ComingOut:47

自宅に帰ってとりあえず玄関の靴をチェック。
よし、ジジィはまだ帰ってねぇ。
実は中学の時に喧嘩して以来、未だに口も利いてないのだ。
同じ家にはいるがジジィも俺もあまり自分の部屋からでないので会うことも余りない。
部屋に鞄を置いて部屋着に着替えるとソッコーでリビングへ。

「さくらっ!ももっ!」
「「あ、兄ちゃん」」
「清春!ただいまは?!」
「うるせぇババァ!ただいま!!!」
「おかえり!」

2人仲良くテレビを見てる俺の可愛い可愛い妹達、桜と桃。
お揃いのスウェットが可愛い。
わしわしと頭を撫でると俺の頭もわしわしと2人がかりで撫でられる。
うわぁもさもさだな、俺の髪。

「兄ちゃんおかえりー」
「今日は寄り道しなかったんだねー」
「久しぶりにさくらとももとご飯が食べたくてー」
「偉いわね、不良息子」
「くっつくな!気持ち悪いンだよババアアァ!!!」

ババァの猫撫で声に鳥肌。
俺の可愛い妹との触れ合いタイムを邪魔しやがって・・・!
妹達の興味が俺から携帯に移っただろうが!

「さくら、もも。お兄ちゃんほったらかしで誰とメール?」
「「友達、女の子」」
「お兄ちゃんに紹介して。俺楓ちゃんと玲奈ちゃんと遊びたいな」
「駄目。兄ちゃんの話したらみんなビビるし」
「そーそー。兄ちゃん見た人みんな怖い言うし」
「お兄ちゃんの何が駄目?!何が怖い?!直すよ!」
「無理無理」
「整形はできても性格はどうにもならないし」

まさかの全否定・・・!

***

リビングに行けば珍しい顔があった。

「げ・・・」
「久々に兄を見てげってなんだ、げって」
「何帰ってきてんの?」
「ここは俺の家だ」

大学生活を期に1人暮らしをすると家を出た兄が帰って来てた。
俺はこの傲慢な兄が嫌いだ。
傲慢な弟も嫌いだ。
昔からいじめられた記憶しかない。

「母さん、あの人いつ帰るの?」
「さぁ?恭一に聞いたら?」
「恭一いつ帰るの?」
「呼び捨てにすんな。改めろ」

うわぁ何あの顔。

「きょーいちさんはいつ帰ってくれるんですかー」
「週末」
「・・・さっさと帰れよ」
「待てテメェ。オイ、夏彦!」

総シカトで部屋に戻る。
ウチは兄弟仲は最悪なのだ。
啓介も部屋にこもってるし俺も部屋にこもる。
兄が帰宅するとこんな感じだ。
家に居着かないくせにふらりと帰ってきては俺等に迷惑をかけて出て行くのだ。
この前はゲーム取られたし漫画も取られた。

「オイ、夏彦。お前な」
「テメェ、マジ部屋に入って来んな」
「お前兄に対してなんつー口の効き方をするんだ」
「知らねーよ。啓介と遊んでろよ」
「お前さぁ首」
「ハァ?」
「キスマーク見えてる。見えないところにつけろよ。馬鹿じゃねぇの?」

あ、見えてたのか。
ボタン開けてたしな。

「夏彦なんかと付き合って何が楽しいんだか」
「うるせぇな。お前に関係ないだろ」
「啓介もキスマーク付けてるし。最近の子は進んでんのね」
「悔しかったらお前も早く相手見つけて家から出ていけ」
「・・・俺に勝てると思うなよ」
「身長は俺のがでけぇぞ、デブ」

そこから殴り合い。
父さんと啓介に止められるまで恭一と喧嘩。
その後啓介のキスマークは佐藤が付けたと知って啓介と喧嘩した。
明日は佐藤と喧嘩する予定。

***

短時間のバイトを終わらせておばさんにもらったお惣菜を手に帰宅。
菜々子が好きな照り焼きをもらった。

「ただいまー」
「あっ昌秋、先に着替えて。洗濯機回すから」
「はいはい。これ照り焼きね。おばさんがくれたよ」
「お礼は言った?」
「うん。菜々子は?」
「部屋にいると思うわよ」

その場でシャツとTシャツと靴下を脱いでお母さんに渡す。
半裸で部屋に戻って着替えると妹の部屋へ。

「菜々子、ただいま」
「お兄ちゃん!あのね、聞いて聞いて」
「うん、何?」
「今日ね、悠馬とデートしたのね」
「あ゛あ゛っ?!」

あのちんこしょぼ狸何さらしてんだ!
舌引き抜くぞ!

「それでね、お金無かったからマックに行ったんだけど」
「お兄ちゃんバイト先にいたからお金もらいにくればよかったのに」
「ううん。悠馬もお金無かったしいいの」

デートにマックだなんて俺はそんなことしない!
中村くん相手でもちゃんとファミレスぐらいは行く!
妹とならオムライス専門店を予約する!
菜々子はアボガドソース好きだから!

「それで?何かされたの?」
「ううん。マックで私の頼んだのと違うのが来たの。だから取り替えてもらったわけ」
「それで?」
「そしたらっそしたらっそーゆーの引くっていわれちゃったよおぉ!!!お兄ちゃんどうしよおぉ!」
「うわわっ、なっ菜々子泣いたら可愛い顔が腫れちゃうよ!」

あのちんこしょぼ狸!
ちんこも小さければ懐も小さい奴だな!
懐の大きさとちんこの大きさは比例するんだぞ!

「だからあんなの止めなってお兄ちゃん言ったでしょ?」
「でも好きだもん」
「お兄ちゃんとどっちが好き?」
「悠馬のが好き!!!」
「エエエェェェェェ!!!」

ち、畜生オオオォォォ!!!
去勢してやらああぁ!!!

***

家に帰ると才蔵が迎えてくれた。

「才蔵ーただいま」
「おかえり、冬真」
「あ、相真くん帰って来てたの?」
「連休もらったんだ」

相真は兄だ。
歳が離れているのもあって兄の友人の真似をして名前で呼んでいたらソレが定着してしまった。
たまに気分で兄ちゃんとか兄さんとか呼ぶ。

「母さんは?」
「友達と食事。父さんは遅くなるって。夕飯はカレーあるから温めるよ」
「ありがとう。才蔵、今飯あげるからなー」

にゃあにゃあ鳴く才蔵を抱えたまま才蔵の夕飯を準備する。
キャットフードを皿に出して才蔵の前に。

「才蔵、ご飯でちゅよー」
「冬真、キャラが崩壊してるぞ」
「才蔵可愛いんだもん」
「才蔵は見とくから早く着替えてこい。飯温まったぞ」
「はーい」

鞄を持って部屋に引き上げる。
げ、制服才蔵の毛だらけだ。

「相真くーん。制服ってどう洗うのー?」
「俺が洗ってやるから置いとけ」
「お願いしまーす」
「才蔵、ミルクでちゅよー」
「相真くーん、キャラ崩壊してるよー」

相真くんも才蔵には甘いのだ。
連休で帰ってくるといつも才蔵を弄り倒している。
リビングに戻れば2人分の食事。
席についていただきます。

「学校楽しい?」
「そこそこ」
「ふーん」
「仕事大変?」
「そこそこ」
「ふーん」

よく両親に意志疎通ができているのかと言われる会話を繰り広げながらカレーを食べた。
後で買っておいたプリンを食べよう。

***

家に帰ればお手伝いさんの杉田さんが作ってくれた食事があった。
電話機がピカピカ光っていて留守電があることを知らせてくれる。
冷蔵庫から牛乳取り出して留守電を聞く。

『綾平!パパだよ!今日は夜帰れそうだから待っててね!!!一緒に寝ようね!あっ秘書の子が美味しいシュークリームくれたから一緒に食べようね!それからそれからあっヤベっコーヒー零した!真壁くーん!コーヒー零した!どうしよう!これ土地開発書類なんだけど!あっ留守電がっあっりょ』

留守電再生終了、どうやら父親は大切な書類にコーヒーを零したらしい。
なんかの議員しているんだが仕事のことは詳しく知らない。

「・・・今日は帰ってくるのか」

とはいえ何時になるかわからないので先に飯は食べる。
この半1人暮らし生活は中学からだし母親には会ったことがないから別に寂しいと思ったことはない。
母親は俺を産んですぐ死んだらしい。
父親曰わく俺そっくりなんだそうだ。
写真でしか見たこと無い。
黙々と飯を食っていたら玄関で物音。

「綾平!!!ただいま!パパだよ!」
「おかえりなさい、パパ」
「ほらシュークリームだぞ。好きだろ?」
「いや、今シチュー食べてるから後で食べるよ」
「じゃあパパも杉田さんのビーフシチュー食べようかなっ」

父親はキッチンに移動して温めたシチューとパン、マッシュポテトを持ってくる。
俺の目の前に座って食事。
スーツぐらい着替えてから飯食えばいいのに。

「原田くん生きてるの?」
「しぶとく生きてるな」

原田との仲も公認。
父親隠し事をしないのがウチの決まり。

「原田くんと別れた?」
「いや、別れてないけど」
「いつ別れるの?」
「いや、別れる予定もないけど」
「パパ原田くん嫌いだな」
「まぁ甲斐性なしだし浮気するし反省しないし馬鹿だし浮気するしな」
「また浮気されたの?」
「うん」
「あのクソ野郎!!!駄目だって、綾平考え直しなさい!パパ吉田くんの方が好きだよ、彼好感が持てる!」
「いや、吉田は中村とデキてるし」
「じゃあ佐藤君!髪の色は気に入らないが彼は頭がいい!あーゆー子にしなさい、せめて馬鹿はやめなさい!!!パパあんな息子いらないっ」
「じゃあ俺が嫁に行くわ」
「嫌だー!!!!!パパは綾平いないの嫌だー!!!認めないっ認めない!嫁になんか行かせないからね!キイイィィィ!!!」

理解のある父親です。

***

玄関にあるシャネルのパンプス。
反射的に身を翻す。

「由希也アアアァァ!!!」
「ぎゃあああぁぁ!!!!!」

行動が一瞬遅く、鬼に見つかった。
俺の髪を鷲掴んでリビングに引きずられる。

「姉ちゃん痛いっ!姉ちゃん!」
「おかえり、由希也くん」
「義兄ちゃん!助けて!この人どうにかして!」
「亜里沙さん、由希也くんに会えて嬉しいんだよ」
「亮さあああん!俺嬉しくな」
「あ゛あ゛ん?」
「超嬉しい!超嬉しいから姉ちゃん離して!俺ハゲるよ!」

この暴力的な姉は俺の実姉、亜里沙だ。
大人しいのは義理の兄の亮さんだ。
マジこんな暴力的な姉の良さが一切わからない、どこにもない。

「お母様!息子がハゲるよ!せっかくイケメンに産んだ息子が」
「将来ハゲるんだから今ハゲてもいいんじゃない?お父さんも危ないじゃない」
「そうだな・・・。由希也、我慢しなさい」
「うおおい!諦めるな親父イイィ!!!」

原田家は男に一切の権限がない。
そんな原田家に義兄はすばらしく馴染んでいる。

「つか姉ちゃんなんで帰ってきてんの?!どうしたの?」
「んふふー、聞いて。由希也叔父さんになるのよ」
「え、嫌だよ。そらヒゲとか毎日剃るけどまだ青くないからおじさんには早いよ」
「お母さん、由希也の脳みそ子宮に落ちてない?」
「もう血と一緒にナプキンに吸い込まれたわよ」

なんて下品な会話なんだろう。
女と認めない。

「お姉ちゃん妊娠したのよー。まだ6週目なんだけどね、」
「義兄ちゃん、姉ちゃん相手に勃起しぶふぅ!」
「ちょっと、下品なこと言うんじゃないわよ」
「ずびばぜん・・・」

子宮とか言う女に言われたくない。
ミニスカートでパンチラさせながら人を蹴る女に言われたくない。
姉のパンチラなんか見たくもない。
吐きそう。

「お祝いに牛角行くわよ!」
「えっ叙々苑行きたい!お祝いっしょ?!叙々苑!肉!」
「別にいいわよ」
「やったー!姉ちゃんおめでとー!」
「由希也の奢りね!」
「何でだよ!姉ちゃんが払えよ!」
「ハァ?私のお祝いなのに何で私が払うわけ?由希也バイト代出たんでしょ?払えよ」

う、うわあ・・・ウチの姉ちゃんうわあぁぁ・・・。
孫ができることに感動している親父と子供ができてほくほく顔の義兄の肩を叩く。

「俺自分の分は払うから後お願いします」
「・・・お父さんお小遣いお前と同じなんだ」
「・・・僕由希也くんよりお小遣い少ないんだ」
「ねっ姉ちゃん!牛角にしよう!牛角で我慢して!!!お願いします!」

原田家の男たちの現状は甘くない。




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