「伏黒くんごめん!昨日あのまま寝ちゃって連絡するの忘れてた!」

待ち合わせ場所に来た伏黒くんはなんだか疲れた様子で目頭をほぐしていた。もしかして連絡待ってた?と申し訳なくなる。

「・・・新幹線の時間遅れるぞ」

予備の呪符と昨日先生に渡されたばかりの制服が入っている私のキャリーケースを奪うように取って引きずっていく伏黒くんは左手に私の荷物、右手に自分の荷物で大変そうだ。

「あ、ありがとう。でも自分で持つよ」

私の言葉を無視して先に進む。すごく機嫌が悪そう・・・。なのに私の荷物は持ってくれるあたり優しいというか紳士というか・・・。新幹線に乗り込んで席に座った伏黒くんはコクリコクリと頭が船をこぎ始める。疲れてるんだろうな。任務だから寝たらいけないとでも思っているのか必死に目を開ける姿がなんだか可愛らしい。

「寝ててもいいよ。ついたら起こすから」

いくら私が頼りないとはいえ駅についても起こせないほどだとは思われていないだろう。伏黒くんはようやく目を閉じて寝息を立て始めた。

「まつ毛長いなぁ」

起きている時はじっくりみれないけど目の前に綺麗な顔があれば観察をしないわけにはいかない。透き通った頬に薄い唇、羨ましくなるほど整った顔をしていて、そんなんだから恵はモテないんだよーと馬鹿にした五条先生の言葉はかなり疑わしい。これだけ紳士で綺麗なんだからモテないわけがない。

「・・・まぁ、私には関係ないけど」

自分の出した声は思いの外冷たく響いて、あの時のことを忘れていないことに安心する。どれだけかっこよくても優しくても、私が愛したのは、これから先も愛するのは彼だけだから。





「伏黒くーん。ついたよー」

グッと眉間に皺を寄せるがここで起こさないわけにはいかない。心を鬼にしてデコピンをお見舞いするとその衝撃で目を覚ましたらしく伏黒くんは額を摩った。

「・・・もっと違う起こし方があっただろ」
「声かけても起きなかったよ?」
「普通揺すって起こすだろ。なんだよデコピンって」
「接触面積を少なくするためだよ」

ムッと表情を変える伏黒くんにキャリーケースを奪われる前に新幹線から急いで降りた。






「仙台駅ってこんな感じなんだねぇ。あっお寿司食べたい!」
「寿司ならどこでも食えるだろ」
「そうだけどさー。うーん、じゃぁ牛タン!」
「遊びに来たんじゃないからな」
「分かってるよー」

私服だとどうしても気が抜けちゃうよねー、と笑うとため息を吐かれる。
伏黒くんはいつも行かないような場所に行くと興奮するのも分かってくれてもいいと思うの。

「さっさと行くぞ」
「えぇ!もう!?」

携帯で学校を調べてどんどん先に進んでしまう伏黒くんを追いかける。

「キャリーケースは!?」
「補助監督がその辺うろついてるから預けろって言われた」
「だれが補助監督か分からないよ?」
「ミョウジさん、伏黒さんですか」
「ひっ!?」

にゅっと背後から現れた男の人に小さく悲鳴をあげる。目の下に濃い隈を作ってこの業界のブラックさが人相に表れていた。伊地知さんもだけど補助監督の人ってなんでこう幸薄そうな顔をしているんだろう・・・。
一泊だけ取っているというホテルにキャリーケースを運んでもらって一直線に学校へ向かう。遅い時間だし高専の制服でも大丈夫だろうと、トイレで私服から制服に着替えた。駅からの道のりで真っ黒な制服は好奇の目に晒されたが、私服と比べると断然動きやすいのだから仕方がない。

「で?どこにあるんですか。」

五条先生に電話をかけた伏黒くんからは早く終わらせて帰りたいという気持ちがひしひしと感じられた。

「百葉箱!?そんな所に特級呪物保管するとか馬鹿過ぎるでしょ」

ひゃ、百葉箱!?少し前まで非術師だった私でさえ呪術師になってから何度も聞いたことのある名前。呪いの王とも呼ばれるそれを百葉箱に!?
ぽかんと口を開くことしかできない。伏黒くんなんか未だかつてないくらいに眉間に皺を寄せている。

「・・・ないですよ。百葉箱空っぽです」

何度も扉を開け閉めしてみたり、下から覗いてみたり、少し叩いてみたりしたけれど結果は変わらず、百葉箱の中身は空だった。

「ぶん殴りますよ」

伏黒くんの気持ちが痛いほどに分かった。回収できるまで戻ってきたらダメだと理不尽なことまで言われる。放っておいたら被害が出るかもしれないから仕方ないけど・・・。

「・・・一回ホテルに戻ろか。この時間から探し始めてもロクなことないだろうし」
「・・・あぁ」

お寿司も牛タンも食べる気になれなくて、ファーストフードで済ませてホテルに帰った。早く見つかるといいな・・・。




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