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部活が終わっていつものように部員の皆に別れを告げて学校を後にする。夏休み中の部活は午前中で終わることが多くて、昼間に毎日汗をかきながら帰宅している。そんな帰り道にはポツンと公園があり、以前休憩がてらに寄ったら可愛い猫と出逢った。その猫は少し変わっていて、"ニャー"とかじゃなくて"ほぁら〜"と鳴く。人懐っこくて撫でてあげると嬉しそうにすり寄ってくる。最近では猫ちゃんに会いに行くのが日課となっている。


「あ!こんにちは、猫ちゃん」
「ほぁら〜」
「顔覚えてくれたんだね〜」


いつものように撫でてあげると、猫ちゃんは急に公園から出ていってしまった。不思議に思って公園から出て猫ちゃんの方を見れば、後ろに振り返り私がついてくるのを確認するとまた歩き出してしまった。どこかに案内してくれるのかな?偶然にもその方向は私の家あるので大人しくついて行ってみることにした。


「それにしても暑いなぁ〜…。どこまで行くのー?」


猫ちゃんはとっくの昔に私の家を通りすぎ、まだまだ歩いている。帰ろうかと思ったけど、後ろを振り返る猫ちゃんの顔を見るとそんなことは出来なかった。タオルで汗を拭きながら歩いていると、急に猫ちゃんは走り出して見失ってしまった。ここまできたのにそれはないだろう。愕然として来た道を戻ろうとしたら、何かがふわりと風に乗って私の鼻を掠めた。何だか懐かしいような香りに思わず目を瞑った。


「ほぁら〜」


探していた猫ちゃんの声がして目を開けると、木造の大きな家の庭から猫ちゃんが現れた。よく見れば隣にお寺もあるようだ。どうやら猫ちゃんの家はここのようで、縁側と呼ばれる所に寝そべって気持ち良さそうに太陽の光を浴びている。その隣には蚊取り線香が置いてあり、ゆらゆらと煙を出していた。


「猫ちゃん。私、今日は帰るね」
「……………」
「あんた、誰?」


既にお昼寝モードの猫ちゃんが可愛かったので、もう少しだけ見ていようとしたら後ろから声をかけられた。バッと後ろを振り向くと、テニスバッグを肩にかけ、白いキャップを被る少年が怪訝そうにこちらを見ていた。ジリジリと照りつける太陽のせいなのか、もしくはこんな状況で焦っているのか、額から汗がツーと流れた。


「いや、あの、怪しいものではなくて…」
「どっからどうみても怪しいんだけど」
「えっと、その、」
「……………」


少年は被っているキャップを深くかぶり直して、家に入って行ってしまった。そんな彼の後ろ姿に思わず私は意味不明な言葉を投げ掛けてしまった。そんな言葉に少年は目を見開いて驚いた顔をしたけど、すぐにクスリと笑った。その横で猫ちゃんがお決まりのように「ほぁら〜」と鳴いた。



蚊取り線香に誘われて
(あんた、変わってるね)


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リョーマっていうか、カルピンだ。夏も終わるし夏っぽいのが書きたかっただけ。最後とか無理矢理終わらせた感満載 orz