「ううう、ヒリヒリする・・・」

真っ赤になった自分の腕をさする。いくら涼しい季節になってきたからといって日が照らないわけではない。外出には日傘をさしていても火傷のような痛みを伴うようになったため、最近では必要最低限しか外に出ないようになった。

「夏くらいからナマエちゃん肌白くなってきたよな普通逆だろ?」

首を傾げる夜久先輩に最近女子力意識してるんです!と言うと、この前完全装備だったもんな、と笑われた。
学校に着くとすぐに水に焼けた部分をつけ、化粧水を塗り込むナマエは女子力を意識しているにしても少し異常なくらいだったが、バレー部には男子しかいないということもあり、それを指摘する者はいなかった。日焼け止めをこまめに塗り直さないといけないことは正直面倒臭いのだが、そのおかげで例年の夏に比べると断然肌が白いことには感謝するべきだろう。









インターハイが終わり三年生の先輩たちは春高まで残ることはなかった。てつろう達二年生が部活を仕切るようになってから以前と比べて部内の雰囲気が良くなったように感じるのは気のせいではないと思う。一応可愛がられていたナマエからしても今の方が気が楽で良い。

「ほらー、一年、ナマエがモップかけようとしてるぞー」

「あ!!!ミョウジさん!俺がやるって!」

こっそりと持ち出していたモップを山本に取られたナマエは口を尖らせるがナマエの体が弱いと思っている山本は譲らないし、福永もいつの間にかもう一つのモップを持ち出している。それじゃあ飲み物を片付けるか、とカゴの方へ向かうとてつろうが一度重さをチェックして許可を出す。部活終わりなんだからスクイズボトルの中身は空であることは明らかなのに。

「ちょっとてつろう!チェックとかわざわざしなくていいから着替えてきなよ!」

「いいえ!ナマエは無茶をするからこのくらいしないといけないんですぅ!」

「海先輩からも何か言ってください!」

「ごめん、ナマエちゃんは女の子なんだから部員に頼りな、ね?」

唯一自分の意見を聞いてくれるかもと思われた海先輩まで練習で使ったゼッケンを集めて洗濯機まで行こうとしている。夏休みを終えていよいよマネージャーの仕事がなくなってきた。三年生の先輩達がいなくなってより一層強まったてつろうの過保護は他の部員達にまで感染していた。

「ナマエちゃんはそこで死んでる研磨の世話してやって!」

夜久先輩の指さす方向には床に倒れ込んでいる研磨がいる。ピクリとも動かない。

「あー・・・。今日練習試合ハードでしたもんね」

用意していた氷は全て溶けてしまったため、自分のタオルを水道で濡らすと研磨の額に乗せた。

「生きてる?」

「もう無理」

気怠げに瞼をあげた研磨はぐっと眉間にしわを寄せる。その姿はまるで知らない人に抱き上げられた猫のようでくすりと笑ってしまう。

「夏休みも合宿したのにもうすぐまた合宿あるし・・・それなのに今日は練習試合だし・・・」

「お疲れ様―。まぁまぁ、次の合宿は梟谷とでしょ?赤葦くんとは話せそうな感じだったじゃん」

「・・・まだ2回しか会ってないからわからないよ。それに疲れることは変わらない」

額に乗っていたタオルを取るとゆっくりと起き上がる。

「それにナマエの吸血衝動くる時期と被るよ」

ナマエ自身よりもナマエの衝動について理解している研磨はあそこでバレないように飲ませられるかな、と考えるように呟く。合宿は梟谷で行うことになっていて、マネージャーは梟谷と合わせて一つの部屋だし、研磨達はみんなで雑魚寝だ。部屋でこっそりなんてことはなかなかできないし、よその高校でウロウロするわけにもいかない。どうしようか、と二人で頭を悩ませる。

「いっそ猫又先生にだけ言って輸血パックを買って冷蔵庫貸してもらう、とか?」

「だめだよ。俺の血じゃないと治りにくいんだから」

「うーん、確かに冷蔵庫の中輸血パックだらけは不気味だよね」

「それにどうせ言うなら部屋を貸して貰えばいいじゃん」

「そうだよねー。言った方が良いかな?」

「・・・ナマエ次第じゃない?」

「言おうかな。研磨、ちょっと私先生と話してから帰るね」

「・・・待っとく」

早く帰りたいだろうに研磨はわざわざ待っていてくれるらしい。そんな優しさに胸を掴まれつつてつろうにも同じことを言いに行く。

「研磨と一緒に待っとくから。ゆっくり話してきなさい」

そうは言われたものの練習試合で疲れ切っている二人を長時間待たせるわけにはいかない。片付けが終わるなりすぐに先生の元へ駆け寄る。

「先生!ちょっといいですか!?」

「ん?」

早く二人を帰さねば!と思う勢いで猫又先生に近づくナマエの気迫に押されたのかとびくりと肩を揺らされる。

「ほお、そういうことか」

「ごめんなさい、今まで黙っていて」

「いやいや、人には秘密の一つや二つはある。野生では弱みを見せるとスキを与えてしまうっていうからなぁ」

はっはっ、と笑う猫又先生は怒ってはいないようで安心する。吸血衝動が来た時には先生の部屋を貸してもらえることになった。部員達には心配をかけたくないと言えば黙っていてくれることを約束してくれた。本当に良い監督だなと思う。


「話終わったか?」

「うん、吸血衝動がきたら部屋を貸してくれるって」

「倉庫開けたらきゃっ!ごめんなさい!なんてことにはならないわけだ」

「???」

「見つからないようにってなったら倉庫かどこかに隠れて血を吸うってことでしょ。そうなったら勘違いされるってことイロイロと」

「・・・あっ」

確かに男女二人で倉庫にこもっていたらあやしいと思う人も出てくるのかもしれない。そういえば以前運動部の倉庫で男女がイチャイチャしていて部活動停止になった部もあると聞いた。

「なーに?意識しちゃったのー?」

赤く染まったナマエの頬をてつろうが突く。ぷくっと膨れていく頬を突くことを楽しんでいると研磨が不機嫌丸出しな声で早く帰ろうと止める。
これ幸いとてつろうの指から逃げ出して研磨の腕にしがみつく。

「む・・・俺が悪者みたいじゃん」

「てつろうは悪者がお似合いですぅ」

体育館の外に出るとジャージに日傘というあまり見ることのない組み合わせで歩く。結構ダサくて恥ずかしのだが火傷をするよりはマシだ。日焼けの怖さを知ったナマエはそんな完全防備だけでは物足りず黒尾のことまで盾にして歩いた。黒尾もなるべくナマエが影になるようにして隣にいる。普段なら研磨はその横でゲームをしながら歩いて黒尾に注意されるのだが今日は疲れているらしく手には何も持っていない。

「本当に疲れたんだね・・・」

「だからそう言ってるじゃん」

研磨は自分の疲れ具合が帰り道にゲームをするかしないかで判断されたことに不機嫌になった。

「ごめん研磨―。もう今日は早く寝な?帰ってからゲームしたらだめだからね!」

「無理だよ今日は・・・」

今目を瞑ったらそのまま寝れそう・・・と呟いた研磨に私も、と同意する。

「え。ちょっと二人とも寝ちゃったら流石に俺も運べないからね?」

慌て出すてつろうに寝るわけないじゃーんと笑うナマエだが前科がある。ふらふらと危ない足取りで歩く研磨と前科のあるナマエと歩く黒尾はその日怯えながら帰った。




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