好きなタイプ



ルーシィの部屋で一緒に食事を済ませたナツとハッピーは、気持ち良さそうにしてお気に入りのソファへ座り込み、何やら話を始めた。
ルーシィはそんな一人と一匹の様子を気にかけながらも本棚から一冊の本を手に取り、机の椅子に腰かける。

「オイラ、ナツに聞いてみたかったことがあるんだ。…ナツの好きなタイプってどんな女の子なの?」

ハッピーの思わぬ台詞にドキッとして、耳を傾けるルーシィ。
ナツのことだ、返ってくる言葉は予想がつく。
しかし、少なからず興味は――ある。
本に目を通しながらも意識は一人と一匹の会話へと向けられた。
意外にも考え込んでいるナツの姿が映り、変な期待をもってしまう。

「好きなたいぷ…なんだそれ?うまいのか?」

予想通りだ。
深く溜息を吐くハッピーと、少し離れている場所からルーシィも、わかっていたことだったが呆れ顔。

「違うよぉー、オイラ、女の子!って言ったでしょ?良いなぁとか可愛いなぁって思うような子、ナツにとって一番の女の子のことだよぉ!」

小さな身体のどこからこんなに大きな声が出せるのかと驚く程の叫び声が部屋中に響いた。
耳の良いナツだ、ハッピーの大声に驚きつつも、「う〜ん」と唸り両腕を胸の前で組みながらソファに凭れ掛かる。

「オレ、興味ねえし、…よくわかんねえよ」

そんなナツの発言を耳にして、先程まで静かに座っていたルーシィがゆっくりと動き出した。
ナツが寛いでいる側まで寄り、横にいる彼の相棒へと腕を伸ばす。
そっと抱きかかえてそのまま彼の隣へドサッと腰を下ろした。
一度ナツを見やってからハッピーへと口を開く。

「無理よ、ハッピー。…ナツにそんなこと聞いても無駄よ!」
「おい、無駄ってなんだよルーシィ。ひでえな、…おっ!」

ハッピーの頭を撫でながら微笑むルーシィを視界に入れ、何か閃いたように呟いた。

「ん〜そうだな、オレの“一番”で良いんだよな〜ハッピー?」

ルーシィは自分の膝の上に乗っているハッピーへとナツが問いかけていることはわかっているが、何故かナツの視線に対してじわじわと頬が熱く、赤く染まってきているように感じたのか髪で隠すように俯いた。
そんなルーシィの様子にも気づかず話を続ける。

「オレは、ルーシィ以外いねえぞ。…やっぱ、一番だよな」
「え…?」

俯きながらも耳はナツの声を聞き取る。

ナツの一番はあたし?

――いや、ナツだから違う意味よね。
でも、と理解できず、唇をキュッと噛み締めた。腕の中にいるハッピーを強く、胸に抱きしめる。
苦しそうにしていたが、ナツの次の言葉を聞き逃さないように我慢をして耐えていた。

「…だから、ルーシィはオレがすることにいつも反応が良いもんなあ。…面白ぇって、一番だって、ほめてんだぞ!」

真っ直ぐな、素直な気持ちだろう。
嬉しそうに二カっと笑うナツの顔。

――この顔見たら、あたし。

ナツの一番。
期待してはいけないと心に言い聞かせていても頬が緩み、赤らむ自分が恥ずかしくて情けない。

「あぁ…そういうこと、それはどうも」

口を尖らして言う、ルーシィの態度に疑問を感じたからか、もう一度ゆっくり伝えるように――。

「うれしくねえのか?オレにとって一番の女はルーシィだって、言ってんだぞ!」
「はいはい…もう、何度も言わなくてもわかったわよ。あたしは、ナツにとって“一番おもしろい女”ってこと、だけなんでしょ!?」

ナツにぶつけるように言い放ち、勢いよく立ち上がった。
抱きしめているハッピーを再び座らせ、そろそろ片付けしなくちゃとその場から離れて行く。

「ほめてんのに、なんでルーシィ怒んだよ。ハッピーが言う、好きなたいぷはよくわかんねえけど、…オレの一番って聞かれたらルーシィだって、答えてんのによお」

ガシガシと桜色の頭を掻いてから、カチャカチャと食器音が聞こえてくる方へと無意識に身体を動かしていた。



どうして、ナツもルーシィもこうなるんだろ?

オイラは気づくのに、本人同士が鈍感すぎるんだ。
いつになったら“でぇきてぇるぅ”って言えるのかな。

ルーシィから解放された身体を丸くしながら、心の中でそう呟いていた。








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