★居心地の良い場所
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報酬を減らされず無事に仕事を終えたルーシィは、自分の家へと向かう。
「ただいまー」
「「おかえり!」」
予想通りの展開がこれから始まる。
「だから、不法侵入するなぁー!!」
「良いじゃんかよ、ケチケチすんなよな」
「あいっ!…ルーシィ、おなか減ったよぉ」
数えてもわからない。
これで何度目の不法侵入であろうか?
ある意味、合い言葉のように感じるほど自然な会話になっていると思ってしまう。
ルーシィが困るようなことを言ったり、行動して怒らせても結局最後には、笑って許してくれるルーシィがいるからなのか、
居心地の良い、安心できる場所。
それがルーシィの部屋なのだ。
この居場所がナツも、もちろんハッピーも大好きであった。
すると、突然ルーシィから何やら提案されてしまう。
「そんなにあたしの部屋が好きなら、ナツとハッピーはここに住んだら良いわよ!
その代わりに、ナツ達の家にあたしが住むわ。
家賃は払わなくて済むから助かるし、ナツ達も不法侵入するくらい好きな家に住めるんだもの、嬉しいわよね。…うん、我ながらナイスアイデア、よね!」
ふふっと口元に両手を添えて笑っている。
ルーシィの提案に一人と一匹は黙り込んでしまった。
「実は、…前にね、ちょっと理由あって二人の家、見かけたのよねぇ。その時にナツ達の家、気に入っちゃって。なんか可愛いし、掃除すればあたしでも住めそうだったし…」
「あい?…住めそうだったって、なんでルーシィわかるの?家の中見てないのに」
ハッピーが首を傾げて、ルーシィの顔を覗き込んでくる。
「えっ…いや、そうかなぁって思っただけよ、そんな目で見ないでよね!」
ハッピーから視線を外し、ナツの方へと目を向けた。
「ナツ?…どうしたの」
頬杖をつきながら何やら考えている様子だった。
(ん〜…さすがのナツでもあたしの提案に驚いたのかしらね。自分達の家と交換だなんて嫌よね。今回は私の勝ちかしらね〜)
などと心の中で呟き、ナツには見えないように小さくガッツポーズをしながら、一人の世界に入り込んでいたルーシィは、
背後から近づいてきていたその人に気づかず、不意に名前を呼ばれて振り向いた。
「えっ…、ちょっとナツ、どうしたわけ!?恥ずかしいから、離れてよ…」
いきなり腕を掴まれ、ギュッと抱きしめられたのだ。
顔を真っ赤にしながら身動ぎするが、一向に力は緩まないナツの両腕。
「…ルーシィ、そんなにオレ達といるのが嫌なのか?
ルーシィの部屋が好きってわけじゃねえよ!ルーシィが居るから来てんだぞ。なんで、わかんねえんだよ!!」
首元に顔を擦り合わせてくるナツに戸惑いながらも、そうだったの?と頬を緩ませたが、素直になれないルーシィはわかるわけないでしょと強く言い切ったのであった。
「…これじゃ、またあたしの負けじゃない。結局こうなっちゃうのよね…」
二人の頭上では嬉しそうにふわふわと飛びながら、見守っているハッピーの笑顔が見えた。
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