ComingOut:37

人ってめんどくせー生き物だと思う。
割と自由に生きてる自分が言うのもアレだけども。
喜怒哀楽とかそんな感情に振りまわされて、結局よくわかんなくなる。
恋愛感情なんかとんでもない、あんなん寿命縮めるだけの作業に違いないんだ。
どうせ長く続く感情じゃないし一時のもの。
世界レベルで見たときに神様に永遠誓った馬鹿なカップルがどれだけ破滅してるんだって話。
でもクサい話、友情って結構もつじゃん?
幼馴染と一生友達でいるなんて別に珍しい話でもないし高校の友達は一生の友達とか言うし。
まぁ俺は幼馴染もいないし高校の友達も高校3年生にして失う寸前なんだけど。
自分でそうしたんだけど。
でもこの状況に後悔はしていない。

「もう考えるのもめんどくせー」

ポケットからフリスク取り出して3つガリガリ。
今日の気分はピンクグレープフルーツミント。
ガチャって音がして、俺だけの空間だった屋上に入ってきたのは原田くん。
今日も元気にミイラ取り。

「サボり魔、お迎えですよー」
「そう言ってるやつが寝そべってるんじゃ世話ねぇな」
「中兄怒ってるぜ」

だって授業に出たら鈴木の視線が痛いんだもの。
今はできるだけ近付きたくない。

「ほれ、赤マルだけど」
「俺メンソガンガン派なんだけど」
「文句言うな。幼馴染からパクったやつなんだから」
「ありがたく頂きます」

原田から赤マルもらってフィルムをベリベリ。
箱から1本抜いて原田にも差し出す。

「俺は吸わねーよ」
「あら、禁煙つづいてたわけ?」
「俺は禁煙3年目だ、馬鹿野郎。お前の為にパクってきたんだよ」
「サンキュー。愛してる」
「鈴木に言ってやれ、馬鹿」
「ハッ」

ポケットからライター取り出して火をつける。

「言ったらおしまいだろうが、馬鹿野郎」
「とんだチキン野郎だな、お前」
「そうよー」

付き合って別れたらどうすんのって話じゃん。
それに俺は鈴木に恋愛感情なんか持ってない。

「あー・・・ヤニクラ」
「あれ?お前煙草久しぶりなの?」

少し驚いた原田の顔、まぁ無理もない。

「実は禁煙半年」
「え゛、なんで?」
「鈴木くん煙草嫌いじゃん。嫌だっつーから止めたの」
「そんなんで止めんのな」
「俺はそれだけで止めるには十分な理由」
「もし佐藤が煙草吸ってんの見て、じゅりちゃんが止めて言ったらどうすんの?」
「は?止めねーよ?」

当たり前じゃん。
真面目に付き合っててもいつか別れる女のために誰が止めるっつーんだよ。
口をへの字にして俺を睨む原田の口を抓る。
変な顔しやがって、気持ち悪い奴だな。

「ホントお前サイテーだよな」
「おお、分かってる」
「付き合ってんだからもう少し考えれば?」
「俺の性格わかってるでしょ」
「鈴木のことは予想外だったけどな」
「はーん?そーですかー」

イチイチ蒸し返すな。
俺の中でケリついてんだから。

「友達相手に勃起してんだぞ、おかしいと思えよ」
「だから何?今のままが一番気持ちいい関係だろうが」
「まぁそう言われればそうなんだろうけど」

思案顔の原田、言いたいことはわかってる。
コイツに迷惑かけてるってことも、吉田と中村が黙ってるだけってのも全部わかってる。
山下も俺を殴りたいんじゃないのかな。
鈴木は知らねぇ、考えないことにしてるから。

「ホント、チキン野郎な。お前ムカつく」
「俺はお前みたいに単細胞じゃねぇの」
「それでも俺は山下を一生愛してみせる」
「そう言って浮気してんじゃん。無理無理無理」
「浮気しててもだよ。俺は山下がいいの、つまみぐいするけど」
「俺はお前じゃないからそんなことはできない」

俺の恋愛感情は持って4ヶ月、後は誠意。
俺は付き合って別れたらそこでおしまい、その先は絶対に関係を持たない。
俺の別れるは嫌いになるってことだから。
友達は違うじゃない。
良いとこも悪いとこも含めて友達でいられるんだから。
だから俺は友達に恋愛感情は一切持たないし付き合うとかしない。
一生いてほしいじゃない、今の関係のまま今みたいに。

「だからしばらくって?」
「そ」
「ちゃんと縁も切れないようなチキンが、鈴木にキモいとか言ってんなよ」
「うるせぇよ」
「俺はもうお前がわからん」

空に向かって煙を吐きつける。
唾じゃないから自分にかかったりしない。

「俺はお前も含めて吉田も中村も山下も、それから鈴木もずっと一緒にいれたらいいなって思ってんの」
「キモい」
「なんとでも言え。一生離してやらん」
「そう思うなら一生鈴木に付き合ってやれよ」
「恋愛感情はない。それに鈴木もいつか絶対恋愛感情はなくなるだろうが」
「限らねぇだろうが」
「俺はリスキーな事はしない主義なの」

リスクを冒して、もし失敗でもしてみろ。
俺何するかわかんねぇよ。
フィルターしかなくなった煙草をコンクリートに擦りつけて潰す。
箱から2本目を取り出してまた火をつける。
煙草の匂いが染みついてれば今より鈴木は離れてくんじゃねぇかな。
鈴木が俺を忘れたころにまた煙草は止めればいい。
そしたらまた今みたいに一緒にいれる。
結局の所俺には誰かを一生愛してやる自信はないし、誰かに一生愛される自信もないのだ。
それはじゅりだって鈴木だって同じ話。
付き合う付き合わないの違いは一生一緒にいたいかいたくないかの違いなんだ。

「元に戻れると思ってんのか」
「でなきゃ困る」
「鈴木は特別お気に入りだったくせに」
「そう思ってくれてるなら早く鈴木に彼女でも作ってやって」
「他人任せかよ」
「今の俺には何もできないからねー」

さっさと俺のことなんか嫌いになって、それからまた俺と友達になって。
そしたら一生一緒にいれるでしょ。

「チキン野郎」
「うっせーよ、鳥頭」




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