Mr.A

トイレに駆け込んでケータイを開く。
震える指でカチカチとメールを打つ。

「も、漏れちゃ、もれちゃう」

ぎゅっと股間を押さえてようやくメールが完成。

『おしっこ出したいです』

送信。
便座に座って足を組んで前かがみ。
データ処理がここまで終わったらトイレに行こうと考えてやっていたら限界まできてしまった。
すぐに返事が来るかわからないからいつも早めに行くようにしてたのに。
失敗してしまった。
携帯のメールに新着はなくて、ただただ時間が過ぎる。

「むり、でちゃうよぉ・・・」

また携帯でメールを作る。
カチカチと震てるのはもう指先だけじゃない。

『もう漏れちゃいます。おしっこ出ちゃいます』

ようやく出来たメールを送信。
足先を丸めて返事を待つ。
一向に返事は来なくて、1分1秒がやたらに長く感じる。
もう我慢できなくて今度は電話。

「朝野さんっ、出て、おねがっ」

繋がるのは留守番電話サービスばっかり。
何度も何度もかけて、ようやく繋がる。

「朝野さんっ、朝野さんっ」
『はい』
「あっ朝野さ、あっおしっこ、あっまっだめだめ」

ホッとした瞬間に気が抜けて、俺は小便を漏らした。
ようやく繋がったのに。
ようやく繋がったのに俺は我慢できなかった。
じわじわと股間部分からスーツの色が変わって、生温かい液体が前も後ろも濡らしていく。

「いや、だめだめ、止まっあっやぁぁ・・・」

スーツはぐしょぐしょ、便器には俺の小便が滴り落ちる。
限界まで我慢したのに、あと少しだったのに。
携帯の通話はいつの間にか切れていて何の反応もない。
俺は携帯を閉じて溜息をつく。

「朝野さん・・・怒っちゃった・・・」

いつも失敗ばっかりする俺を気に入ってくれる人を見つけたのに。
何でも言うこと聞くって約束したのに。
俺はいつも失敗ばっかりだ。
ただ朝野さんに許可をもらうだけなのに。

「千明?」
「あ、朝野さん?」
「開けて」

個室の扉を開けば朝野さんが中に入ってくる。
朝野さんは俺の股間部分から膝まで色が変わっているスーツを見た。

「また我慢できなかったの?」
「ごめんなさい、ごめんなさい。次はちゃんと、ちゃんと漏らさないようにするからっ」
「そう言って失敗してるじゃない、また」
「ご、ごめんなさい。もうお漏らししないから、だから捨てないで?朝野さん捨てないで、ちゃんと言うこと聞くから」
「本当にできるの?いつも千明は失敗するじゃない」

捨てられる捨てられる。
じわじわ溢れる涙をこらえながら朝野さんに縋りつく。

「ごめんなさい、ちゃんと、ちゃんと言うこと聞くから、おしっこちゃんと我慢できるようになるから」
「泣かないで、嘘だから。捨てないよ、千明」
「本当に?本当?まだ俺飼ってくれる?」
「うん。飼ってあげる。しつけが悪いのは飼い主の責任だしね」
「朝野さんは悪くないよ!俺が、俺が何もできないから。だから朝野さんは悪くないよ」

よしよしと言いながら朝野さんは俺の頭を撫でてくれる。
大きな手、優しい優しい朝野さん。

「じゃぁお仕置きしないとね。ちゃんとしつけなきゃ」
「うん。なんでもするよ、朝野さん」
「偉いね、千明」

朝野さんはリップ音を立てて俺の額にキスをしてくれる。
俺のペニスはお仕置きという言葉に上を向いていた。
あぁ、また朝野さんに怒られちゃう。




※無断転載、二次配布厳禁
この小説の著作権は高橋にあり、著作権放棄をしておりません。
キリリク作品のみ、キリリク獲得者様の持ち帰りを許可しております。
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -