★かけがえのない存在(ナツの気持ち続編)
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(好き…ナツが、大好き)
ルーシィの“好き”がやっとわかった。
今まで近くに居過ぎて全く気づかなかった。
自分にとって“相棒のハッピー”イグニールからもらった“マフラー”…それから“妖精の尻尾の仲間”が大切だ!
けれど、一番大切で、何があっても離したくない存在(ひと)がオレには出来たんだ。
好きな“人”が出来ると、こんな気持ちになるんだな。
初めて知った気持ち。
アイツがいるだけで、…笑いかけてくれるだけで、こんなにも元気(パワー)をもらえる。
「…すきだ。ルーシィが…だいすきだ」
やっと気づいた。
しかし、肝心のルーシィは今どこにいるのだろうか?
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鱗模様のマフラーを靡かせて、金髪の嗅ぎ慣れた匂いを探りながら走り回る姿が目に映る。
「…あれ?ナツどこ行くの?」
突然名前を呼ばれて振り向くが、今彼が求めている声ではない。
「そういえば、さっきルーちゃんを見掛けてね。ナツを探してたよ!」
ギルドでルーシィとよく本の話題で盛り上がっているレビィだった。
本屋へ寄った帰りだろうか、分厚い本を何冊も抱えてこちらへ歩いてくる。
「オレもあいつ、探してんだけどよ…」
「そっか!それじゃ早く見つけてあげてね〜…ルーちゃん、ナツに会いたがってたから!」
(えへへ、…本当は違うけど、そう言った方が盛り上がるよね!)
レビィの言葉を聞いて嬉しそうに笑い、任せろと手を振って駆けて行った。
そんなナツを見ながらレビィも笑顔になるが、二人を羨ましく感じていたのであった。
「…よし、私も頑張ろう!」
そう呟いて――。
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「ハァ…ハァ、…ルーシィ。…見つけたぞ」
ナツの声に反応したルーシィは振り返り、満面の笑顔――ではなく、何故だか困っている様子で勢いよく右腕にしがみついてきた。
「…ナツぅ、今月分の家賃がぁ………仕事、行こうよ」
――あれ?予想外の台詞に肩を落とす。
右腕に感じる柔らかさと温もりに、珍しく顔を赤らめるナツの姿を受けて、
「えっ?…ナツ、顔赤いよ?」
珍しいものを見るかのような驚きを見せる。ルーシィの顔を見られず目を逸らす。
そんな彼を目にして、意識してしまったのかルーシィがパッと腕を離した。
自由になったその腕でナツは彼女の肩を掴み、引き寄せる。
「わわっ…ど、どうしたのナツ!?」
突然の彼の行動に驚き、目を丸くして見上げた。
いつも以上の至近距離で目が合った瞬間――
“チュッ”
額に口付け。
ボワァっと真っ赤な顔のルーシィを見ながら満足そうな笑顔で、ほのかに頬を染めた。
「…やっと捕まえたぞ、ルーシィ。…大好きだ」
ギュッと力強く抱きしめる。
数分経ったであろうか、良い雰囲気な二人の姿が目に留まる。
ルーシィはナツの胸の中で、スリスリして気持ち良さそうにしていた。
しかし、そんな雰囲気を壊すのも相変わらず――
「…おっ、そうだ!家賃が払えねえなら、オレん家に来れば良いんじゃねえの?」
さらっと爆弾発言。
「…な、何言ってるのよー!」
何故か怒り方に迫力がないように感じられた。
「良いじゃん!オレはイグニールに教えてもらえなかったことをたくさん知ることが出来た。…あの時おまえに会わなかったら、今のオレはいねえし、…ルーシィが好きだからその“好き”を大事にしてえ」
聞き間違いではないかと思ってしまうような台詞。治まっていた心臓がまた激しく鳴りだす。
「…ねぇ、ナツ…それって?」
緊張な面持ちで目の前の彼を見つめる。
「ん?じゃ、とりあえず一回泊まりに来るか?」
「…へ!?…何で、そういう展開かしら!?」
緊張した自分が馬鹿みたいだと、大きな溜め息を吐いていることにも気にせずに言葉を続けた。
「決定な!そんじゃ帰るぞ。…後で迎えに行くから準備して待ってろよ」
(勝手に)決まれば話は早い。
ナツらしいと、笑うルーシィ。
「…んっ!でも、ちょっと待って!…良く考えたら心の準備がぁ……って、何言ってるの、あたしぃ!?」
ナツの嬉しそうな笑顔が眩しい。
優しく触れてくれる大きな手を握り返し、まぁ良いかと慌てて走り出した。
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