渋谷のシンデレラマン

ねぇ、あなたは運命って信じてる?
いつか小指と小指が赤い糸で繋がれた自分だけの王子様が迎えにくるの。
なんて素敵なシンデレラストーリー。
甘い甘い、チョコレートバーのような出会いと人生。
あなたには王子様はいる?

僕は今日も王子様に巡り会えなくて手酷く打たれた頬が痛む。
街中、一番有名なオブジェ『ハチ公』の前に僕はへたり込む。

「あの野郎・・・思いっきり殴りやがって」

ナンパしてきた王子様候補についていったらこの様。
大抵一晩の関係を望む男は隠しもせずに自身の性癖をさらけ出す。
服も脱がせてはくれず、ただ欲に忠実。
今日はドS野郎でボコボコにされた。
ついこの前はペニス狂いで気持ち悪いほどしゃぶられた。

「大丈夫?」

白み始めた空を見上げるとお人好しそうな顔。
心配そうに俺を覗く瞳が綺麗だ。

「・・・平気」

でもコイツはたぶんノンケ、王子様候補でもない通りすがりのお人好し。
僕は軋む身体を動かしてその場を去ろうとしたが殴られた足がいうこときかなくてその場にへたり込んだ。

お人好しは僕を背負って歩いてる。
危ないからって軽々背負われては男としてちょっと複雑。

「僕の家近いんだ。ゆっくり休めばいいよ」
「・・・どうも」

ハチ公前から暫く歩いてちょっとした住宅街にでる。
そこはお洒落なデザイナーズマンション。
着ていたジャケットがブランドだからもしかしてお金持ちなのかも?と思っていたがまさにそうらしい。
エレベーターで七階まで行き、一番端にあるお人好しの部屋へ。
中はグレーとアイボリーを基調とした綺麗な部屋で、そこにあるソファにまるで割れ物を扱うようにゆっくりと僕を下ろす。
救急箱をもってきて僕の腹にできた真っ赤な痣に湿布を貼る。

「喧嘩でもしたの?駄目だよ、身体は大切にしなきゃ」
「いいじゃん、僕の勝手だよ」

喧嘩でできた痣ではないその赤を睨む。
すごい痣になってるし・・・最悪。
頭をよしよしといいながら撫でる手が異様に身にしみた。

「何か飲む?」
「え、悪いから帰るよ」
「気にしないでいいよ。僕は自由業だから暇なんだ」

そう言って僕に見せたのはカメラ。
お人好しはココアをいれてくれて、僕の横に座った。

「甘いもの平気?僕ココア好きですぐできるのコレしかなくて」
「平気。ココアとか久しぶり」
「ふふ、気分が落ち着くよ」

カップに口を付け、ふーふーと冷ましているとカシャッて音がした。
びっくりして横を見たらその顔も撮られた。
満面の笑みを浮かべるお人好し。

「ごめん、つい」
「・・・別に写真ぐらいいいけど・・絶対間抜け面してた」
「そんなことないよ、子供みたいだ」
「・・・」

成人式を終えて数年立ってるのに・・・。
お人好しはまた写真を撮る。
僕はため息をついてココアに口を付けた。

「君が初めて」
「え?」
「人を撮ったのは君が初めて」

お人好しは撮った写真を見ながら喋った。

「人混みとか、後は仕事で人を撮ったことはあるけどね。僕が撮りたくて撮ったのは初めて」
「いつもは何撮るの?」
「街中とか動物。動物相手だとね、ずっと動物に張り付いて一瞬を狙うんだ」

楽しそうに話すお人好しに僕も微笑みかける。
いろんな写真を見せてもらったけど同じようなのがたくさんあって、その膨大な数からたった数枚しか使えないんだと聞いたときには唖然とした。
外は完全に明るくなり、太陽がまぶしい。
たくさんの写真を見ていたら眠くなってきて頭がぐらぐら揺れた。

「眠いの?」
「うん。昨日オールだったから」
「僕も夜更かしが過ぎたなあ」
「夜更かしってレベルじゃないでしょ。さすがに眠いや」
「ベッドかしてあげるから、そこで寝たらいいよ」
「ありがとう」

お人好しは僕を抱えてベッドルームへ向かう。
セミダブルのベッドはふかふかで清潔で。

「おやすみ」
「えっ・・・どこ行くの?」
「え、リビングに。僕はソファーに寝るよ」
「それなら僕がリビングでいい!」

そう言うのにきかないお人好し。
僕は最終手段、泣き落としに入る。
腰を捕まえて涙目で上目遣い、そしてお人好しを見つめる。

「ひ、一人じゃ寂しいのっ!だからっだからっ」
「・も・・の?」
「え?」

何かをつぶやいて、目が冷たくなったお人好しが恐ろしくて腰から手を離した。
お人好しはすぐに笑顔になったけど・・・しまった。
ノンケ相手にやりすぎた。
お人好しは僕に手を伸ばす。

「はいはい。意外に弱虫なんだね」

ぎゅっと抱き締められてお人好しの匂いが鼻をくすぐる。
ああ、この匂いBVLGARIだ。
甘い香りがする首筋に顔を埋めて、息を吸う。

「この匂い好き」

意外に厚い胸板とかカッチリした背中を堪能する。
筋肉質の身体がたまんない。

「ねぇ、誘ってる?」

お人好しの顔は見えない。

「お腹に君のが当たってるんだけど・・・」

僕は無意識に腰を揺らしていたらしく、下半身はテントを張っていた。
そう言えば今日殴られただけでシてないもんな。

「誘ってたらどうする?」
「僕男の子とシたことないよ」
「女の子とは?」
「ソレはあるけど・・・」
「なら平気、男の子とスル時はお尻の穴を使うだけ。・・・シよ?」

お人好しにキスをしようとしたら阻まれた。
やっぱ無理か。

「せめて、名前を教えてくれない?」
「・・・僕なんかシンデレラに憧れるただの通行人Aだよ」
「それなら僕は王子様に憧れるただの通行人Bだね」

そしてキスをして通行人Aと通行人Bはベッドに沈んだ。
僕は服を脱ぎ、全裸になる。
Bの前で足を広げるとBが寄ってきて僕のペニスを恐る恐る触り、扱く。

「んっ・・。ねぇ、ローションとかない?はあっハンドクリームでもいい」
「ハンドクリームならそこに」

ベッドサイドにあったハンドクリームを手に取りアナルに塗り込む。
自分で慣らすのはなかなか大変で時間がかかるのだ。

「っふ、はあんっ」
「ホントにお尻にはいるの?」
「平気、ちゃんとっはいるよぉ」

中指だけ埋めて出し入れする。
ペニスは扱かれて、すでに涎を垂らしていた。
Bは僕のペニスから手を離すと僕の指が出入りするアナルを見つめていた。

「僕にもやらせて」
「へっ?あっんああ!」

遠慮なしに入り込んだ指に身体が反る。
指が出し入れされたり、中を探り回るように動くので腰をくねらせて耐える。

「はあっあんっ!」
「ホントに入るんだね」
ハンドクリームじゃ滑りは悪いがソレがまた快感で。
アナルはぬちゃぬちゃとひっきりなしに音を立てている。

「はあん!あっ待ってえ!」
「なあに?どしたの?」
「体勢変えよ?Bのペニス、しゃぶらせて?」
「うん」

Bが寝そべり、僕はアナルをBの顔に向けてBに跨る。
所謂69。
僕はBのペニスをゆっくりと丁寧に舐めあげていく。
Bはハンドクリームを少し足して僕のアナルをひろげている。

「はあっ、あっんぶンンン!」
「・・・っ!」
「Bは、かりがふきらんらね。ヂュルル、ひっぱい汁れたよ」
「は、喋らないでっ」

唇でカリを締め上げたり、スライドさせるとたくさんの先走り。
裏筋は指の腹で丁寧に刺激する。
後少しでイかせてあげられるかもと思ったがここに来て頭が真っ白になるほどの刺激。

「ひああああっ!」
「ようやくAのいいとこ見つけた」
「はあっうぁっやだあっひいいぃぃ!」
「さっきのお返しだよ」

容赦なく前立腺を潰され足がガクガク震える。
ペニスからはだらだらと先走りをこぼして、限界を訴える。

「そんらしたら、イっちゃうのおおお・・・!」
「いいよ、イっちゃて」
「ふあっひあああん!」

ビュクッビュクッ

「はあんっ!はあ・・・っごめん、僕ので汚れちゃった」
「きにしないで」

僕はアナルからBの指を抜いて、かわりにBのペニスをあてがう。
そしてゆっくりと腰を進める。

「ンッ・・あ・・・っ!」
「わわっ!本当に入るっ!」
「Bのペニスおっきいしあついよぉ!」

ようやく全て飲み込んで、ユルユルと腰を動かし始める。
ロデオなんていつぶりだろ。
自分から誘ったのだっていつぶりかわからない。
僕のペニスは出したばかりだと言うのに、すでに勃起していて。
アナルいっぱいのBのペニスに興奮して腰は震えて言うことをきかない。

「もお、むりぃ。ねぇ、B動いてぇっ、ぐちゃぐちゃにかき混ぜて」
「可愛い。A、おいで」

抱きしめられたままベッドに押し倒され、優しいキスの後にぐちゃぐちゃと音を立てながらピストンがはじまる。

「はあっやああん!アッアっはあっアァァァ!!!きもひいいっイイよお!」
「くあっ・・・締め付けないでっ」
「無理だよおっ!も、もぅっ!またでちゃうっあひい!」
「僕も、出るっ!」
「ふああっああん!」

僕は最奥を突かれてイった。
Bも僕の腹に精を放った。

二人で特に何を話すでもなく、ただくっついてお風呂に入った。
風呂上がりにまたココアを飲んでようやく就寝。
恋人の真似事。
夢は必ず醒める。
僕は目が醒めるとBはまだ寝ていた。
起こさないようにそっとベッドからでて、適当な紙に感謝のことばと通行人Aとサインをして部屋を後にした。
夜八時のシンデレラ。

僕はまた『ハチ公』のオブジェの横でナンパ待ち。
今日の希望は手酷く僕を貶めてくれる人。
気持ち悪いと罵って、彼の優しさをかき消してほしい。
ずるずるとその場にへたり込んでため息をついた。

「ねぇ、僕と美味しいココアを飲まない?」

ガバッと顔を上げると困ったような恥ずかしいような顔をした通行人B。

「Bっ・・・!なんで」
「どうしたらいいのかな、ナンパなんてしたことないんだ」
「そうじゃなくて、なんで来たんだよ!」
「んー・・・シンデレラを迎えに来たんだ」

僕の前に座り込むとBはあるところを指さした。

「あそこでいつもカメラ構えてて、そしたらいつも君がここにいて。・・・そしていつも誰かといなくなる」
「・・・知ってたんだ」
「いつもナンパ待ちしてるから声をかけようにもナンパなんてしたことないから僕はただ見てるだけ。いなくなったAを見て寂しくてフラフラこの辺を歩いてたらボロボロのAを見つけた」

そこから先は僕も知ってる。

「誘われたときに他の奴にもこうしてるのって思ったら悔しくて」
「しないよ!説得力ないけどっあんなの久しぶりでっ!」

お互いだんまりになってじっと見つめ合っている。
先に口を開いたのは僕だった。

「ねぇ、ココアは王子様のお城でご馳走してくれるの?」
「もちろん!シンデレラに飛びっきり美味しいココアをご馳走するよ」

僕らは手を取り走り出した。

「ねぇ、王子様!運命って信じる?」
「ああ!シンデレラは?」
「僕も信じてる!」




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