16:ブッダを師に仰いで

テストなんてそんな紙切れで俺を判断してもらっちゃ困る。俺の友人、渋谷の名言だ。しかしテストというものは要所要所にちりばめられた見える困難であり、自身をステップアップさせるために必要なのだ。それはマリオを生き返らせるキノコ並みに重要なものである。
そして目に見える困難は目に見える結果を残していく。そう、成績表だ。成績表と言うものは柏木一星という個人を知らない人へ己を知ってもらうために最も有効かつ短時間で自身をアピールできるものである。なぜなら自身が培ったものが一目でわかるからだ。
成績表、あんなもので俺を理解したつもりか。これは俺の友人、森の名言である。これも一理あるが短時間で個人をアピールするもので成績表に勝るものはない。他者の意見(しかも教師のもの)まで書き込まれ、生活態度から何から何まで記された言わば成績表は文字だけの成長記録であるからして

「イッセイ!」
「はっ!」
「柏木、しっかりするんだ!後数学だけでテストは終わりだ!」
「さ、悟りが開けそうだった・・・」

テストも残すとこ数学のみ。
この1週間テスト期間と言うことで部活もなく、取り立てて何かあるわけでもなく灰になりそうなぐらい勉強をした。ミツルと委員長に始まり西君、さらにはあの存在が猥褻物野郎のヨシキ君の手まで借りて勉強に励んだ。スポーツ推薦枠の俺は部活が出来ないとなればこの学園にはいられないのだ。だから頑張るしかない。これもミツルと一緒にいる為なのだ、仕方ない。
最後の追い込みに見た目と違い可愛らしい字を書くヨシキ君の作ったプリントを読む。公式の使い方や優しいことにどの公式を使うかの判断ポイントまで書かれている。

「数学が終われば、自由だ・・・!」

プリントを読み終わったところでちょうど試験官の先生が入ってきた。プリントを鞄にしまい、必要最低限の筆記用具だけ机に並べる。
ふと横を見れば心配そうな顔をしたミツルと委員長がいて、ジェスチャーと口パクで頑張れって言われた。俺はそのジェスチャーに頑張るとジェスチャーと口パクで答えた。嬉しそうに笑うミツルを目に焼き付けて、配られたテストと向き合った。



テスト用紙が回収される頃には禿げ上がるんじゃないかと思うほど生気が無くなった。口から魂が出るんじゃないかと思って口を閉じる。
今日はテストだけで授業も部活もない。強化指定のサッカー部にいる俺からしてみれば嬉しい休みだった。

「イッセイお疲れ様!どうだった?」
「・・・聞かないで」
「まあまあ。習っていなかった部分もあっただろうし、赤点じゃなければいいと思うよ」
「うん」
「そうだ。柏木も今からどこか行かないか?」
「え?」
「間々原と今から昼飯食べに外に行こうと思ってさ」
「僕テスト終わったらジャンクフード食べたくなるから」

テスト終わったらジャンクフード食べたくなるとか始めて聞いたな。山田がテスト終わったら叫びたくなる言ってたのと同じ感じなのか?
断る理由はないし勉強を教えてもらったお礼に何か奢ってあげよう。2人には散々迷惑かけたもんな。

「いいよ。街まで下りる?」
「そうだね、商業施設までいけばなんでもあるから」
「マックがいい!チーズバーガーとマックポークとポテトが食べたい!」
「俺てりやきバーガーとポテトとナゲットが食べたい!腹減った!」

俺は何食べようかな。今の限定品もいいけどとりあえず普通のハンバーガーは絶対!ミツル達は2つで足りるらしいが俺はたりないからなぁ。せめてポテトは控えよう・・・。カロリーオーバーもいいとこだもの。

なあんてな!!!しっかりセットでガッツリハンバーガーとマックポークとチキンフィレオ食べちゃった・・・!最悪だ。食べてから後悔してもどうにもならないんだ。意志が弱い俺、死ねばいい。
ミツルと委員長はそれぞれ宣言したものにプラスシェイクまで食べてお腹いっぱいだと言っている。2人とも小さいけどやっぱり男の子なんだなぁと思う食べっぷり。

「間々原、ソースついてる」
「え?!どこ」
「ここ、口端の」

あっと言って指で掬ってペロリと舐めるミツル。ド、ドストライクなんだけど!ヤバいんだけど!
ダメだ、心を落ち着けよう。高校生のちんこなんて阿呆だからなんで勃つんだって時に勃つんだ。授業中とかいねむりしちゃった時とかプール終わりとか本当に空気読めないんだ。授業中の時には寝たふりとか号令の時には教科書斜めにして隠すとかできるがプールなんて死亡フラグだ。開き直るしかない。
ちなみに今、マックで勃つのも死亡フラグだ。そしてフラグが立った。ここは足を組んでやり過ごそう。本当に空気読めよ・・・!

「この後どこいく?」
「あ、俺ジーンズ取り置きしてるんだけど行ってもいい?」
「いいよ、委員長取り置きとかするんだね」
「かっこいいジーンズみつけちゃってさ、高いから悩んだんだけどどうしてもほしくて」
「取り置きって何?」
「いくらか先に払って、お店に置いといてもらうの。普通はあまりしないんだけど常連さんとかと行くとしてくれるよ」
「ユニクロも?」
「ユニクロでしたことはないな」
「そもそもユニクロでしないと思うよ」

私服がほぼユニクロのミツル、きっとブランド店なんかに行った事はないんだろう。今度連れて行ってあげよう・・・。
ゴミを片付けて割と近くの店だと言う委員長について行く。割と有名なブランドショップにGAPまである。本当に住むにも買い物するにも困らないなぁ。

「あ、ココ。ちょっと待ってて!」
「委員長ドゥニームとか履くんだ・・・」
「ドゥニーム?」
「ユニクロの5倍はする値段のお店だよ」
「すごっ」

どうやら伝わったらしい。ユニクロの5倍と聞いて興味が失せたらしい。ミツルはふらふらと周りのお店を見始めた。
ジーンズのセレクトショップなのかドゥニーム以外にもいろいろ置いてあった。最近はスリムパンツばかりだからジーンズは少し新鮮だ。
ジッとエドウィン見つめて、やっぱりディーゼルにしようと思った時にはミツルがいなくなってた。さっきまでその辺にいたはずなんだけど・・・。
近くの店を数件覗くとアクセサリーショップにミツルはいた。なんか天然石とか置いてるお店で、それこそ穴が開くほど何かを見つめている。天然石とか好きなんだろうか。そもそもアクセサリーに興味が無さそうだけど。

「何見てるの?」
「うわっ!」

思った以上にびっくりさせてしまった。

「ミサンガ?」
「うん。イッセイいっぱいつけてるよね」
「まぁ貰い物だけど」

サッカーの試合とかバスケの試合前によく貰ったのだ。足首と手首にそれぞれ2本と1本つけている。さすがに切れるまでは無理だから汚くなったり伸びたりしたら新しいのに変える。たくさんあったし、使わないのは悪いから。
ミツルを見ればまたジッとミサンガを見つめていた。

「ミツルはどの色が好き?」
「えっ」
「俺新しいミサンガ欲しいんだ。今つけてるのだるだるなっちゃっててもうすぐ切れそうだから」
「うーん・・・コレ?」

青と黄色と白で編み込まれた割とカラフルなミサンガをミツルは手に取る。ちょうど同じやつがあったので、ミツルに見つからないように2本手に取る。

「ここで待ってて」
「うん!」

素早く会計を済ませてミツルのところへ戻る。またジッとミサンガを見つめていた。

「はい、ミツルにプレゼント」
「えっ」

押し付けるようにミサンガをミツルに渡す。ちょっと強引に。

「わ、悪いよ!それに僕には似合わないよ!」
「見て、俺とお揃い」
「っ!」
「委員長には内緒だよ」

ミサンガを鞄にしまって笑いかければミツルも俺につられて笑った。

「あっありがと!」
「ちゃんとつけてね?」
「うんっ!」

安いミサンガだったけど俺も今度は汚くなっても伸びてきても切れるまでつけていよう。

「ふへへへ・・・」

締まりがない顔をして笑うミツルの手を引いて、こちらに手を振っている委員長の所へ向かった。喜んでくれたようで何より。



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