04:流されて流されて

僕がお風呂から出て部屋につくなり以下のものを用意した。

■ビニル紐
■ガムテープ
■ハサミ

そして部屋の中央に境界線を張った。

「間々原・・・これは?」
「変質者除けバリケード。僕のテリトリーはこっち、向こうがどなたか存じませんがそこにいらっしゃる貴方」
「どなたか存じませんがって・・・」

好青年から変質者への格下げ。
・・・っあたりまえだあああ!!!あんなっあんなことされて黙っちゃいられない!僕の友達はそんなことしなかったさあああ・・・!

「なあそんな怒ることでもないだろ」
「うるさい!黙れ変質者!」
「俺ら友達だろ?」
「ぎゃあああああ!こっちに入るなあああ!」

ベッドに乗り、布団にくるまる。完全防備、まさに亀。
背中に重みを感じる。

「怒るなよ」
「離れて」

優しい声がする。・・・か、かっこよくても許さないんだアアア!流されるな自分!!!
ぎゅっと布団を握りしめて更に防御。

「なあ怒んなって。またポテチ買ってやるから」
「いらないっ離れてっ」

一向に離れる気配がない。あっ足が、足が痺れて・・・!はっ息が苦しいかもしれないっ!

「何もぞもぞしてんの?」
「うるさいっうるさいっ!もー離れろよ!」
「じゃあ許してくれる?」
「もうわかったから!どいて!」

ようやく軽くなった。その瞬間布団から飛び出して息を吸う。

「はあっ?!はあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛・・・!」

あっ足がっ足が!痛い痛い?痺れる!

「何してんだ・・・お前」
「うおお・・・!」
「ああ、痺れてんのか?」
「あああ!!さわっさわるな!」

足を庇って足を動かしたら自滅した。何してんだ自分。
ようやく和らいだ足をさすりながら身を起こす。

「許したじゃん、だからあっち行けよ」
「でもまだ怒ってる」
「そんなことない!ほら、明日学校だから寝るの!」
「身体測定とオリエンテーションだけじゃん」

またくっついてくる高岡君を引きはがそうとするがこの体格差が恨めしい・・・!

「それでも寝るの!だから離れろよー!」
「じゃあ一緒に寝よ」
「お前頭悪いだろ!!!」
「間々原に言われた・・・!屈辱」

会って一日とないやつに頭悪いとか思われてた!て言うか会って一日とないやつにいろいろされた僕はかなり屈辱を味わったんだ・・・!
友達不信になったら僕どうするんだろう。

「ほんっとやめてよ!高岡君はあっち!」
「・・・」
「何だよぅ・・・」

冷たい目をして睨まれた。苦手なんだよ、その目!近所の女の子そっくりな目!
人を値踏みするようなうわあトラウマ。

「なあ」
「・・・なっ何」
「その高岡君やめないか?」
「は?」
「もっとだなあ、こう親しみを込めてさあ」

ああ、あだ名みたいなのがいいのかな。

「うーん・・・じゃあ変質者なんてピッタリな」
「え?」
「ごめんなさい」

だがあだ名なんてつけたことはない。呼ばれたこともない。・・・みんな間々原君か間々原だったしな。アレ名前も呼ばれたことない!?

「ヨシキでいいよ」
「え、そんな呼び捨てなんて」

ハードル高いじゃない!

「俺もミツルって呼ぶから」
「え!」
「なんだよ、ミツル嫌なのか?」
「う゛っ」

なんか照れ臭いぞ。初めて名前を呼ばれて顔から火が噴き出してしまいそう。

「ほら、呼んでみな」
「・・・っ!う、ぅぅっ・・・よ、よ」
「んー?」
「よっょっ・・・・ヨシ、キ・・・」
「なーに?」

その笑顔は反則だ・・・!
あまりの恥ずかしさに布団にダイブして顔を埋めた。無理無理無理!顔だけはイイ!悔しいけど格好いい!

「どうした?顔赤いぞ」
「うるさいっ!もー寝る!」
「はいはい。じゃあおやすみ」

そう言ってベッドからいなくなる。電気を消してくれたらしい。
ほっとして明日は友達いっぱい作ろうと思いゆっくり目を閉じた。

ぎゅっ

わあ人の体温!温かいなあ・・・なあんてね!

「ベッドあっちだよ、コレ僕の」
「堅いこと言うなよ、おやすみミツル」
「うっ・・・!」

まだ呼ばれなれない名前に心臓が跳ねる。おおおお落ち着くんだ!心臓の音が聞こえてしまうっ!

「よっ、っヨシキ!」

首だけで振り返れば既に寝息をたててるヨシキ。あ、この角度からみると余計に柏木君ぽい。
そうこう考えていたらいつの間にか自分も寝てしまった。



夢を見た。憧れてた柏木君の夢。
柏木君はクラスは違ったけど体育はいくつかのクラスが合同だから体育だけ一緒。スポーツが得意な柏木君はいつも目立っていて、サッカーでゴールを決めたりして。
僕はスポーツは全然できないからいつも端っこにいた。たまにミスをしてこっちにくるボールを渡す。それだけで緊張してちゃんと顔を見たことはない。
女の子の集団(一際煩くてキャピキャピしてる)の中心にいる、少し大人びたおっぱいが大きい子が柏木君の彼女。うちの学校で一番の美人って言われてる。絶対近寄りたくない。
夢の中の柏木君は僕に手を振っていて、笑っていた。僕はそれだけで幸せ。
あっこっち来る。

『・・・ルー!ミツルー!ミツル!』

なっ名前を呼びながら柏木君がこっちに来るっ!僕も急いで駆け寄ろうとしたその時だった。

「ミツル、起きて」
「ぎゃっ」

閉じた瞼を一気に開かれて朝日が染みた。

「か、柏木君・・・痛いよ・・・」
「は?カシワギ君?」
「あ、ごめん・・・ヨ、ヨシキおはよう」
「早く支度して、朝飯食い損ねる」
「うん」

ああ、いい夢だった。今日はいいことありそうだなあ!
いい気分で食堂に行くと朝食に最適、ヨーグルトが出た。幸先いいスタートだ。

寮を出てしばらく歩けば校舎についた。学校敷地内に寮って便利だなあ!
朝寝坊に無縁になりそう。

「ホールにクラス出てるから見に行こうぜ」
「うん!」

一人じゃ不安だからせめてヨシキと同じクラスだったらって思ったが全8クラス、可能性は薄い。
ホールは人でごった返していて、僕じゃ掲示板が見えない。

「ミツルここにいろよ、俺が見てくる」
「あっありがとう!」
「荷物見といてな」
「うん!」

自分とヨシキの鞄を抱えてホールの入口付近で待つことにした。遠くにいてもヨシキは目立っていて、多分友達にたくさん話しかけられている。
少し寂しくなり鞄を抱く手に力を入れて俯いた。急に不安になってきた。

「ミツル!見てきたぞ!」
「あっお、おかえり!クラスどうだった?」
「ミツルは2組」
「えっヨ、ヨシキは?」
「俺は8組。まあ随分離れたが帰りは迎えに行くから」
「・・・うん」
「心配すんな。な?」

そういってヨシキは僕の頭をぐしゃぐしゃにしてクラスまで連れていってくれた。
ヨシキと別れてから意を決して教室にはいる。やはりいくつかのグループがすでにできていて更に不安になった。
黒板には座席が書かれた紙が張ってあり、その席へ向かった。
緊張で前が見れなくてやたら下を向いて席に座る。机には今日の予定が書かれた紙と身体測定で使う用紙が置かれていた。僕は昨日入学式に出ていないのでしっかりと予定に目を通す。
すると肩をポンポンって叩かれた。びっくりして身体が跳ねる。
席を間違ったのかそれともすでに何かしてしまったのか?頭の中がグルグルして思考が停止した。
おそるおそる振り返ると色素の薄い天然茶髪と少し日に焼けた肌。眉尻は切なげに落ちていて苦笑しているイケメンがいた。

「ごめんごめん。驚かそうとか思ったわけじゃないんだけどね」
「・・・かっ・・・かし・・わぎ、くん?」
「そ。覚えてくれてたんだ!中学はクラス違ったけど高校は同じだね。間々原、よろしくね!」

天然のイケメンスマイルフラッシュ(イケメンの笑顔からなんかあふれてる気がする光線)にやられて顔を真っ赤にした。
僕はまだ夢の中にいるのかも。



※無断転載、二次配布厳禁
この小説の著作権は高橋にあり、著作権放棄をしておりません。
キリリク作品のみ、キリリク獲得者様の持ち帰りを許可しております。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -