★側にいてほしい人は…? (ナツルーリサ)
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「ナツー!一緒に仕事行かない?」

エドラスから戻ってきたリサーナから仕事に誘われた。

「おう!ん?…つーか、オレ達だけでか?」

ギルド内を見渡してから、再びリサーナに視線を向ける。

「うん、ハッピーはウエンディ達と一緒に出掛けたし、――駄目?」
「…いあ、ダメじゃねえけど、――ルー」
「ルーシィ?」

名前を言い掛けたが、リサーナの口から先に言われてしまった。
ルーシィがいつも座っているカウンター席の方へと目を向けるナツ、その彼の様子を気にしながらギルドを一通り見渡す。


「…まだ、来ていないみたいだけど、ミラ姉に伝えてもらえば大丈夫だよ。…行こうよ!ナツ。久々だし」
「あー…そうだけどよ」

楽しそうなリサーナの横で、意外にも何故か渋っている様子を見せるナツであった。

「今回だけだし、二人だけでも大丈夫だよ。ナツって、そんなに心配性だったっけ?」
「はっ?…オレは、ルーシィのことなんか心配してねえぞ!」

キッと両目を吊り上げ、ムキになって声を張り上げた。

「…ルーシィ、とは言ってないけどなぁ、…私。じゃOKね、ミラ姉のところに行って来るー」

クルッとナツに背を向けて、カウンターの方へ走って行く。

「なんだよ、リサーナの奴…」

彼女の何気ない一言もナツには理解できていない。
そして、無意識にギルドの出入り口の方へ視線を向けている事を本人でさえ、気づいていなかった。







ミラジェーンに許可をもらい、ギルドを後にする二人。

「行ってきま〜す!」
「……」

隣を歩くナツの横顔をそっと覗き見ながら、口を開いた。

「…ルーシィの家、寄って行く?」

思わぬ言葉に目を丸くし、驚き顔のナツ。

「…行きたいって、顔に書いてあるよ」
「へっ?…そ、んなわけねえだろ」

否定しながらも顔を手で覆って擦っている。
ナツは言葉をそのまま素直に受け取る為、からかい甲斐があった。

「アハハ…ナツをからかうとおもしろ〜い」
「…うっせーよ!」

両腕を胸の前で組み、顎を上げてリサーナから目線を外した。
すると、不意に背後から聞き慣れた声が耳に入る。



「あれ、ナツと、…リサーナ?」


ルーシィだ。
ギルドへ向かう途中だろう。

「…珍しいね。二人で出掛けるの?」
「うん、久しぶりにナツと仕事したいと思って…ルーシィも一緒に行く?」

嬉しそうな表情を見せるリサーナの気持ちを察して、顔を左右に振る。

「…ううん、あたしは遠慮するわ。…気をつけてね、行ってらっしゃい」

右手を振って見送ろうと腕を上げようとした瞬間、

「来んのがおせえよ、ルーシィ。…おまえも一緒に行くんだぞ!!」

上げようとした腕を掴まれて、離そうとしないナツ。

「え?…ちょっ、ナツ!?」

困惑気味なルーシィを余所に言葉を続ける。

「いつもは早くギルドに来んのに。今日に限ってなんで遅ぇんだよ!」
「…なっ、遅いって!?…あたしだって色々あるのよ!…ナツみたいに、暇じゃないの!!」
「おまっ!?…オレだって暇じゃねえぞ!」

ブツブツと言いながら掴んでいる腕に力を込めて、ルーシィが離れないように引き寄せる。

「えっ、ちょっと…ナツってば!?…ってか腕痛い。離し――」
「はなさねえ!」

ルーシィの言葉に重ねて、強く言い切った。


そんな二人の姿を目にしながら、

「私って、お邪魔?――ナツは相変わらず鈍感だな…」

と小さく呟くリサーナは、溜め息を吐いてその場から離れた。ギルドへ戻るようだ。






「…ナツ?」

いつもと様子がおかしいと感じ、ゆっくり見上げてナツと目線を合わせた。

「ん〜ち、近い!…ナツ、リサーナが待ってるでしょ。行ってきなさいよ!……ってあれ、いないわよ?…もう、ナツのバカー!!リサーナ怒って帰っちゃったんじゃないの!?」

いつの間にか姿が見えなくなっていた彼女の存在に今頃、気づいた二人。

「おっ!?…マジか、やべえ」

ん〜っと、顎に指を添えて少し考えながら――

「まあ…しょうがねえだろ」

さすがナツだ。…もう開き直っている。

「やっぱおまえがいねえと、つまんねえもん!」

両腕を頭の後ろで組み、背を向けた。

「ナツ…」

また無意識に言ってるんだから困ったものよねと、心の中で呟きながら先を歩いている彼の隣へ歩み寄って行った。







「ギルドへ戻るんでしょ?…あたしも行くわ」
「…違ぇぞ、ギルドじゃねえ」
「じゃ、どこ行くのよ?」
「そんなん、…ルーシィん家だろ?」

当たり前のように言い放ち、へへっと笑いながら走り出した。

「…何で、あたしの部屋なのよっ!」

ルーシィの声が響き、ナツを追い掛けようと前を向いたその先には――


ホラッと、手を差し伸べて待っている彼が目に留まる。


「…あっ」



(来いよ!)

ナツと出会った頃の、あの言葉。
妖精の尻尾に連れてってくれた時のことを思い出して頬を染めてしまった。

自分でもわかる位、頬が熱い。
だが満面の笑顔で――ナツの温かくて大きな手を強く握った。



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