プランタントラクター


「ねえ真琴、本当に千昭くんと付き合ってないんだよね?」


まただ。
クラスメイトで友達の友梨は、最近よくこの手の質問をしてくる。
私はそのたびに憂鬱になる。
少し、疲れた。


「付き合ってないよ」
「本当に?」
「もうしつこいなあ…友梨最近毎日このことばっか、呆れるよ」
「ごめんごめん。だって気になるんだもの。…これからは気を付けるよ」


今口ではそう言っているけど、多分きっと明日には忘れてるだろう。
一体何がそんなに心配なのやら。
私と千昭がそうゆう関係じゃないってことぐらい、見ればわかるだろうに。


「あ、チャイム」
「本当だ。じゃあ、また後でね」
「うん」

適当に言葉を返す。
また後でって、またああいうことを話しにくるのか。嫌だなあ。



最近の友梨はおかしい。
毎日私が千昭と付き合ってるのかどうか聞いてくるし、話すことも千昭のことばっか。
付き合ってないって言ってるんだからもういいではないか。何をそんなに確認しているのか。
そんなに千昭のことばっかり話すなら、告白でもしたらいいのに。


「………」

やっぱり、それは嫌かも。
別に恋愛感情で千昭が好きなわけじゃない。だけど、千昭が友梨と付き合うってことを想像したら、すごく嫌な気分になった。
それに、三人で野球も出来なくなるかもしれない。やっぱりそれは嫌なことだった。


「……はあ」

心が、もやもやする。
複雑。
何で私はこんなに深く考えてるんだ。何でこんなに悩んでるんだ。いつもらしくない。あいつのせいだ。


「……野、紺野!」
「っ…いったあ…、!?」


頭を何かで叩かれて、体が一気に現実に戻される。
あれ?私、何してたんだっけ?


「お前教師を無視するとはいい度胸だな……」
担当の先生が顔を引きつらせている。やばい、怒られる…っ!



「真琴が寝ないなんて珍しくね?」


前方から降りかかる聞きなれた声。
むかつくぐらい明るいオレンジ頭。
他人事のように放たれる言葉。


「…うるさい!」
「うわ、真琴怒るなって」


楽しそうな声。
人の気も知らないで、むかつく奴。
さっきまで考えてたのが馬鹿馬鹿しくなるくらいに、笑う君。
もう、どうでもよくなった。
私は千昭と功介と一緒にいられればそれでいいや。
また明日には多分友梨に同じこと聞かれるんだろうけど、答えるのももうやめる。
私は三人でずっと一緒にいたい。


「紺野、寝てなかったならここわかるよな?」
ニヒルな笑みで問いつめてくる先生
もちろん、わかるわけない。
だけど今の私は気分がいいから答えちゃう。


君の楽しげな姿を横目で見ながら。




2010~806

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