小説(雷霆) | ナノ
貴婦人と盗賊団(2/31)
 
 大陸、北端まで広がる領土、肥沃な大地に気候は温暖。門を抜ければ、魔物が蔓延る外界とを遮断する高壁で囲まれている。

 旅の扉を抜けた先、訪れたロマリア国は魔王の驚異が嘘と思える程、平和だった。

「先ずは国王陛下に御挨拶しなくてはな」

 リョウがそう提案を掲げたものの……。

 一方の仲間はといえば、ガイラスは酒場の前で立ち止まり、ライは落ち着きなく市場を彷徨っている。ニノは――ナンパだ。

「君達、観光に来た訳では無いんだぞ!」

「ご、ごめんなさい。アリアハンでは見ない光景だったから、つい……。怒った?」

 叱られて悄げるライを見て、頭を撫でてやりながらも、リョウは溜め息を吐いた。

 “先が思いやられる”と言いたげだ。

「ちょっとくれぇ良いじゃねぇか」

「ったく、なんだよ。もうちょいで上手く行きそうだったのによ」

「君らは……まあ、いい。取り敢えず拝顔が先だ。ちゃんと親書は持っているな?」

「ちょっと待って。あ、はいっ」

 文句の尽きない兄弟は無視して、ライから受け取った親書を確認した。謁見の際にアリアハン王から、渡されたものである。

 例え、勇者と雖も一般人。苟も国王陛下に他国の人間が拝顔を果たすのは難しい。

 親書が無ければ、叶わない事であった。
 


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