないとベタベタなのに。
最早抵抗する気は0。
早く家に帰してくれ。
テスト空けになんだこの苦痛。
このまま寝てやろうか。

「佐藤寝ないで」
「無理。店暇だったから暇疲れした」
「なぁ、頼むよ」
「頼む奴が拉致監禁拘束なんかするか、ボケェ」
「こうでもしないと協力してくんねぇじゃん」
「あーしたくないね。勝手にしろ」
「たーのーむーよー」

要はホワイトデーの再来なのだ。
山下が誕生日何がほしいか原田に聞いたら山下が作ったケーキが食べたいとかほざいたらしい。
わざわざ作ろうと考える山下も山下だが原田も原田だ。
山下にできることを頼め。

「吉田も料理できるだろー?俺じゃなくてよくねぇ?」
「俺1人で山下くんに料理教室とか無理」
「中村も少しはできるだろー?」
「ケーキは作ったことないし。それ以前に俺カレーしか作れない」
「もう諦めろよ。つかなんでカップめんしか作れない鈴木くんがいるわけ?」
「その場に居合わせるという災難に見舞われて面白そうだから参加」
「おやすみなさい」

完全に諦めモード。
ホント面倒。

「・・・・・掘るぞ」
「はい、まずはお菓子作りの本を用意してください」
「「「諦め早いな!」」」

いや、山下くん本気だったもの。
生まれて初めて貞操の危機に直面したわ。
縛られていた腕と足は自由になった。

「鈴木くん、ストレッチ付き合って」
「嫌。お前身体かたい゛だだだだだ!ほら痛い!俺も堅いのにだだだだ!!!」
「よし、ストレス発散!あぁ、間違った。ストレッチ終了!」

身体を痙攣させてる鈴木くんを放置してキッチンへ。
あー・・・この面子で料理とか最悪。

「何を作ろうかしらね・・・」
「パスタパスタ!」
「肉!ハンバーグ食べたい!」
「俺ラザニア!」
「ラザニアよりグラタンがいい!あのたまご入ったやつ!」
「ケーキはどうしたボケエェェ!!!俺はお前等のママじゃねぇぞ!」
「「「「ママー!!!」」」」
「産んだ覚えはない!引っ付くな!離れろ!だいたい杉田さんのご飯はどうした!」
「4人で分けたから足りなかった」
「オイオイオイふざけるなよ!出前でも取れ!」
「お金ないの、グスン」
「今月ゲーム買っちゃって、グスン」
「バイトしてないから、グスン」
「オイイイィィ!可愛くない!気持ち悪い!!!鬱陶しい!!!」

ほらもう嫌だ!
なんで吉田が作らないんだ!
中村だってカレー作ればいいだろうが!
カップめんないのかこの家!
240kgの錘を引き擦りながら冷蔵庫を開ける。
・・・すげぇいろいろあるな。
めっちゃ高そうな肉がある。
でも面倒だからパスタにしよう。
ペペロンチーノにしよう、ソース作るのめんどくさい。

「夕飯作ってあげるから、ケーキ選んでなさい。鬱陶しい」
「「「「はーい」」」」
「吉田くんはお手伝いよー」
「えっ?!」
「俺巻き込んだのお前だろ。何さらりと腹黒いことしてんだ」
「やだ、バレてたの?」
「当たり前だ。他の奴等はお前呼んで俺まで呼ぼうとは考えないからな」
「そんなに怒らないで。スカトロプレイさせてあげるから」

この野郎・・・たまに考えることが腹黒いンだよ。
めんどくさいからって俺まで呼びやがって!
絶対中村といちゃいちゃしてたのを邪魔された腹いせに違いないんだ!
隣で鼻歌混じりに麺を茹でてる男を包丁で刺したいのを我慢して怒りを全てにんにくにぶつける。

「佐藤っ俺ガトーショコラ食べたい!」
「知るか!原田の食べたそうなの選べ!」
「アイツチーズ好きじゃん。チーズケーキでよくねぇ?」
「そうだな。後は俺のために苺ショートを」
「山下くん・・・テメェの誕生日じゃないのよ?」
「いや、原田にはシルバー買ってあるんだ。ネックレス」
「じゃあケーキいらねぇだろうが!」
「だって・・・」
「だってなんだコラ!あ゛あ゛?!」
「察しなさいよ、佐藤くん」
「そうだぞ。原田が食べたい言ったからに決まってるだろうが」
「違う!そんなんじゃない!」
「じゃあ作らなくていいんだな?」
「う゛っ!」

あっあの浮気野郎が!!!
我慢ならん!
なんでこんなに愛されてるんだ!
なんでアイツのためになんで、なんで俺が苦労しなきゃならないんだ!

「マジあの浮気野郎っ!サンドバッグにしてやらぁ・・・」
「佐藤、パスタ茹であがるよ」
「茹で汁捨てるなよ、使うから」
「はいはーい」

具材を入れたフライパンに吉田が麺を入れていく。
ガーッと炒めてガーッと混ぜて終わり。
テキトーだがアイツ等はこれぐらいでも文句言わないし。
つか言わせないし。
6人前ぐらいを一気に作ったから腕が重い。
皿に盛ってダイニングでフォークとスプーン持って待ってる奴らの前に出す。

「どーぞ」
「「「「いただきます!」」」」
「はいはい。さっさと食べて」
「佐藤は食べないの?」
「俺まかない食べたからいらねぇ」

鞄からルーズリーフ出して必要なものを書き出していく。
簡単なのにしないと俺が疲れる。
フードプロセッサーあるし混ぜるだけのチーズケーキにしたい。
ゼラチンあればいけるはずだ。
むしろビスケットにクリームチーズ塗ってジャムかけてチーズケーキだぞって言いたい。
でも山下くんがなああぁぁぁ・・・。
一生懸命な子をおちょくるのは趣味じゃないのよ・・・。

「佐藤が疲れてる」
「ほうはれ」
「鈴木くん、落ち着いて食べなよ・・・。口がハムスターになってる」
「はらふいへは。ふまひ」
「何を言ってるか全然わからない!もう喋るな!お前汚い!」
「鈴木くん、お行儀よく食べて。俺お行儀悪い子嫌いよ」
「ふぐっ・・・!ん゛、う゛っうぅぅ・・・」
「うわっちょ、ほら水!」
「喉に詰まらせたな。馬鹿だろ」
「山下くん、食べ終わったらコレ買ってきて。俺風呂借りるわ」
「うん。ありがとな」
「どういたしまして。お前等皿は洗えよ」

服は原田の置いてるやつを借りるかな。
あぁ・・・パンツどうしよう・・・原田の嫌だ・・・ノーパンもっと嫌だ・・・。

「山下くん、パンツも買ってきて・・・」
「パンツは奢ってやるよ」

溜め息をついて風呂場へ。
その後風呂から出たら俺が帰らないようにとパンツが人質になっていた。
ホント、パンツの為に朝方までチーズケーキ作らされるなんてとんでもなかった。
ド畜生!!!

***

俺の誕生日、少しハイテンションで登校したのに山下くんはおろか誰も来てなかった。

「何この俺だけハブな感じ・・・!」

どれだけ連絡しても出ないし俺中兄に呼び出されるし何これ!
ようやく3限終わりに鈴木が来た。
すげぇ眠そうなんだけども・・・。
って言うかその制服山下くんのじゃない?!
山下くんの香水の匂いがするんだけど!

「テメェ・・・誰の制服で登校してンだ?コレお前のじゃねぇだろ!」
「だって佐藤のウエスト大きかったし。つかあまり大きい声出さないで・・・頭痛くなる・・・」
「うおおぉ?もしかして吉田と中村もいるの?俺だけハブ?やだ寂しい!」
「うるせぇー・・・誰のせいでこうなったと・・・」

でろでろの鈴木はそれだけ言って机に突っ伏した。
明日はカラオケだーとか昨日はしゃいでたくせに畜生!
っていうかこの天パ鞄も山下のじゃねぇかああぁぁぁ!



放課後いくらか復活した鈴木に連れられて山下の家に。
山下の部屋に行くと床で吉田と全裸の中村が寝ていた。
ベッドには節操なしの腕枕で俺の綾平が寝ている。
っていうか節操なしの着てる服俺のジャージだよね?!
吉田の着てる服は俺のスウェットだよね?!
なんで俺の服着てんの?!

「言いたいことは山のようにあるのわかるけどとりあえず落ち着け」
「じゃあ落ち着いた結果からのツッコミなんだけどなんで中村だけ全裸?」
「山下のシャツ借りたら袖が長くてさ、みんな笑うから全裸になった」

そこで笑われることより全裸を選ぶあたりが中村だと思うんだ。
全裸で寝ることを恥ずかしいと思わないのか。
大切な部分が丸見え過ぎて嫌なんだけど。
ちんこ勃ってるぞ。

「っていうかお前もなんで脱いでんの?!」
「制服皺になると山下怒るから。山下起きろ、原田来たぞ」
「嫌・・・まだ寝たい・・・」
「十分寝ただろ!今度は俺が寝るンだよ!」
「あ゛ー・・・ケチー・・・いいじゃん、少しぐらい佐藤貸せよ」

鈴木が佐藤に貼り付いてる山下を引き剥がそうと頑張っている。
あ、あんまり騒がないほうが・・・寝起き最悪な人が起きちゃうよ・・・。

「あ゛あ゛あ゛うるせぇ!静かにしろ!ケツに腕突っ込むぞ!!!」
「「す、すみません・・・」」

ほらね。

「あ゛・・・サンドバッグ来てたのか・・・」
「すごい不吉な単語が聞こえた!俺何もしてないのに!」
「山下、早く行け。後少し寝たら俺等も行くから」
「まだ眠いんだけど」
「早くしろ。ケツに両腕ぶっ込むぞ」
「はい」

綾平は大人しく起き上がって鈴木とチェンジ。
鈴木は眠くてたまらない佐藤に抱き付いて満足そうだ。

「ケーキ作ってやった。俺頑張った」
「ホントに?!」
「うるせぇぞ!早く出て行け!!!」

相当お怒りの佐藤に言われた通りに部屋を出る。
これ以上怒らせたらいけない。
俺の命が危ない。
寝ぐせだらけの綾平に手を引かれてリビングへ。

「待ってろ」
「うん」

綾平は俺を残してキッチンへ。
わくわくしながら待ってたら目の前に白いケーキが出された。
赤いソースで『HappyBirthday!!!YUKIYA』と書いてあった。
周りにはハートがいっぱい。

「すげぇ!!!」
「レアチーズケーキ。うまくできてるだろ?」「写メしていい?」
「いいぞ」
「待ち受けにしよ!うわー!ありがと!」

学校休んで何してんのかと思えばこんなの作ってたなんて。
なんて可愛いんだろう。
俺感動して泣いちゃいそう。
まさかマジで作ってくれるとは思わなかった。

「誕生日おめでとう」
「ありがと」
「ほら、早く食え」

照れてる綾平を写メしてからケーキを食べる。
うん、ちょーうまい。



「毎回毎回思うんだけど」
「うん?」
「頑張ったの俺だから」
「「「ホントお疲れ様」」」




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