重苦しい夜の闇を身に纏い、今日もこの真っ暗な先を歩き続ける。終わりはあるのだろうか?…そんなこと、考えたって答えなど出てきやしない。


「名前ちゃん、大丈夫?」

この静かな森に響き渡るのは荒い吐息と、2人分の足音。人に見つからないように、かつ素早く動くには、この時間帯とこの場所が好都合だった。速く、一刻も速く。土方さん達に追いつかなきゃいけない。そんな思いが頭の中に渦巻く。


「ぐぁあっ…あ゙ぁ…」

そんな中、私の手を握っていた沖田さんが地面に膝をつき、胸を押さえる。いつの間にか変わった白い髪に赤い瞳が私を見据える。苦しそうに呻く姿は己にいるもう一人の自分と戦っているようだ。そう、沖田さんは、私を守るために羅刹になった。

このまま血を与えなければ彼は狂うことはない。だけど、このまま苦しそうな彼を黙って見ているのも、これほど残酷なことはないだろう。

腰に差してある小刀で手首に薄く切れ目をいれた。

「沖田さん、飲んでください」

ただの普通の人間の血には、傷を治すなんて効果はなく、ただの気の紛らわしだが、それでも、少しでも楽になってくれればよかった。


「名前ちゃん…ごめん…ごめんね…」

いつも血を飲んだ後、沖田さんは私に何度も謝る。泣きそうな顔で子どものように私にすがりつく。

笑顔が見たいのに、それをさせる術はなく、こうして今日もまた互いを苦しめる。
ねぇ、沖田さん。
私は貴方の笑顔が見たいのです。何をすれば、貴方は笑ってくれるのですか…?







朝、目が醒めて、隣を見るとまだ沖田さんは寝ていた。当たり前だ。羅刹は昼間は寝て、夜になったら活動するのだから。

沖田さんに血を飲ませた後、彼の体調が優れなくて昨日はそのまま寝た。今日はその分進まなきゃならない。

今日もまた、終わりは見えない。逆に遠ざかるように思えるのは気のせいだろうか?


ねぇ、沖田さん。
私は貴方と日の光の下を歩きたいです。手を繋いで、笑いあって。昔のように。

それは叶わない夢だとしても、私は願い続けます。


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