真っ暗な海の底のような、凍える恐怖のなかで、縋るように探し求めたのは本当は光だった。
君じゃなかった。
口では君を探したといった。
でも体は光だった。


暗いなかで、君を探しても余計に不安が募るばかりだった。
ぼくは妄想癖。


そんな嘘に君は気づかなくて、満足そうに笑っていた。(いや、本当はわかっていたのかもしれない)


そんな君の必需品は目薬で、ぼくは鉛筆だった。
鉛筆は便利だった。ぼくは鉛筆が好きだった。
彼女はドライアイだからと言って持ち歩いていたけれど、ぼくが嘘ついた仕返しのつもりかもしれないけど、全然ドライアイじゃなくて、嘘つかれた。


都合の悪いときは巧みに目薬を使って目に涙を溜めていた。
今思うと何がしたかったのかまったく意味ふめい。
それで何人もの馬鹿な男を騙して落としていた。本当に馬鹿だ。


あんなに意味がわからなくて、ぼくをあいしていたかわからないのに、君のことばっかり考える。
今になって。
ぼくの頭はふわふわしていて、彼女のことだけが頭によぎって、彼女がぼくの好きな鉛筆を持っていて、ぼくの上に乗って、それで顔が近くて、キスしてくれていて、鉛筆がぼくの喉をガリガリガリガリガリガリしてぼくは大好きな彼女に手を伸ばしたけどつかめなくて、(彼女は帰って来ないんだ)世界でいちばんしわあせに死んで行きました。


彼女はいつ帰って来るんだろう


2011


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