怠惰な1日

人間の尊厳
3日目の深夜
黒色の主人と金色の奴隷
曖昧な境界線の延長
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昨晩散々遊ばれて、身体を犬用ベッドに投げられたのは深夜。
昨晩から旦那様は所用で海外に出ていて、俺には珍しい心の休まる日。
それは黒髪も同じらしく昨晩からやたらに機嫌がいい。
手足を投げ出して気持ちよく寝ていたら目が覚めた時には日が高かった。
黒髪を探せばソファーに座って読書中。
起こせばいいのに、どうやら寝かせてくれたらしい。

「起こせばよかったのに・・・」
「親父もいないんだから寝たいだけ寝ればいい」

ダルい身体を起こして、日課になってるフェラチオをしようと黒髪の足元に跪く。
ベルトに手を伸ばしたところで顔を離された。

「今日はいい」
「・・・気持ち良くない?」
「違う。そんなんじゃない」

黒髪は本をテーブルに置くと俺の身体をソファーに引き上げる。

「今日は甘やかしてやる」

いつもみたいにニヤリと笑うわけではなく、普通ににっこりと笑う黒髪。
逆に何されるのかと不安になった。
黒髪はドアの外で待機しているお抱えの黒服とメイドの元へ向かう。

「部屋に誰も通すな。どうしても処理できない事だけ聞きに来い」

そう言ってドアを閉めて鍵をかけると戻ってきた。
黒髪は着ていたシャツを脱ぎ捨てる。
結局そーゆーコトするのか。
黒髪は俺の腕を引いてバスルームへ向かう。
バスルームでヤんのかな。
俺は裸だから脱ぐものもないし、先にアナルでも解していようかな。

「待て待て!」
「え、何?さすがに昨日の今日だから解さないと負担が大きいんだけど・・・」
「そーゆーコトしたいんじゃないんだって」
「は?」

全然意図がわからない。
バスルームに2人で入って他に何をするの?

「甘やかしてやるっていっただろ」
「はぁ・・・。で、何をすればいいの?」
「何もするな」
「何もするなって言われても」
「だーかーらー、たまにはそーゆーコトなしにお前と遊ぼうと思ったんだよ!察しろよ」

頭をわしわしと掻いて、少し不貞腐れてる黒髪。
あ、耳が赤い。

「ぷっ」
「なんだよ!」
「ごめん、察せなくて」
「生意気」

恥ずかしかったんだ。
確かに柄じゃないもんな。
黒髪はぶつぶつ文句を言いながらバスルームへ入ってくる。
ぬるめのシャワーを浴びながら大きなバスタブにお湯を溜めていく。

「座って」

床に座るとシャワーが頭から降り注ぐ。
言いつけどおり何もしない。
黒髪はシャンプーを手にとって、ぶくぶく泡だてながら俺の髪の毛を洗っていく。
こんな風に人に髪を洗われるなんていつ振りだろう。

「お前の髪好き」
「綺麗に全部金色だから?」
「斑になってないし、柔らかい」
「俺はその黒い髪が好き」
「知ってる」

髪を綺麗に洗い流してトリートメントもヘアパックも全部やってもらう。
お礼にと俺も同じことをしようとしたらまた何もするなと言われた。
そのまま柔らかいスポンジで丁寧に身体を洗われていく。

「見つかったら俺殺されるね」
「親父いないし、俺の抱えてる奴等はチクったりしない」
「そうだね、あの人たちはそんなことしない」
「だから何も考えずに甘やかされてろ」
「・・・うん」

自分の監視が減るようにって自分で黒服やらメイドやら雇って。
だから黒髪お抱えの人達の主人は俺と同じ、この黒髪だ。
絶対歪んだ大人になるに違いない。
まぁ貴族じゃ大人の仲間入りを果たしてるわけなんだけど。
そんなことを考えているうちにお互い泡塗れ。
丁寧に泡を洗い流して、限界まで溜まったお湯の中に沈む。
背中には黒髪がいて、抱えるように俺の腰に腕を回す。
少しむず痒い、変な空気。

「ははっお前色白いから赤が映えるな」
「自分が付けたんでしょ」
「付けられるの、嫌?」
「・・・嫌じゃない」

その言葉に誘われるように背中にまた赤が増えていく。
身体がほんのりピンク色になる頃にようやくバスルームを出た。
やっぱり何もさせてはもらえなくて、身体を拭くのも髪を乾かすのも全部黒髪。
普段はメイドにやってもらっているクセに意外に手慣れている。
全身にクリームを塗って、フェイスパックまで。
おかげで俺の荒れ気味だった肌はぷるぷるだ。
裸のまま衣装部屋に向かって、黒髪は下着だけ付けると俺の服を上から下までコーディネート。
かしこまったものではなく、部屋着っぽいもの。
七分丈の白いパンツに黒いリボンがついたシャツ。
さすがに黒髪の趣味だって思ったのはシャツに施された銀のボタンの装飾とリボンの細かい装飾。
黒髪は黒いパンツにグレーのストライプのシャツをはおった。

「腹減ったろ?飯にしようぜ」
「いつ用意させたの?」
「内緒。そーゆーの聞かないもんだぜ?」

テーブルの上に所狭しと並んでいる食事。
それは全部俺が好きなもので。
黒髪はバケットにバターを塗ると卵とハム、それに野菜を乗せて俺に差し出す。

「ありがとう」
「お前ローストビーフはグレイビーソース派だっけ?」
「うん」
「たまにはホースラディッシュで食べてみない?」
「辛いの、得意じゃない」
「ホントお子様舌だなー、お前」
「舌ビリビリするじゃん」

その言葉に笑いながらローストビーフにグレービーソースをたっぷりかける。
マッシュポテトにもたっぷりグレイビーソースをかけて、俺の前に皿を置く。
俺はフォークとナイフを手に皿に盛られたものを次々と食べていく。
黒髪も黙々食べる俺を見ながらラビオリを口に運んだ。
皿が空になる前に次々と食事がでてきて、大好きなオレンジタルトまでしっかり食べる。
甘いものが嫌いな黒髪はコーヒーを飲みながらまだ食べるかって聞いてくるけどさすがに俺の胃袋も限界。
食事がすむとメイドが片付けをして、今度はチェスゲーム。

「手加減するなよ?」
「俺、結構強いよ?」
「負けねーよ」

白が俺、黒髪が黒。
ポーンを手にとって先へ進める。
黒髪もポーンを先へ進める。
何をするにも順序ってあって、中盤戦にならなければ動きは変わらない。
昔からチェスだけは負けたことがない。
いくら主人でも手を抜くなと言われたからには本気で。

「チェックメイト、俺の勝ち」
「・・・お前ホント強いな」

敗因を分析している黒髪は真剣で、その顔は俺を見ることはなく盤上を見つめている。

「やっぱあの時ビショップは間違いだったか」
「その前のルークが一番のミスだと思うけど」
「・・・わからねぇ」
「考えて。手の内は明かさないよ」

次もまた勝つために戦略は秘密だ。
次があるって保障はないけど。

「生意気」

鼻をグイッと上にあげられてすごい不細工だと笑われた。
この表情で不細工にならない人がいたら見てみたい。

「次は何をしようか」
「なんでも」
「じゃぁ何もしないでいよう」

腕を引かれて綺麗にベッドメイキングされたベッドへ。
まだ明るいのになんて怠惰な過ごし方。
広いベッドにただ寝そべって、さっきのゲームについて考えている黒髪。
手を伸ばして難しい顔をしている黒髪に触れたらゆっくりと目が合う。

「何か泣きそうだけど」
「そんなことない」

そういったのに黒髪は俺に寄り添って頭を撫でる。

「親父がいない時にはまたこうやって過ごそう」

次があるとほっとして、そらから全部見透かされているんだなーって思った。
意地悪で、少し性格が歪んでる俺の主人。
実は照れ屋で不器用な俺の主人。
ずっとこのままでいれればいいのになんて。
俺は大分この主人に毒されて来ているに違いない。
ひっそり掴んだシャツ、きっと気付いているのに振りほどくことはしない。

「あー!駄目だ駄目だ」

いきなり大きい声を出して俺を抱きしめたまま黒髪が起き上がる。
黒髪は俺を引きはがして、切羽詰まった顔をして俺を見る。

「負けた理由がわかんねぇ。もう1回勝負しろ」
「ははっ次も負けないから」

何もしない時間は終わり。
またテーブルに戻ってチェスをする。
旦那様がいない日の主人と俺の怠惰な1日はもう少し続く。




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