15:休息のない休日

もう嫌だ。休日は昼まで寝ていたいタイプなのになぜ朝から走っているんだ。ふざけんなよ・・・。

「暑い・・・汗がうざい・・・帰りたい・・・」
「高岡うるさい」

まだ肌寒い午前からバスケ部の練習。1年は軽い運動をした後にハンドリングとかパス回しとかして、眼鏡(担任)に外走っておいでとか言われた。
ようやくロードワークが終わって、今日の練習が終わった。タオルを手に水道へ行き頭から水をかぶる。あー・・・気持ちいいわあー・・・。隣で西も頭から水をかぶっている。あの髪ウザそう。

「マジなんで俺が部活なんか・・・」
「いいじゃないの、マッチョになれるよ」
「運動は得意なぐらいでいいんだ」

髪をバサバサ拭いて鞄を手に取る。決めた。今からシャワー浴びて昼寝をする。まだ筋肉痛も治っちゃいないのに・・・ロードワークとかついてない。
校庭に目を向けるとサッカー部が練習中だった。笑いながら練習するナルシスト野郎が嫌でも目に付く。

「・・・高岡は柏木君ぐらい爽やかに汗かけないの?顔似てるくせに」
「似てない」
「なんか高岡汗かくとでろんでろんだよね、ゼリーみたい」

反抗する気力もなく、ただ西の頭を叩いて寮へ足を向ける。
こちとらロードワークで疲れてんのに西の奴がやたらに機嫌がよくてさらに疲れる。テンション高過ぎだろうよ・・・。

「この前買ったCDがマジ良くてさあ。たまには洋楽もいいな!」
「誰買ったの?」
「ショーン・ポール、知ってる?」
「知らねー」

そもそもCDなんか買わないし音楽をあまり聴かないからな。DVDは買って見るけど。似合わないといわれるが最近はお笑い系にハマってたりする。部屋にはテレビがないし娯楽がないのだ。

「つかテンション高すぎ。うるせえ」
「だってな、聞いてくれるつか聞けよ!朝さ、町田に会ってテストの話をしたんだ」

あ、話が見えた。

「得意科目きかれたから理科って答えたわけ。そしたらさっ」
「一緒に勉強しないかって?」
「そう!俺幸せだー!!!」

両手をあげて喜びまくってる西。俺は溜め息をついてその幸せを崩してやることにする。

「よく考えろ、町田は勉強苦手か?」
「得意ってか成績はいつも3番内だよ」
「その町田が自分以下のやつと何で勉強すんだよ。いいことねーじゃん」
「確かに・・・えー・・・じゃあ何のために?」

俺は西に向き直る。

「俺は昨日ミツルに同じ手口で誘われた。そしてアホに勉強を教えるハメになった」
「アホ?」
「アレ」

ビシッと爽やかな汗をかいてるナルシスト野郎を指さした。少し遠いが誰だか分かったらしい

「まぁお互い言っちまったもんは仕方ない。頑張ろうぜ」

言葉も出ないまま地面にめり込んだ西。手を青白くなるほど握り締めている。ついでにワナワナ震え始めた。
糠喜びは身に堪えたらしい。

「なんなのっ柏木君なんなのっ・・・!毎回毎回美味しすぎやしない?!」
「爽やかに汗をかけるようになればお前も美味しい思いが出来るかもしんないぞ」
「・・・俺爽やか系になろうかな」

無理だろ。全体的になんか、なんか西チャラいし。生活態度が全面に押し出されてる感が・・・。軽薄な顔とか。

「失礼だな」
「何が?」
「失礼なこと考えてる顔してんだもんよ」

付き合いが長いとホント嫌になるぜ。



休みの最後の日ぐらいアホから解放されたいと思ったのに今日もキッチリ勉強会。わざわざ早めに風呂も夕食もすませてだ。

「あっイッセイ、ここのlikeは好きって意味じゃなくて似てるって訳すから・・・」
「うん」
「柏木、ココのitはコンマより前を指してるのね?つまりココの答えは・・・」
「うん」

充と町田に挟まれて英語をやってるナルシスト野郎。西も英語広げて町田に聞く体勢を整えているのに声がかけられないでいるらしい。顔が悔しそう。
俺は数学の勉強ついでにナルシスト野郎に渡すプリントを作っている。文系に比べて理数系は点数上がりやすいからプリント渡してわからないとこだけ聞けという手段に出た。
だって・・・めんどくさい。書けば覚えるし一石二鳥だよな。

「柏木、あんまり詰めるのもよくないからさ休憩しよ?」
「・・・うん」
「きゅーけー!つかれたー!」

ナルシスト野郎が机に突っ伏して今にも頭から煙りを出しそうだ。横でミツルと町田が労いの言葉をかけまくっている。むしろ俺にかけてくれ。

「あっイッセイ喉渇かない?」
「そうだね、俺達買ってくるよ。柏木何がいい?」
「え、悪いよ」
「ヨシキは何がいい?僕が奢ってやろう!」
「・・・なんかオレンジジュース的なのがいい」
「「「ぶふ」」」

西をのぞいた3人が噴き出した。なんだコイツ等!

「ヨシキ君がオレンジジュース?」
「コーヒーとか言うと思ったのに・・・」
「ヨシキにも可愛いとこがあるんだねー・・ぷ」

ミツルのニヤニヤ笑いにカッチーンと来たので襲ってやろうとしたらナルシスト野郎にガードされた。ミツルめ・・・ちゃっかりナルシスト野郎の後ろに隠れてやがる!

「西くんは何がいい?」
「町田と同じのでいいよ。あっお金」
「いいよ、付き合わせたの俺だから俺のおごり」
「ま・・・まちだ・・・!」
「委員長いこっ!」
「あっ!待って間々原!」

パタンと扉が閉まってムサい奴だけが残ってしまった。華がない。

「「可愛いなぁ」」
「アホ共、口に出てるぞ」

にやけた面してしまりがなさすぎる。
っていうか、この面子でいることが激しく違和感がある。なんか嫌だ。

「町田がジュースおごってくれるって!」
「はーい、良かったですねー」
「西君は委員長が好きなんだねー。わかりやすい」
「コレを3年やってあの距離なんだぜ」
「小学生の初恋じゃないんだから・・・」
「お前等みたいにただヤりたいわけじゃないんですぅー」
「とか言っているけどセフレはいるんだぜ」
「うわ・・・最低」

どうやらナルシスト野郎の中で西の株が急落したらしく、目が軽蔑の色を浮かべていた。セフレとか嫌いなタイプなのか。なんだか意外。

「だってひとりじゃ寂しくてできなーい」
「町田でヌけんの?」
「おかわりイケるわ、ボケェ」
「へー・・・委員長にいってやろー」
「やめてっ!町田には黙ってて!」

多分今の会話を町田にバラされたら西は不登校になるにちがいない。あ、それはそれでなんか快適かもしんない。

「あ、ヨシキ君さあ・・・この間ミツルにフェラをお友達に聞けとか言ったでしょ」
「あー・・・うん」
「そーゆーのやめろってば」

どうやら思惑通りナルシスト野郎に聞いたらしい。顔がキレ気味だ。

「委員長から変なメール来てマジでどうしよう思ったんだから」

ん?え、町田?

「町田、から・・・?」
「ミツルってば委員長に朝、食堂で聞いたんだって」
「ちょ、間々原君っ町田にフェラの意味言わせたの?朝の食堂で?」
「そうなの。委員長相当テンパったらしくて『フェラってちんこ舐めることだよね』ってメールが来たんだから」
「あー・・・町田に聞くとは思わなかった」
「思わず電話したんだから。委員長が恥かいちゃったじゃないの」
「高岡少し考えろよ!・・・なんで俺寝てたかな」
「西君何言ってんの?」
「あー・・町田に悪いことしたなぁ・・・」

いや、まさか朝の食堂って・・・そら恥をかかせてしまったよなぁ。今度ナタデココを貢いでやろう。そして次からイッセイに聞けと言おう。
ぐだぐだそんな話をしていたらタイミングよくミツルと町田が帰ってきた。

「「ただいまー!」」
「町田、すまなかったな」
「え、高岡くんどうかしたの?」
「ちんこ舐める件について」
「かっ柏木っ!」

ナルシスト野郎に詰め寄り、いつもの冷静さは欠片もない町田。ミツルは焦って仲裁に入っている。

「ミツル、今度からイッセイに聞けよ」
「そーゆーことを僕に言わなきゃいいんじゃないの?!」
「え、おもしろくないじゃん」
「おもしろくないとはなんだっ変態!」

変態とは失礼な。次は何を教えてやろうかな。
ミツルと町田が買ってきたジュースを飲んで、またナルシスト野郎の生気がなくなるまで勉強をはじめた。



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