ComingOut:46

俺の朝は早い。
目が覚めたらまずテレビをつける。
そして水で顔を洗い眠気を覚ましたら歯磨きをしながらお天気お姉さ・・・天気予報を確認する。
そう、天気予報をだ。

「今日は晴れ・・・」
『今日は蒸し暑くなりますので涼しい格好をしてお出掛け下さいね!』
「はい!」

別に堅苦しくスーツで行かなきゃいけないなんてことはない。
7分丈のシャツに綿パンを履いて朝飯の準備。
料理は割と得意だ、苦にはならない。
1人暮らしが長い独身男の性だ。
今日の朝食は昨晩の残りと目玉焼き、それにほうれん草を茹でた。
味噌汁も出来たし昨晩セットした白米はふっくらとうまそうに炊きあがっている。

「いただきます」

飯を食べながら今日のニュースをチェック。
職員会議で議題に出されるかもしれないし生徒に質問されるかもしれない。
白米は朝から茶碗で2杯しっかり食べる。
社会科で弁当を注文してるから昼飯は用意しない。
残った飯にラップをして冷ましている間にまた歯磨き。
ソレが終わると洗顔にシェービング。

「よし、今日もいい男だ」

気合いを入れた所で鞄を抱えてソファーに座る。
俺は朝、占いをチェックしてから家を出る派だ。

「さそり座は11位か・・・。テンション上がらないな」

これから戦争なのに・・・ツイてない。
占いが終わり、ソレと同時に腰を浮かす。
もうすぐ、もうすぐだ。

『今日も元気に行ってらっしゃーい!』
「生野さんっいってきます!」

テレビを消していざ学校へ!

***

職員会議が終わると校門へ立つ。
倫理と世界史教員、それに生徒指導も兼ねる俺は毎朝校門にいる。

「あ、中兄おはよ」
「中兄おはよー。今日元気なくない?」

俺が顧問を務めるイベントプロデュース同好会の割と問題が少ない2人、吉田と中村が登校してきた。
ドンっと背中にぶつかってきたのは問題が最も多い佐藤。

「中兄ってば元気ないじゃなぁい?」
「占いが11位だったからな・・・」
「俺なんて12位だったからラッキーカラーの緑の靴下!ほら!」
「吉田、指定外ソックスは没収だ。脱げ」
「しまった・・・!」
「「馬鹿だろ」」

わざわざ服装違反報告なんてホントなんて間抜けな奴なんだろう。
しかし真緑の靴下なんてよくあったな・・・。

「佐藤、離れろ。気持ち悪いし暑苦しいし重いし気持ち悪い」
「やだぁ、冷たいのね」
「気持ち悪っ。ほら見てみろ、先生鳥肌立った」
「中兄の乳首も立っちゃった」
「中西先生朝からセクハラですか?教育委員会訴えますよ」
「よく見ろ、中村。セクハラされてるのは俺だ」

なんて不愉快な朝!
流石さそり座11位・・・!
吉田の脱ぎたて靴下(なんか生暖かい、嫌)を尻ポケットに突っ込む。
後から佐藤は吉田と中村に引っ張られて教室へ向かった。
ソレと同時に予鈴が鳴る。
イベプロで絶対遅刻しないのは佐藤に強姦されたのに付き合い始めたらしい鈴木とうちのクラス1番のモテ男(羨ましい)の山下だけだ。
校門を閉めて、それから残りの問題児を待つ。
今日はパンを食いながら眠そうな顔で登校してきた問題児。

「原田アアアァァ!!!」
「うおぉぉい!おはよ中兄!」
「おはよじゃない!予鈴までに来いと毎回言ってるだろうが!」
「あっ明日からっ明日!今日は家の前にいきなりターミネーター襲来みたいな」
「ターミネーター現れてパン食う余裕があるのかお前!すげぇよ!先生お前尊敬するわ!」
「サインいる?シャツに書いてあげる」
「いや、紙に書け。ほら作文用紙、5枚あるから遅刻した理由を明確にした上で今後行う対策を書け。あぁ、サインは裏に書いてくれよ」
「ターミネーター襲来のくだりからでいい?」
「いや、深夜まで遊んで寝坊したくだりからだ。昼休み提出だぞ」

原田に作文用紙を押し付けて原田の首を引っ張りながら教室へ。
毎回毎回本鈴ギリギリだから出席簿は持っている。
新しいパンを開けた原田を殴って教室に押し込む所までが俺の朝の戦争だ。

***

昼休み、ここはのんびり昼飯と行きたいがそうも行かない。
今日の日替わり弁当(生姜焼き!)を食べかけのまま放置して目の前の問題児に向き合う。

「・・・何で呼ばれたかわかるな?」
「「「「皆目見当がつきません」」」」
「模試の成績だアホ!そろいもそろってイベプロでワースト4シメやがって!」

目の前で素知らぬ顔をして立つ佐藤、鈴木、吉田、原田。
この野郎・・・!
唯一の救いは英語だけがワーストだったことだ。

「お前等な、英語嫌いも大概にしろ。堀切先生困ってたぞ」
「俺頑張ったって。12点とかすごくね?」
「えっ佐藤12点?!俺4点だったのに!負けたんだけど!」
「はっ!吉田4点?!馬鹿だな!俺6点ー!勝ったアァ!!!」
「鈴木にも負けただと・・・?!」
「大丈夫、吉田!俺2点!」
「原田頑張ったな!!!お前点数あったのか!」
「すごいじゃん!」
「選択問題1つあってたのよ」
「すげぇよ!お前少し賢くなったな!」
「何もすごくないだろうが!ワースト共がアアァ!」

そろいもそろってなんてレベルが低い!
そら堀切先生も困るに違いない。
コイツ等英語の課題も毎回してこないしな・・・。
俺どうしたらいいのかもうわからない。

「だいたい鈴木はいつもはもっと英語できるだろ?」
「いや、なんか博士が現れてバック・トゥ・ザ・フューチャーみたいな」
「あ、スィマ博士だろ?俺も化学の模試中に会ったわ」
「佐藤も会ったのか!いやー、実に楽しい旅だったよな!」
「ただの睡魔だろうが!眠気に勝てよ!」
「いや、もうこれはヤバい寝るしかないみたいな。あ、間違った。これはもうバック・トゥ・ザ・フューチャーするしかないみたいな」
「わざわざ言い直さなくていいわ!」

頭が痛くなってきた・・・。
何なんだコイツ等・・・全然反省していない・・・!

「中兄怒るだけ無駄だって」
「ほーほー、バカだからわかんねーんだよ。中村、この肉うめぇ」
「あっ俺にも残せよ!まだ俺漬け物しか食ってねぇんだぞ!」
「お前等が待てエエェ!ソレは俺の生姜焼きと柴漬けだ!」
「「ゴチ!」」

呼び出しに(暇だから)ついてきた中村と山下が俺の弁当を黙々と食っている。
なんてことだ!
お前等飯食ってきたくせに!
あっという間に俺の昼飯は中村と山下の胃袋に消えた。
恐るべし、高校生の食欲。

「はぁ・・・お前等で英語教えてやってくれよ。中村英語得意だし山下英語喋れるだろ」
「無理無理、アイツ等学ぶ意欲無いから」
「俺喋れるだけ、スペルあやふや」
「お前等で駄目なことが俺にできる気がしない・・・!」

溜め息をついてソファーへ移動。
佐藤を鈴木から引き剥がす。

「ココは神聖な社会科準備室だ。不純同性交遊は家でしなさい」
「鈴木くんのちんこが誘うから。ほら、半勃ち」
「ぎゃあああ!!!ちょっおまっズボンとパンツから手を離せ!」
「佐藤、離しなさい。先生鈴木のちんこなんか見たくない」

教え子の半勃ちに気分を悪くする。
反省文が書けたらしい原田から反省文を受け取り読む。

『昨晩は可愛い可愛い俺の山下綾平くんが珍しくヤりたいと甘え』

そこまで読んで俺の机を(とりあげたエロ本を探すために)漁る山下に渡してやる。

「原田アアァ!!!誰が甘えただとゴルアアァ!!!」
「中兄この野郎オオォ!」
「はいはい、もうお前等うるさいから出て行け」

準備室からまとめて6人放り出して扉を閉める。
ようやく昼の戦争が終わった。

***

放課後は部活動に顔を出す。
俺は嫌なことは先にすませるタイプの人間だ。

「次のクラスマッチの手伝いなんだが種目が」
「俺等選手だから」
「みんな選手だ」
「俺低血圧だから」
「頑張れ、なんとかなる」
「俺イケメンだから」
「理由になってないだろうが!なんだお前等!真面目に部活動しろよ!!!」
「「「「「「えー・・・」」」」」」
「誰だコイツ等に部活動始めさせたのは!」
「校長」
「はい、じゃあとりあえずテント設営と審判だが」
「中兄弱っ!」
「権力に屈してる!」
「黙れ!!!教師は出世とか昇給厳しいんだ!!!」

公務員と年功序列ナメるなよ!
やる気がない6人の名前を適当に書いていく。
テント設営は佐藤と吉田と原田にしよう。
ガタいがいい、育ち過ぎだ。
鈴木と中村を審判にして、生徒会補助は山下でいいか。
生徒会は山下に甘いからな、モテ男め。
笑顔が素敵とか硬派とか王子様とか言われてるらしいがそんな女子生徒に目を覚ませと言ってやりたい。
だって目の前で隠しもせずにホモ雑誌を読んでいる。

「没収!!!」
「あっ!俺のマサトが!」
「中村のも吉田のも没収!!!」
「あっヒカルとエイジ特集なのに!」
「ゆかちゃんの微乳が!」

人の話を聞かずにエロ本読むとかふざけるなよ!!!
真面目にやれ!

「ふっお前等馬鹿だな」
「原田、表紙が逆さまだぞ。没収!!!」
「あ゛あ゛あ゛っ!!!やめて!買ったばっかなのに!痴漢特集なんだよ!価値がわからないの?!」
「あぁ、全くわからないな」

4冊のエロ本をまとめて角を佐藤と鈴木の頭に落とす。

「「い゛っでえ゛え゛ぇ!!!」」
「お前等は離れろ!家でしろと言っただろ!佐藤はコンドームをしまえ!」
「だってー鈴木くんフル勃起だしー」
「ぎゃあああ!!!」

目の前でフルチン姿の教え子のV字開脚。

「オ゛エ゛エ゛ェェェ・・・」
「中西この野郎!!!人のちんこ見て吐き気とか失礼だな!」
「いや、お前等の行為が生々しくて・・・オ゛エ゛エ゛ェェェ・・・」
「「「「オ゛エ゛エ゛ェェェ」」」」
「お前等もかよ!つか佐藤離せ!痛い!」
「っう゛、ふぶっ」
「笑ってんじゃねええぇ!!!!!」

とりあえずで決めた役割を一応部長と副部長の山下と中村に報告。
それから当日にしなければならないことを確認する。
没収したエロ本も忘れずに手に取り視聴覚室を後にする。
これで夕方の戦争も終わった!
後はもう1つの顧問している部活、女テニに顔出してテニスを楽しむだけだ!
新しく買ったラケットを試したい!

「先生さようならー」
「さようならー!」
「気をつけて帰れよ!」
「はーい!」

いやぁ・・・ゴツくてムサくて変態な男子生徒よりはやっぱりおしとやかで可愛いいい匂いがする女子生徒だよな!
もうお前等かわい

「え・・・先生こんな趣味なの?」
「これ男同士じゃない?」
「なにこの世界の自動車って・・・薄いカムフラし過ぎでしょ、先生」
「ちがっこれはイベプロから没収したやつで」
「えー?山下くんはそんなの読まないし」
「そうだよ、佐藤くんも読まなそうだし吉田くんも読まなそうだよねー」
「中村くんとかそーゆーの興味なさそうだもん!ありえるとしたら鈴木くんでしょ」
「わかるわかる!」
「後は百歩譲って原田くんとか!ナチュラルにエロいよねー!そこがいい感じだよね!」
「いや、騙されてる。先生嘘つかないぞ」
「大丈夫だって!バラさないから!」
「そーそー。中西センセーホモっぽいって思ってたし!」
「じゃあねー!今度はもっとマシなカムフラしなよ!」

こ、この野郎オオォォォ!!!




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