「ナマエちゃん、はい」
「ありがとうございます」

氷見先輩がどんどん皿に焼肉を入れてくれる。後輩だし、私がやります、と言っても全員に氷見にやらせておけと言われるし、氷見先輩は嬉しそうだったから、私にできることはただ自分の皿の肉を消費することくらいだった。右隣に座る師匠はずっと口をもぐもぐと動かしている。

「師匠は今何を食べているんですか?」
「ぅぐっ、ぎ、ギアラだよ」
「美味しいですか?」
「・・・・噛みきれない」

私がいきなり声をかけたせいか師匠の喉からはごくんと飲み込んだ音が聞こえた。喉に詰まらせるといけないから師匠の口に何か入っているときには話しかけないようにしよう。
視線を前に向けると綺麗な所作で黙々と食べる二宮と楽しそうにニコニコしてる犬飼。二宮さんジンジャーエール飲んでる・・・・。自分のコップに入っている烏龍茶を眺める。

「・・・・ココアはない」
「へ!?あ、や、私ご飯の時までココアは飲みませんよ?」
「・・・・そうか」

作戦室でココアを飲みすぎたせいか、ココアを飲んでいるイメージが強いらしい。確かにココアやミルクティなどの甘いものが好きだが、家では麦茶か水だ。
減らすたびに皿に入ってくる肉を食べるのが少しキツくなり氷見にストップをかけた。

「ナマエちゃんって高校どこ?」
「先輩達と一緒です!」
「えっ!みたことないよ!?」

ボーダー隊員は目立つ。しかしナマエは隊員であることを公表していなかった。だからなのかよく任務で休むナマエを周りは体が弱いのだと思っているらしく、元気いっぱいなのに体育なんかはほとんど強制的に端の方に行かされる。私も暴れ回りたいのに、と不満を込めて呟けば、確かにナマエちゃん儚い印象があるかも、と言われた。

「周りに言いたくないの?」
「そういうわけじゃないんですけど・・・・わざわざ言わなくてもいいなぁって・・・」

言わなくても病気で休んでいると思われているナマエはノートを貸してもらえるし、何の問題もなかった。・・・・とは言っても騙しているわけではないが少し罪悪感があった。今更言うのもなー・・・・と呟けば、なるほどと犬飼は辻を見つめる。
ごくりと今度は自分の意思で肉を飲み込んだ辻も何かを考え込み、ナマエは首を傾げた。







「ミョウジさん!」

聴き慣れた師匠の声。しかしそこは学校で、師匠に会いたすぎて幻聴でも聞こえたのかと思っていた。

「ちょ、ナマエっ!どういうこと!?辻先輩が呼んでる!」

ざわりと教室がざわめく。辻は居心地が悪く興味津々の女子の視線から逃れるように廊下に引っ込んだ。慌ててナマエが向かうと、だらだらと汗を流している。

「し、師匠!どうしたんですか?」
「きょ、今日一緒に・・・・か、帰ろ」

嫌だったら、大丈夫・・・・と辻がかける保険は断れるようなものではない。誘った本人はそれに気づいていないけれどナマエはもとより断る気はなかったため勢いよく頷く。



翌日、ナマエはボーダー隊員で辻新之助と付き合っているという噂が流れ、慌てて訂正しようとしたが、本人に止められてしまい、肯定も否定もしない形になった。
ナマエは特に好きな人がいるわけでもなく、華奢で儚い女の子という夢を見た男に告白をされなくなったため、助かった・・・と息を吐いた。その代わり、辻との馴れ初めや、進展を聞かれるようになったことには困り、休み時間は教室から退避するようになった。学校でも避難先で自然と辻といる時間が増えて、噂に拍車をかけていることにナマエは気付かなかった。




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