家に帰ったら、おばあちゃんが倒れていた。いつもだったら焦って、泣いて、苦しかったはずなのに、隣に研磨がいたから、冷静でいられた。研磨がいれば、何も怖くなかった。

「おばあちゃん、入院しないといけないって」
「・・・・そっか」

研磨に言われた言葉がどこか他人事みたいに思えた。なんの病気かも知らなかったけど、よくなればいいなぁとは、思った。ただ、それだけ。

「ねぇ、ナマエ。卒業したらここに住まない?」
「私、一軒家住めるほどお金持ってないよ」
「部活やめてから、株とか、動画撮ってて少し余裕ある」

おばあちゃんが倒れたその日に卒業後の、同棲の話をするなんて正気の沙汰じゃない、と思う。一緒に住もうって話してなかったし。でも、研磨と一緒にいられるならどうだっていい。

「ナマエの部屋はもう決めてあるんだ」

研磨に、進学も就職もしないで、隣で俺を支えて欲しいって言われたから、私の人生はもう研磨にあげたみたいなものだった。研磨の人生もくれるって約束してくれた。
すごく幸せだ。




籠の中の鳥は大空を飛ぶ自由を知らない。鎖で足を繋がれて、どこにいくこともできなくなる。でもそれでいい。鳥はどこにも行きたくなかったのだから。

利口な鳥は知っている。自分が一人じゃ生きられないことを。羽をもがれて羽ばたけない。快適な籠の中で逃げ場もなく注がれる愛で溺死する。




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