――カザーブ村、アリシアの家。
魔王討伐の旅と雖も体が資本、休息は必要だ。“休み”となれば、カザーブへ来るのが、一行の恒例になっているのである。
無論、ライとアリシアが親友であることへの、ささやかな気遣いなわけだが――。
「こないださー……」
「うん、うん。それで?」
……ぴったりと体を寄せ合って、取り留めの無い話題を持ち出しては、笑い合う。 その仲の良さときたら、万人を以てしても立ち入れないくらいの仲の良さである。
因みに、ライとアリシアが同性である事実をニノ以外は知らない。その為、二人の仲の良さは“恋人同士”としか見えない。
「おい、邪魔すんのも野暮じゃねぇか? あいつら、二人っきりにしてやろうぜ」
そう言ったのは、ガイラス。
粗暴なナリだが、意外にも気遣い屋さんだ。声を潜めながら他の二人へ提案した。
「外行っても、ここ何もねぇじゃん。構わなきゃいいんじゃね?」
もしすれば“気を遣う”という言葉を知らないかもしれないニノ。立つのも面倒なのか、ソファーから少しも動かずにいる。
「ガイラスの言う通り、二人にしてやろうではないか。……出るぞ」
周りの視線も気に止めず、イチャイチャと引っ付くライとアリシア。それから目を逸らしたリョウが、何を思ったかはポーカーフェイスな為、読み取る事は叶わない。
文句を垂れるニノの背中を責っ付いて、外へと追いやる。自身も戸口を潜る、その刹那たる間。斜眼で、二人に目を馳せた。
いつもなら、ライの隣にいるのはリョウだ。またライの話を聞いてやるのもリョウの役目である。しかし、此処へ着たときに限っては完全にその座を奪われてしまう。
少しだけ寂しいような、それでいて、何処か苛立ちにも近い気分を味わいながら――リョウは、静かに戸口を潜るのだった。
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