ComingOut:22

「ヨォ、お兄ちゃん」

買い物から帰ってきたら家に佐藤がいた。
え、何してんの?
ココ俺ン家じゃなかった?
家のソファに誰よりも偉そうに座る佐藤の横には我が弟。

「げ、夏彦帰ってきた。最悪」
「呼び捨てにすんなチビ」
「今日友達泊まる言ったじゃん。気を利かせろよ」

今日は親がいない。
ソレをいいことに友達を泊めるとか言うから俺だって出て行くつもりだったさ。
でも急すぎて吉田も中村も山下も原田もそして目の前にいらっしゃる佐藤もダメ言うから仕方なく、仕方なく家で引きこもるつもりでいたのに。
仕方なく啓介のパシりで夕飯の買い物までしてきたのに。

「つかソイツ俺の友達。お前の友達じゃない」
「佐藤くんは今日俺が呼んだんですー」
「佐藤、なんで言わなかったわけ?俺電話したじゃん」
「啓介と遊ぶ言ったらお前怒るから」

くそ弟め。
佐藤と連絡取るのやめろ言ったのになんなのあのチビ。
マジで腹立たしい。

「佐藤くん、宿題教えて!夏彦馬鹿だから聞いてもわかんねーしか言わねーの」

教えてくれなんか言ったことないだろうが!
人のこと馬鹿にしくさりやがって!
中学の勉強ぐらいそつなくこなすっつーんだよ!
そら佐藤みたいに教えるのうまくないし問題見ただけで答えが出てきたりはしないけど!
リビングでムカつくぐらいベタベタしてる2人を放置して買い物してきたものを冷蔵庫にぶち込んでいく。
生卵投げてやろうか。

「鈴木、喉乾いた。コーラ」
「ウチはペプシしかない」
「ペプシは嫌。他は?ジュース的なの」
「りんごジュース」
「ソレで」
「夏彦俺も!」
「テメーのは知らねーよ!」
「弟に優しくしろー」
「しろー」

む、むかつく!
コップを3つ取り出してりんごジュースのパックとコップ2つを奴らの目の前に。

「はい、どーぞ!」

俺は自分のコップを手に自分の部屋に戻った。
胃のあたりがムカムカしてホントその場にいたくなかった。



テレビにヘッドホン繋いで気晴らしのバイオハザード。
ゾンビで憂さ晴らし。

「死ね死ね死ね死ね死ね啓介死ね死ね死ねついでに佐藤も死ね死ね死ね死ねちんこ腐れ死ね死ね」
「ずいぶん物騒だな、うんこマン」
「ぎゃー!ごめんなさい!!」

ヘッドホン取られて聞こえなくなったサウンドの変わりに死神の囁きが聞こえた。
コントローラー放り出してその場に丸くなる。
背中に重みを感じて背骨がダイレクトに痛い。

「死ねって何だ、死ねって」
「ごめんなさいごめんなさいついうっかりあのゾンビが佐藤に似ててその」
「こんなイケメンなゾンビがいるか」
「い゛だだだだだだだ」

肘で脳天をゴリゴリされる。
痛い痛い!
地味に痛い!
ようやく背中から退いてくれたらしく佐藤を振り返る。
腕まくりまでして脳天ゴリゴリしたのかよ・・・。

「なんだよー、啓介と遊んでたんじゃないのかよー」
「飯。何時間ゲームしてんだ馬鹿」
「腹減ってないからいらない」

ゲームしかしてなかったし後からカップめんでもくえばいいし。
つか啓介と飯食いたくない。

「食え。俺が作ってやったんだから」
「・・・は?」

なんで佐藤が作るんだ?
啓介が作るんじゃなかったのか?
俺パシられたのに!

「啓介が作る言ってたけど」
「アイツ全然包丁使えてないじゃん。見てらんなかったから俺が作った」
「何作ったの?」
「ロールキャベツ。啓介がやりたがるからできる限り包丁使わないように」

ロールキャベツ、久しぶりだ。
食いたい、でもムカつく、食いたい、佐藤の料理うまい、でも啓介に会いたくない、食いたい、ムカつく。
頭ン中も腹ン中も黒くなってきて、食わない言おうと口開いたら目の前に佐藤の顔。
プラスでリップ音。

「食うだろ?」
「・・・う、ん」
「早くしねぇと啓介が全部食っちまうかもよー」

いつの間にかゲームオーバーになったテレビ画面を消して佐藤を追う。
あ、頭ン中も腹ン中も白くなったや。
リビングには飯の支度を2人分しかしてない啓介がいた。
おー・・・腹ン中が一気に黒くなったぜ畜生が。

「あ、夏彦自分でやれよ」
「チッ」
「啓介俺箸でいい。洗いものめんどいから」
「あ、佐藤片付けは俺やるから気にすんなよ」
「箸で食えるぐらい煮たから平気。いただきまーす」

自分の分を用意して佐藤と啓介に続いて飯を食べる。
うめー。
洋食のキッチンやってるだけはあるよなぁ。
佐藤ホワイトソースとか作ってんだぜ。
髪の毛弄りたいからキッチンやってんだぜ、似合わねーよな。

「うめー!佐藤くんうめーよ!」
「だろー?お前等の母ちゃんよりは下手だけどな」
「そんなことねぇよ!」

うん、佐藤のがうまいと思う。
母さんもうまいと思うけど佐藤のが味濃くて俺は好き。
父さんが薄味派だから味が薄いんだよなぁ。
いやーうまい。
おかわりしてこよう。
あ、さっきから喋らない理由?
目の前の奴等がうざいからさぁ。
マジフォーク刺してやろうかな、ムカつく。
席を立ってご飯とロールキャベツおかわり。
スープじゃなくて味噌汁っつーのが家庭感丸出しだよな。
多分ロールキャベツ作る予定じゃなかったからなんだろうけど。

食いたいだけ食って俺が片付け。
啓介は佐藤に遊んでもらってテンション高め。
いつもは飯食ったらすぐ部屋に引きこもるくせに!

「なーなー、佐藤くんさなんでそんないっぱいキスマークつけてんの?」
「さぁ?俺にキスマークつけんの流行ってんだって」
「誰流行り?」
「みんな?コレが中村、この辺が吉田でココに付いてんのが山下、後ココにハート作ってんのが原田」
「原田くんすげぇ!」
「3つつけんの、上手くやればハートなるよ」

みんな付けすぎだろ・・・!
暇があれば付けてたもんな・・・遊べば毎回つけてるもんな・・・キスマークつかもう怪我の域に達してるよな。

「なぁなぁ、佐藤くん。俺もつけていい?」

手からコップが滑り落ちた。
プ、プラスチックでよかった・・・!
つか何言い出してんだあの馬鹿弟!

「おー、いいぞ」
「マジで!俺下手だよ?」
「練習しとけ、練習」

佐藤もあははとか笑いながら承諾してんじゃねぇよ!
ギッと佐藤達を睨みつけたらまさに最中、ちゅーちゅーしてやがってた。
ギリッと唇を噛んで、洗い物を適当に終わらせると風呂場に逃げ込んだ。
シャワー全開で頭からかぶって、熱くなりすぎた頭を冷やす。

「くそっ、どいつもこいつもムカつく」

噛んだ唇から血が流れて、痛いはずなのにそれよりも何よりも頭が痛かった。
消えない残像にイライラして吐いてしまいそうだった。



風呂で頭を冷やしてリビングに水を飲みに行く。
リビングには一緒に寝ようとか言ってる佐藤と啓介が見えてすぐに部屋に引き上げた。
こういう時には寝ればどうにかなる。
布団に潜って考えないようにする。
キスマークなんかどうってことない。
遊びでよくやったりすんじゃん。
俺佐藤につけたこと無いけど、でも中村だってどうってことない言ってたし佐藤気にしてないし。
一緒に寝るのだって別にかまわないじゃんか。
布団干してなかった俺等も悪いわけだし、寝るとこがないんだから。
もやもや考えすぎて逆に目は冴える一方で。
マジ最悪、何してんの俺。
目を腕で覆って、なんかなんとなく泣きたい気分になって。
溜め息ばかりついてたら部屋の扉が開いた。

「・・・ビックリした」
「リアクションがビックリしてねぇよ」

ジャージ姿の佐藤がのそのそ俺のベッドに入ってくる。
小さくもない男がシングルに2人は狭過ぎなんだけど・・・。

「つめろ、俺半ケツ」
「シングルなんだよ。つか啓介と寝るんじゃねーの?」
「啓介は寝たよ。俺神経質だから気を許してもない奴とは寝れないんだよね」

そう言って佐藤は俺の枕を引き抜いた。

「ついでに枕もないと寝れない」
「俺だって寝れないわ!返せよ!」
「うるせーうるせー。ほら、腕枕してやるから」
「・・・高さが足りない」
「我慢しろ」

え、俺が我慢すんの?
この人遠慮とか知らないの?
文句を言おうと佐藤の方を見ればちょうど目の前に啓介がさっきつけたキスマーク。
収まってた感情がまた溢れてくる。
歯を食いしばって、見るなって思ってんのに目がそこから離れない。

「何?鈴木までキスマーク付けたいの?」
「ばっ違っ」
「つけていいよ?どっか空いてるトコに」

眠いのか目が優しい感じの目をしてる。
やめればいいのに、キスマークなんかつけなくていいのに。
それなのに吸い寄せられるように佐藤の鎖骨に吸い付いた。
薄い、薄すぎるキスマーク。

「満足?」
「うるせー」
「次俺ね」
「えっちょ、さとっ、ってぇ!」

ガジガジ首を噛まれて、ぢゅぅって思いっきり吸われる。

「綺麗についた」
「痛いって」
「他の奴等に内緒な」

ヘラヘラ笑って、そのまま佐藤は目を瞑った。
俺は狭いのを理由に佐藤に寄り添って、佐藤にバレないぐらいの力で佐藤のジャージを掴む。

「おやすみ、鈴木くん」
「おやすみ」

あぁ、最悪だ。
気付かなければ幸せだったのに。
俺、佐藤が好きなんだ。




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