小説(雷霆) | ナノ
夢を告げる老人(4/4)
 
 内容は、日々の生活を記した取り留めもない文章が、大半を占めている。終わりに差し掛かった時、一旦、捲る指を止めた。

「“永い研究の末、仕組みの簡単な鍵穴ならば、開錠できる鍵を造る事に成功した。
 アリアハン国では勇者様が旅立つと専らの噂だが、私が造りあげた盗賊の鍵を、是非とも役立てて頂きたいものだ”……か」

 ライが驚いたのは、言うまでもない。

 見ず知らずの、しかも何年も前に死んだ人物が、自分の事を語っているのだから。

 リョウは静かに振ると、日記を引き出しに戻す。溜め息を一つ、そして展望窓からアリアハンの方へと、視線を馳せている。

「多分、“勇者様”はオルテガ殿の事だ。
 それほど永い間、待っていたんだね」

 ライは、手渡された“盗賊の鍵”を見つめながら「自分の為の物じゃないから」と呟き、リョウの手へ鍵を突っ返してきた。

「いや、貰ってあげよう。君も“勇者様”だろ? それが、御仁の望みな筈だから」

 そう、言った後。リョウはベッドの横に膝をつき、遺骨に手を合わせたのだった。
 


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