「今回は俺達の方が勝たせていただきますぅ」

「いいや!今回も俺達が勝つ!」

「赤葦くん、久しぶり!」

「ミョウジさん、久しぶりだね」

ばちばちと火花を散らせているこちらの主将であるてつろうと次期梟谷の主将かと思われる木兎さんを尻目に横にいた赤葦くんに挨拶をした。梟谷の三年生は春高まで残るようでこちらより人数が多い。三年生の先輩達はすでにコート内で体を温めていた。
一足先に荷物を置きに行こうとする研磨の腕を掴んで今日はよろしくね、と声をかけると赤葦くんは苦笑しながら返してくれた。

「てつろう達も早くウォーミングアップしないと」

声をかければてつろうは木兎さんと睨み合いながらも荷物を置きに行った。

「じゃあ私もマネージャーさんに挨拶してくるからちゃんとするんだよ研磨達」

残った一年部員に声をかけるとおう、と元気な返事が帰ってきたが、名指しされた研磨はむすっと顔を顰めている。まぁ研磨だしな、と思いながら梟谷のマネージャーの元へ走る。研磨のことは山本くんあたりがどうにかしてくれるだろう。




一日中駆け回っていればいつの間にか日が暮れていた。梟谷のマネージャーの一人である雀田さんと共に大量の夕食を作った。

「雪絵が来るとご飯出す前になくなりかねないからねぇ。」

ニコニコと笑いながら話す雀田さんに白福さんはどれだけ食べるのだろうと恐れ慄いた。普通に生活していればまず作ることのないくらいの量のご飯を作り終えると、ちょうど部活に疲れた部員達が食堂に入ってきた。

「肉あるか肉―!」

「木兎はそればっかりなんだから。そう言うと思ってがっつり唐揚げ揚げといた」

男子高校生が食べる量のご飯が集まればかなりの量あって、本当に食べ切れるのか少し心配になる。もしもの時は雪絵が食べるわよ、と言った雀田先輩だが練習試合は何回かしたことはあるものの梟谷との合宿は初めてでご飯を一緒に食べるのも初なため、そこまで言われる白福先輩の胃袋のサイズが気になって仕方ない。

「ナマエ、俺少なめで」

言われた通り研磨の分は気持ち少なめにするが結局てつろうにバレて増やされていた。

「大丈夫?」

私より断然大丈夫ではなさそうな研磨に尋ねられて一瞬首を傾げたが、吸血衝動のことであることに気付く。

「一応まだ大丈夫」

「唐揚げもニンニク入ってそうだけど・・・」

「このくらいなら食べなければなんとか、」

「ナマエちゃん!唐揚げないじゃん!食べなきゃ大きくなれないぞ!」

敢えて唐揚げを入れていなかった皿に次々に置かれるのを見て呆然とする。研磨もげっ!という表情をしててつろうを探すがいち早く食べ終わったてつろうはお風呂に行ってしまった。

「ナマエ・・・」

悟ったような顔をしながら空の容器を差し出してくる研磨が可哀想に思えてくる。渡すのを躊躇っていると天から降り注ぐような声が聞こえた。

「ごめん。孤爪、ミョウジさん悪気はないと思うんだけど・・・。食べられないなら俺が食べるよ」

困ったように笑う赤葦くんが神々しい。助かった・・・と呟いた研磨に全くだと同意した。

お風呂から上がると背中を丸めた研磨が座っていた。近づく私に気付くと携帯をポケットにしまい、行こうと手をとる。監督はすでに外しているらしく、預かった鍵で扉を開けた。
研磨は無言で布団に腰をおろすと襟ぐりを引っ張って首を傾けた。そこに抱きつくようにして手をかけると首元に顔を埋める。

「うっ」

噛む瞬間はどうしても痛みを感じさせてしまう。一度唇を離し、ぺろりと舐め上げると早くしろと言わんばかりに後頭部に手が回されて押しつけられた。甘くクセになる血液を口の中で転がすように堪能する。最近ではご飯よりも研磨の血の方が美味しく感じてしまう。いや、ご飯が美味しく食べれない。吸血症が進んでいる証拠なのだろうか。心配させたくないから研磨とてつろうには黙っているけど察しの良い二人にはバレるのも時間の問題かもしれない。

「ナマエ、そろそろ・・・」

以前と同じ量では物足りない。でもいつも以上に吸ったら研磨が合宿中に倒れてしまうかもしれない。迷惑はかけたくない。

「・・・もしかしてまだ足りない?」

いつもより良くならない顔色を見て研磨は問いかけてくる。軽く息を吐いて笑う。

「足りてる!十分だよ!美味しかった。ありがとう!」

それ以上追求される前に立ち上がって研磨に手を貸した。

「体力なくなってきてるんだから無理したらダメだよ。今日は早く寝なよ」

夜中までゲームをしたり、逆に夜中に起きて朝までゲームをしたりする研磨が言うか!とは思ったが自分の体力が低下してきたのは事実なので素直に頷いておく。無理して倒れたら余計に迷惑かけちゃうし。
猫又先生に鍵を返しに行けば少しは顔色が良くなったなぁと言われて、足りないとは思ったけれど同じ量でも効果はあるのだなと思う。確かにいつもよりは元気になっていないと思うけど、吸血前よりはだいぶ体が軽い。研磨とは廊下で別れて、寝る前にお茶を飲みたくなってしまい、自販機へ向かった。

「あれ、赤葦くんも自販機?」

「ミョウジさん、うん。喉が渇いて」

ちょうど遭遇してしまえば別々に行く理由もない。暗い廊下は心細いからちょうどよかったと笑った。

「ミョウジさん、ごめん」

自販機までそれなりに楽しく談笑していたはずなのに急に謝られたから驚く。聞けば先生達の部屋から私と研磨が一緒に出てきたのを見たらしい。そんなの黙っておけば気付かなかったのに、と私が言うとどうやら研磨と目があってしまったらしい。そんな様子一切なかったけどな。

「私吸血症でさ、」

変な誤解を受ける前に説明しておかなければと思い、一通り説明すると赤葦くんはなるほど、と頷いた。

「ごめんね、あんまり言いたくはないよね」

「別に赤葦くんは言いふらしたりしないだろうしたとえ言いふらされたとしても問題があるわけでもないから・・・心配はかけたくないけど。大丈夫。あ、でも、」

聞いたからには私が人を襲おうとしたら止めてね、と冗談めかして言えば全力で止めるよ、と笑ってくれた。

「治療法は番とのキスなんだよね。孤爪とキスしたりしないの?」

「え」

赤葦くんがあまりにも簡単に言うから固まってしまう。

「私たち付き合ってないよ」

「え、そうなの?」

たとえ付き合ったとしても番という立場は重すぎるから軽率になってとは言えないけど。信じられない、というつぶやきに首を傾げる。

「両思いだと思うけど」

「・・・赤葦くんそもそもなんで私が研磨のこと好きって知ってるの?」

「わかりやすいよ。二人は。告白しないの?」

「私が告白したら研磨はきっと受け入れて番になってくれる。でも同情とか、そう言うので研磨の一生を縛りたくない。」

目を伏せれば赤葦くんはまさか、と問いかけた。

「もう一生治らないことを覚悟してる?」

「・・・うん」

もう私は決めてしまった。長い年月を一人で過ごす寂しさも、友人が、家族が、好きな人が自分より先に年老いて死んでしまうことも。高校を卒業したら研磨達から離れることも。

誰かに迷惑をかけて、好きな人を縛り付けてしまうくらいなら一人で死んだように永遠を生きる方がマシだ。




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