ComingOut:27
クラス分けをホールで確認してるとようやく春休みが終わった事を実感する。
「3年2組か・・・」
「そして見事に俺等はクラス同じだな」
ずらりと並ぶ名前の中に見事に佐藤から吉田まで書いてあった。
よかったじゃない、鈴木くん。
「つか俺等そんなに問題おこしてるかな?何この問題児扱い」
「お前が授業中に携帯ばっかいじってるからじゃん?」
「いやいやいや山下と佐藤のDSでマリカー対戦じゃない?」
「アレ佐藤がやろう言ったんだぜ?・・・あ、もしかして屋上BBQか?」
「アレは中兄と吉川ちゃんに賄賂で肉あげたじゃん」
「じゃあ視聴覚室でAV見たのがバレた?」
「まさか。ちゃんと職員会議中に見たからバレてないだろ」
「心当たりたくさんありすぎだろうが、問題児Hと問題児Y」
「痛っ!」
問題児N、中村からの鉄拳。
中村はため息をついてその場にしゃがみ込んだ。
「俺何組だった?」
「2組」
「またお前等と一緒?嫌ンなるわ」
「仲良くみんな同じクラスだぜ」
「佐藤も?」
「そ。選抜行きやめたんだな、アイツ」
「ふーん。・・・鈴木来た?」
「まだ。俺等しか来てない」
中村はなんか思案顔。
中村と吉田はなんだかんだカンがいいから状況なんかすぐに飲み込むわけで。
たぶん俺と同じ事考えてんだと思う。
俺等の今の状況なんてそら簡単にぶっ壊れるもので、実に脆い。
しかもその鍵を握ってんのが破壊力抜群の佐藤様だ。
だから俺的には佐藤は選抜クラスに行ってほしかった。
少し、少しだけでいいから鈴木と離れたらもうしばらくこの関係は保てたと思うんだよね。
そしたら鈴木の佐藤に対する恋心なんて簡単に消えてなくなる。
理由は簡単、佐藤が鈴木にかまう時間が減るから。
後は中村と俺で鈴木唆して、吉田がフォローすれば完璧。
そら鈴木が佐藤と付き合えたら100点だけどさ、人生どうやってもうまくいかないことがある。
「あら、みなさんお揃いで。俺何組?」
「みんな2組だって。佐藤も」
「げ、最悪。ガチで問題児扱いじゃん。もしかして隠してたローションとかゴム見つかった?それともバイブ?」
「吉田も心当たりあるんだな」
笑っちゃいるけど吉田も把握したらしい。
把握してないのは隣で笑ってる山下だけ。
相変わらずそーゆーの鈍いんだから。
まぁ面白くあるならなんでもいいって考えもあるんだけどね。
新学期早々ネガティブよくない、ポジティブに行こう。
早速登校してきた鈴木をいじめてやろう。
「おはよー。俺何組だった?」
「俺等は2組だったけど・・・」
「鈴木くんは見てない・・・」
「え?!まさか俺だけ違うクラス?!佐藤は?」
「佐藤ね・・・」
「アイツは・・・」
「とりあえず自分で見ておいでよ」
鈴木は鞄を山下に押し付けてクラス分けを見に走って行った。
見事な俺等のチームワーク、そして鈴木くん単純。
「・・・いつまで落ち込んだ振りしとく?」
「俺っ笑いそう・・・!」
「耐えろ吉田!」
「だっだって、鈴木くん選抜クラスから見てるからっ!」
「ぶふぅっう゛っぐ、うっ」
「山下ー!原田っ山下が沸点超えた!押さえろ!」
今にも笑い転げそうな山下を押さえつける。
ここで笑ったらさっきまでの演技が無駄になる!
「だめだめだめ!もうだめだめっ!鈴木が嬉しそうな顔してるっ」
「選抜クラスに佐藤がいないの分かったからだ!」
「おごごっうぐお゛お゛ぉぉ!」
「山下!生きろ!なんか死にそうだぞ!」
「も゛、わ゛らい゛じぬ゛ううぅ・・・」
吉田と山下がホールで転げ回る。
笑われてることなんか知らない鈴木は背伸びしながらクラス分けを確認している。
俺と中村の腹筋も限界で4人仲良くホールを転げ回った。
何あの子マジ面白い・・・!
前々から好きな子ができると恋してますモード全開だったけどコレ酷いな!
「お前等・・・元気だな・・・」
「あ゛、中兄!今日もイケメンだね」
「原田は今日もバカだな」
生徒に暴言吐く中兄も素敵。
今日はピッチリスーツ来ちゃってもうたまんない。
「ほら、お前もクラス見てこい」
「はーい」
「あっ佐藤いたの?久しぶり」
「そうでもないだろ」
めでたく今日から謹慎開けの佐藤。
どうやら朝から呼び出しだったらしい。
中兄は佐藤を俺等のとこに残してその場からいなくなった。
佐藤は転げ回る吉田に座るときっちり着ていたジャケットのボタンを外す。
当たり前のように人の上に座る佐藤はもうドSの鏡だと思うんだ。
「俺何組だった?」
「俺等全員2組。選抜クラスやめたの?」
「寂しがり屋さんがいかないでーって泣くから」
ニヤニヤ笑って鈴木を見る佐藤。
鈴木はようやく他のクラスに名前がないことに気付いて2組を見てる。
おそらく佐藤と自分の名前を見つけたんだろう、身体がビクッと跳ねた。
そのままぐるりとこちらを振り返ってバタバタと走ってくる。
そんなに嬉しいかったかね、鈴木くん。
「さっ佐藤!おまっおっ」
「落ち着け、ウザい」
「選抜クラスは?」
「鈴木くんがいかないでーって泣くからやめたの」
「なっ泣いてない!」
「いじけてたじゃなあい」
あ、吉田がイライラしてる。
わかるよ、わかる。
吉田の上でいちゃいちゃしてるもんね。
黙って乗られたままでいるのは吉田の優しさ?
「そろそろHR始まるから教室行こうぜ」
「担任誰かなー」
「俺ヨン様がいい」
「ヨン様いいな。優しいし」
ヨン様っつーのは笑顔がヨン様に似てる数学教師。
優しいし課題少ないし授業楽だし、担任ならラッキーだよな。
黒板に貼られている座席表を確認して席へ。
出席番号順だから山下と吉田、佐藤と鈴木は席が前後だ。
俺と中村は孤立。
まぁ後ろの席ってのはラッキー。
隣が可愛い子ならもっとラッキーなんて思って右を向けばまぁ普通。
左を向いて見なかったことにした。
そしてチャイムが鳴って前を向けば落胆。
「3年2組担任の中西和樹だ」
さ、最悪だ・・・!
中兄は好きだけど、でも担任とか最悪だ・・・!
確実に監視されている!
鈴木なんか口から魂抜け出てるし吉田と山下は寝始めている!
夢じゃないよ!
ちょ、起きないと怒られるよ!
「吉田、山下。起きろ」
「「すみません」」
逆らうことをやめて起きたけど前を向かない吉田と山下。
実際俺も向けていないんだけどね!
あぁ・・・せっかくポジティブになってたのに。
目の前には中兄、もっと嫌なのは左に座ってるじゅりちゃん。
じゅりちゃんは佐藤が好きで好きで大好きで。
今も佐藤に熱視線を送りまくるぐらいに大好きで。
そして俺は、俺だけが、実は佐藤とじゅりちゃんが両思いだって事を知っている。
←
※無断転載、二次配布厳禁
この小説の著作権は高橋にあり、著作権放棄をしておりません。
キリリク作品のみ、キリリク獲得者様の持ち帰りを許可しております。