★仲直り(二人の想いの続編)
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ルーシィから『ナツなんて、大嫌い!!』と言われたナツは、考えていても何も変わらないからとルーシィの部屋へ向かっていた。
相棒の青い猫、ハッピーも連れて行くつもりだったが、ギルドや外を探しても見当たらない。
どこへ行ったのだろうか。

ルーシィを怒らせた原因もわからず、とにかく許してもらえるように何度も謝ろうと心に決めて、ひたすら走っていた。

窓の外から部屋の中を覗く、ナツの姿が見える。

「ん〜ルーシィ、…いるよな?」

そっと部屋の中へ足を踏み込んだ。
普段、ルーシィの部屋へ来た時は、迷わず指定席とでも言うように決まって、お気に入りのソファへと身を委ねるナツだったが、今はその場所にルーシィが横たわり眠っている。

ナツは傍に寄り、胡坐をかきながら様子を窺っていた。
ルーシィの左手はソファの端をギュッと握ったまま、苦しそうな表情をしていた為、どうしたのだろうかと気になりながら、もっとよく見たいと顔を近づけた。

その瞬間、閉じているルーシィの瞳から涙が溢れて頬を濡らす。
そのまま流れ、ソファへと零れ落ちた。
丸いシミが点々といくつもできていることに気づき、

(…泣いてたのか?)

そう感じた時、ルーシィの唇がゆっくりと開き、動いているのが目に留まった。
囁くような小さな声であったが、鋭い耳の持ち主…火竜には簡単に届いてしまう。

『…ナ、ツ…行かないで。…行っちゃ、やだ』

明らかに寝言だとわかる。

しかし、先程“大嫌い”と言われたナツは、聞き間違いではないかと自分の耳を疑ったが、確かに『ナツ』と耳に入ってきた。
ルーシィの傍に身を寄せ、ソファを握っていた左手を強く握りしめる。

(…ルーシィ?オレは、どこにも行かねえ…行かねえぞ!)

ルーシィは、左手から伝わってくる温もりを感じとったのか、軽く握り返して微笑んでいるように見えた。
その表情に安堵したのかナツの口が開く。

「ルーシィ、悪かった。…許してくれっか?怒ってたのに、…なんで泣いてんだよ。泣くのは、オレの方だろ?…だいきらいって言われたんだぞ」

ルーシィが正反対の気持ちをぶつけたことをナツはもちろん知らない、理解もできていない。

けれど“キライ”というストレートな言葉はいくら鈍感なナツにだって伝わっている。

青いリボンが良く似合う、ルーシィの髪に触れたくなり手を伸ばした。
サラサラで、ほのかにシャンプーの香りがして。
いつも感じている香りだが、何故か今日は特別な香りだった。

髪を撫でるナツの手に、ピクッと反応したルーシィ。

「…ナ、ツ?」

目の前にナツがいる、そのことに驚きもせず名前を呼んだ後、両目を擦り俯いていた。

「…ルーシィ、悪かった。…だから、「もう、良いわよ。それよりナツ、隣に座って」」

ナツの言葉を遮り、横になっていた身体を起こして空いている自分の右隣に座らせた。
やはり、いつもと違うルーシィの言動に戸惑いながらも素直に従うナツ。

「…今ね、怖い夢を見たのよ、正夢になったら、やだな。…だから、素直になろうって、…決めた」
「へっ?」

ルーシィが目を伏せたかと思った途端、左腕に柔らかい感触が伝わってきた。
細い両腕がナツの腕に絡み、身体が傾く。
ルーシィの方へと引き寄せられた。

「おわっ!」
「…あたし、嘘ついたんだ、…ごめん。本当は、嫌いじゃない、…好き、よ」

語尾だけモゴモゴと恥ずかしそうにして、ナツの腕に顔を付けて、見られないようにしているルーシィ。

「ん?…なんだって?」
「…っ!?…聞こえてるくせに!もう言わないわよ。…ナツのバカ」

せっかく素直な気持ちを言えたのに、と叫びながらナツの腕を離して立ち上がろうとしたが、ナツは慌ててその腕を掴み、止めた。

「だいきらいより良いぞ!バカの方が」
「な、何言って…、ちょ、ちょっと離してよ…、ナツ」

掴まれている腕を左右に振り、抵抗するルーシィを余所に余裕の顔を見せている。

「…隣にいろよ、ルーシィ」
「えっ…、きゃぁ!?」

ナツは掴んでいる腕をそのまま自分の方へと引き寄せた。

「もう、痛いわよ。ナツってば、…ってナツ?」

横で、はぁ〜と珍しく深い溜息を吐いているナツを凝視し、驚き顔。

「どうしたの?ナツが、溜息だなんて…らしくない」
「あー…まあな、オレにしては色んなこと考えちまったからな、ルーシィに許してもらえっかな…てさ、なんか安心した」

そう答えるとニカッと笑顔を見せる。

「そ、…そう。それは、良かったわね」

ナツの笑顔には弱い、これ以上真っ赤な顔を見せるのは恥ずかしいからか、そっと彼から目を逸らした。

「ん?…なんだよ。ルーシィこっち見ろよ!…やっぱ変な奴だよな、おまえ」
「な!?…もう、また言った。…全然、反省してないじゃないのよ!」

キーッとルーシィらしい声が耳に響く。その反応が嬉しいナツ。

「反省してっぞ!…よくわかんねえけど。でもよ、オレこれからもずっと、ルーシィと一緒に笑ってたいって思うし、グレイとかなら別に良いけど、ルーシィだけにはきらわれたくねえよ。きらわれるのは…もう、いやだ」

いつも強気で何を考えているのか理解できないナツだが、今、目の前にいるその人はツリ目も下がり、何故かギュッと抱きしめたいと思ってしまうほど、小さな子供のような表情をして、自分を見つめてくる。


ルーシィは無意識にナツの方へと腕を伸ばし、桜色をしたツンツン頭を撫でていた。
髪に触れるだけではもの足りず、ふと目に入った首元のマフラーに手をかけ、グイッと引き寄せる。

「…おっ!?」




“チュッ”




温かくて柔らかい初めての感触を、頬に感じたナツは驚きを隠せない顔をして、ルーシィへと視線を送る。

そっと離れ、目を閉じていたルーシィの瞼がゆっくりと上がり、上目づかいでボソッと呟いた。

『仲直りの証…』

お互い頬を染めて笑い合いながら、いつのまにか自然と距離が縮まり、寄り添っているように映る。





窓の外では口元を両手で覆い、グフフ…、と笑いを堪えているハッピーの姿が見えた。



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