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闇を纏う影(25/25)
 
(僕があの時、回復魔法を使えてれば、誰も怪我せずに済んだのに)

 沈黙の中、自分自身を振り返っていた。

 仲間が見せる確固たる信念も無く勇者になったライ。ライにとって“勇者”とは、支援金を得るための手段に過ぎなかった。

 “討伐など形だけしていればいい”と。

 そう、考えていた。それ故に、今の今まで、魔法へ真剣に向き合えなかったのだ。

 だが、その甘えが仲間を危険に晒した。

(僕が勇者の資格がなくても、そんなことは関係なく、敵は襲ってくるんだ)

 ……耳に残るアゾナンゴビーの言葉を反芻しながら、自分の存在が大いなる歴史の渦に、飲まれ始めていることを実感する。

(僕と一緒にいるみんなも、危険に遭う)

 “今のままの無力な自分なら”

 自分の手に視線を向けると、身体の奥から、自分に対しての怒りと羞恥が湧いた。

(嫌だ、僕の所為で誰かを失いたくない)

 そう思ったライの心情には、微かで頼りないほど、小さなものだったが魔王に対峙する“勇気”が芽生えはじめていた――。
 


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