大陸、北端まで広がる領土、肥沃な大地に気候は温暖。門を抜ければ、魔物が蔓延る外界とを遮断する高壁で囲まれている。
旅の扉を抜けた先、訪れたロマリア国は魔王の驚異が嘘と思える程、平和だった。
「先ずは国王陛下に御挨拶しなくてはな」
リョウがそう提案を掲げたものの……。
一方の仲間はといえば、ガイラスは酒場の前で立ち止まり、ライは落ち着きなく市場を彷徨っている。ニノは――ナンパだ。
「君達、観光に来た訳では無いんだぞ!」
「ご、ごめんなさい。アリアハンでは見ない光景だったから、つい……。怒った?」
叱られて悄げるライを見て、頭を撫でてやりながらも、リョウは溜め息を吐いた。
“先が思いやられる”と言いたげだ。
「ちょっとくれぇ良いじゃねぇか」
「ったく、なんだよ。もうちょいで上手く行きそうだったのによ」
「君らは……まあ、いい。取り敢えず拝顔が先だ。ちゃんと親書は持っているな?」
「ちょっと待って。あ、はいっ」
文句の尽きない兄弟は無視して、ライから受け取った親書を確認した。謁見の際にアリアハン王から、渡されたものである。
例え、勇者と雖も一般人。苟も国王陛下に他国の人間が拝顔を果たすのは難しい。
親書が無ければ、叶わない事であった。 |