ComingOut:07

「バレンタイン、ね・・・」

登校前に昼飯を買う為コンビニに来たらコンビニがピンク色だった。
バレンタインか、縁ないなぁ。
佐藤とか吉田はいっぱい貰うのかなぁ、なんだかんだ女の子には優しいもんなあ。
・・・・・佐藤甘いの好きだったかな。
ハッ?!
俺何考えてんだ!
何でもない、頭沸いてんぞ俺!

「何してんの?キモいよ」
「うぉぉ!」

いつの間にか隣に中村が立っていた。

「鈴木くん、いくらもらえないからって自分で買うのはよくないよ」
「違っ」
「言い訳はいいよ、なんかいたたまれないから」

ホントに違うのに!
冷たい目をしていなくなろうとする中村を追いかけて俺も弁当のコーナーに移動する。
今日は何にしようかな。
昨日の晩にいなり寿司食べたからパンにしようかな。
サンドイッチうまいよね、俺タマゴサンド好き。
これだけじゃ全然足りないから適当にパンをいくつか買おうかな。
ディニッシュもうまそう。

「中村何にしたの?」
「いなり寿司」

参考にならねぇ、昨日俺が食ったもん買うなよ。
よし、無難に焼きそばパンとアップルディニッシュにしよう。

「食い過ぎじゃねぇ?」
「え、むしろ足りないから後1つ欲しいぐらいなんだけど」
「お前何で太らねぇの?」
「さあ?別に食生活に気を配ったことはないよ」

毎日食べたいだけ食べてるしな。
好き嫌いもあんまりないし。

「うらやましいわな。俺すぐ太るんだよなぁ」
「いいんでない?おっぱい大きくなるよ」
「お前・・・鈴木だけじゃないけどその俺イコールおっぱいの方程式やめてくんない?」
「吉田が褒めてたよ」

ついでに佐藤も。
首に痣みたいにデカいキスマークつけて、俺に中村のおっぱいがイイ!と興奮気味に叫んでた。
首のキスマークは中村がつけたらしい。
マジでキスマークより痣つかモロに内出血だった。
隠すこともせずにシャツ開けてるもんだから嫌でも目に付くんだ。

「佐藤の首、やったのお前なんだって?」
「ん?あぁ、キスマーク?腹立ったから噛みついたんだよ」
「・・・ふーん」
「付けたいなら佐藤に言えば?」
「は?!」

こちらを見ることもせず、野菜ジュースの成分表を見比べてる中村。
いきなり何言い出すんだこの馬鹿。

「だって佐藤の首めっちゃ見てたし気にしてっからさぁ。キスマークぐらいどうってことないだろ」
「違うってば」
「ま、別にいいけどねー」

中村は紫の野菜ジュースにしたらしく、緑の野菜ジュースを棚に戻した。
俺はカフェオレを手にとって中村を追いかける。
中村はお菓子コーナー、しかもチョコレートコーナーにしゃがみ込んでチョコレートを物色していた。

「どれにしようかなー」
「中村・・・チョコレート買うの?」
「うん。放課後に食べるお菓子をね。少しでいいんだけど」
「・・・毎日お菓子食べるから太るんだよ」
「うるせぇ」

中村はポケット菓子を2つと板チョコを手に取り、俺に板チョコを押し付けた。

「オイ、中村!」
「たまには甘いものでも食べときなー」

甘いものならアップルディニッシュがあるし飲み物カフェオレだしいらないんだけど。
でもその板チョコを返すことができなくて、結局そのままレジに向かった。

学校につくと女の子に囲まれた佐藤に出会した。
みんなアイツが気分屋でドSなの知らないんだ。
猫被りめ、俺のが優しいのになんでみんな佐藤に行くんだ。
吉田も女の子に呼ばれている。
アイツおっぱいフェチなんだぜって言ってやろうかな。
しかし・・・俺と中村何もないのか。

「中村せんぱーい!」

あ、間違った。
俺だけ何もない。
中村を置いてさっさと教室に行けば、クラスの女の子に義理チョコをもらった。
さっそく包みを開けて口に放り込む。
だってチロルだったから。

「おはよー、鈴木くん」
「はよー、吉田くん。彼女が出来そうかい?」
「そんなことはありませーん。ハイ、バレンタイン」
「え゛」
「ばーか、俺の妹からだ」

可愛いラッピングが施された小さな箱。

「うわあ!妹ちゃんによろしく頼むわ」
「お返しを必ずしろよ」
「怖いお兄ちゃんさえいなければもっといいのに」

可愛いラッピングが崩れないように丁寧に鞄にしまった。
お返しは何がいいんだろう。
他愛もない会話をしていたら佐藤と中村が揃って教室に入ってきた。
佐藤の手には紙袋、嫌味なほど貰ったらしい。

「佐藤すげーな」
「友チョコだって。チョコレート好きだと言ったけども・・・みんなくれすぎだ・・・」
「よかったじゃん」
「ボックスで来たんだけどみんな食べる?鈴木はチョコレート嫌い?」
「・・・いらない」

首にアレだけでかいキスマークつけててよくあんだけもらえたもんだな。
友達多いもんなぁ・・・いろんなとこに知り合いがいるしなぁ・・・そもそもマジで友チョコなんだろうか。
いや、俺がうじうじすることでもないんだけどさ。
ホント、俺頭おかしくなっちゃった。
眠くもないし気分が悪いわけじゃないけど机に突っ伏した頭はいつまでも上がらなかった。



ようやく4限が終わり、机に朝買ったパンを取り出す。
たくさん買ったのにさ、あんまり食欲ねぇ。

「鈴木、屋上行こうぜ」
「寒いじゃん」
「久々にいいだろ」

中村にコンビニの袋を取られて佐藤に引きずられるようにして屋上へ向かう。
屋上で青空ランチなんて春先にするのが一番なのになんでこんなクソ寒い日にしなきゃなんないわけ。
気分としてはトイレで1人ランチなのに。

「寒い!」
「だから言ったじゃん」
「あぁ・・・寒すぎる。涎が出るほど寒い」
「口が開いてるからだ、アホめ」
「うごっ」

ガタガタ震えている佐藤の顎をガチンと閉じる中村。
し、舌噛んだらどうするんだろ。

「陽向行こうぜ、まだマシじゃん?」
「そうしよう」

陽向に円を描いて座る。
佐藤と吉田は弁当を開いて、俺と中村はコンビニの袋を開いた。
もそもそと特に何を話すでもなく食べ始める。
なんだか味がしない。
吉田がなんか話してるけどそれも耳に入らなくて、ただぼーっとタマゴサンドを咀嚼する。

「鈴木元気ないね」
「風邪か?この前外でシたから?」
「ちょ、佐藤・・・外って何」
「まあ佐藤のシたことは置いといて、鈴木は気にしなくていいよ」
「なんで?中村なんか知ってんの?」
「女の子の日だほぅっ」

中村の顔面に拳をめり込ませる。
何でも聞こえてないと思うなよ、耳には入ってるんだ。
ようやくタマゴサンドを食べ終わって焼きそばパンを手に取る。
あー・・・アップルディニッシュいらなかったかも。
なんだか腹一杯?・・・胸一杯?
いや、可笑しいだろ。

「ごちそーさま。吉田、ちょっといい?」
「ん?」
「膝かして、少し寝るから」
「・・・太らげはぁ!」

余りの奇声にびっくりして吉田を見たら飯食い終わったばっかなのに腹を蹴られていた。
ちょ、目の前でリバースだけはやめてほしいんだけど。

「アイツ等元気だな」
「・・・そうだね」

焼きそばパンを無理矢理カフェオレで流し込んで飲み込む。
佐藤は食べ終わったらしく弁当箱を片付けていた。
俺はアップルディニッシュをどうしようかとコンビニの袋を広げる。

「あ」

目についたのは真っ赤な箱入った板チョコ。
そういや買ったんだった。

「どうした?」
「あっいや・・・」
「チョコ?お前がチョコレート買うとかめずらしいな」
「あー・・・こう無性に食べたかったんだけど、あー・・・」

我ながら情けない。
うまい言い訳も出てこない。
つかマジなんで買ったんだろ・・・。

「やるよ、なんか、食べる気しないし・・・あ、いらない?そうだよな、たくさん貰ったも」
「サンキュー」
「え、いるの?!」
「え、いけないの?」
「いやっあっいいんだけども、どうぞ食べて下さい」

佐藤はコンビニの袋から板チョコを取り出して開け始める。
俺はアップルディニッシュしかなくなったコンビニの袋を見つめた。
な、なんか、は、恥ずかしくて前が向けない。

「ほれ」
「え」
「ハッピーバレンタイン。お返しよろしく」

俺に差し出された半分に割られた板チョコ。

「いや、俺が買ったんだけど・・・」
「細かい事言うなよ」
「べほっ」

口に詰め込まれたチョコレートは思いの外甘かった。

***

「ちょ、え、アレどうしたの?」
「そーゆーコトらしいよ」
「鈴木くんどうしちゃったの?」
「聞くな、見なかった振りをしろ。寝た振りを決め込むんだ」
「うん。佐藤ねぇ・・・アイツあー見えて鈍感だから鈴木大変だと思うよ」
「まぁ鈴木も大概ニブいからいいんじゃないの?生暖かい目で見守ろうや」
「そうする」
「テメェ・・・生暖かい手がシャツにインしてんぞコラ」
「おっぱい触らせて下さい。マジしゃぶらないから、触るだけだから」




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