★勇気を出して
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相変わらず不法侵入を繰り返し、今日もまたルーシィの部屋で寛いでいるナツ。


最近は部屋の中が静かだ。
ふと先程まで本を読んでいたルーシィが気になったのかチラッとそちらへ目線を向けると、
頬杖をついてナツの視線に全く気付かずに何かを考えているような様子を見せる。

「…ルーシィ?」
「…………」

返事が無かった為、彼女に近づきいつものように至近距離になったところで名前を呼んでみた。

「おい、ルーシィ!」

ナツの大声と、思わぬ近さに驚きながらあの台詞が出るかと思ったが、顔を赤らめ目線を外している。

「この間から何考えてんだよ、おまえ。変だぞ!」

普段のルーシィは怒っているのか笑っているのかわからないほど、賑やかでうるさいくらいだが、最近では妙に静か過ぎて逆に怖かった。


「…もう、あたしだって考え事ぐらいするわよ!…ナツにも悩み事とかあるでしょ?」
「オレは別に、ねえけど」

彼らしい答えだったが、今のルーシィには余裕がない。
突っ込むどころか、ただ溜息だけが残る。
そんな様子を見せる彼女を目にして、ナツは問い掛けた。

「…なやみごとって、何だ?」

思いがけないナツの言葉に対して戸惑うルーシィ。
いつもは興味なさそうに「ふ〜ん…」で終わるのに。

「おい!…何だよ、気になるじゃんか!」

ナツの台詞に思わず反応してしまった。

(ん?気になる…って、言ったかしら)

まぁ、ナツの事だから深い意味はないだろうと、考えるのはやめようと切り替えて一呼吸――。


「…す、好きな人が、いるのよ。………それで、気持ちを伝えたいけど勇気が出ないから」

恋愛に疎いナツに話しても理解できないだろうと思い、敢えて口にした。
案の定返ってきた言葉に呆れ顔。

「…好きな“ひと”?…“もの”じゃなくて、ひと、でも良いのか?」

はっ?…何を言っているのか、ナツがわからない、理解できない。

「まぁ…アンタらしいわよ、ね…」

情けないとでも言うような言葉と共に受けた態度に、ナツは気に障ったのか、一瞬眉がピクッと動いたような変化を感じた。

「あん?…好きなひとってことは…、人だろ?んじゃ、ルーシィは好きな“やつ”がいるってことだよな?」
「…だからさっきそう言ったでしょう…ってか、意味わかってるの?」
「ん〜?…よくわかんねえけど、何か大事なことのような気がしてならねえ…」

ナツの予想外の返事にドキッとしてしまった。
ルーシィの目線は、鱗模様のマフラーへ注がれる。

「…じゃ、…じゃーさ、ナツは」

頬を赤らめて、何か言いたそうなルーシィの様子にも気付かないナツは何を思ったのか――

「大事なことだからなあ、オレに出来ることっていったらルーシィの加勢とか、か?」

“ナツだから”と、普段は大して気にしていないが今回の場合は意味が違う。
そんな風に思えない。
いくら好きという意味を理解していないからって、でも、やはりナツだから…って受け入れるしかないのかしら?
複雑な気持ちであった。
だが、唇を噛んでグッと堪えつつ、応えるルーシィの姿が痛々しい。

「加勢?…応援、してくれるって事?」
「おう!ルーシィのためだろ?…ハッピーにも話してみるか、多い方が心強いだろ?」

わざと言っているのか。
…いや、思った事をそのままストレートに言葉にするナツだから、そんなはずはない。
ルーシィはこれ以上話すのは酷だと、話を変えようとした。
不意に壁に掛けられた時計が目に入り、深夜になることを告げている。

「もう遅いから」と何とか理由を付けて、目の前で元気に笑っているその人を追い払った。

「…ちぇ。何だよルーシィの奴!…いつも変だけど、最近はもっと変だぞ」

ブツブツ言いながらも、帰り際にハッピーへのお土産とちゃっかり自分の分も、もらえたからかすっかりご機嫌であった。







☆★☆★☆

翌日。

ギルドでルーシィを見掛けたナツ。

「おはよ、ルーシィ!」

声を掛けられたので、若干緊張気味だったが、朝の挨拶を交わす。

「おはよう、ナツ…」

いつも通りの挨拶、ホッとしたのも束の間でナツが大きな声で話してきた。

「好きなやつに、気持ち伝えたのか?」
「…っ!?」

突然何を言い出すのか、ナツの声に反応して近くにいたミラジェーン以外の人にも、もちろんギルド中が騒ぎ始めた。

「ぎゃあぁぁぁ…!!?ちょ、何言ってるのよぉ、みんながいるのに、…やだっナツのばかぁ…、もう知らないっ!!」

妖精の女王エルザ以上に恐いかもと、言われているルーシィだって、純情な女の子だ。
みんなの前で、特に噂好きのギルドで言われたら堪らない。
恥ずかしさのあまりその場には居られなくなったルーシィは外へと出て行った。

「おい、ルーシィ待てって!…オレ、何か変なこと言ったかよ?」

ルーシィを追いかけるナツ。
――あっけなく紋章の入った右手を掴まれてしまった。

「いや!…離して」

腕を振り上げ、必死に嫌がる彼女を目に留めて、ナツは苛々してきた。

「…何だよ。別に話したって良いじゃんか」
「…っ、良くないわよ!…もう、恥ずかしいじゃない。…ひどいよナツ」

怒っているよりも、今にも泣きそうなルーシィの前で。

「…それより、伝えたのかよ」

その場の空気を読めない彼はある意味、強敵だ。
ルーシィはキッと、ナツを睨み付けて負けるもんかとでも言うように口を開く。

「…言えるわけ、ないでしょ!」
「…なんでだ?そんな難しいことなのか?…好きなやつに“好きだ”と言えば良いことだろ?…違ぇのか?」

ナツとは思えない台詞に、少し気持ちが落ち着いてきた。

「…違わないけど、出来ないよ。…簡単には」

目を逸らし、ゆっくりと俯いて弱気なルーシィを見つめながらナツは言葉を続ける。

「ふ〜ん、…いつものルーシィじゃない、みたいだな」
「え?…あたしじゃないって、どういう意味?」
「…だからよお、鋭い突っ込みみたいな勢いで言えば良いんじゃねえのかなってさ、おまえらしいじゃん!
おっそういえば、こういう話をしてる時ってルーシィ笑わねえよな…、最近は変な顔ばかりしてるぞ!
…オレは、ルーシィの笑った顔の方が好きだぞ」

ナツにとっては何気なく言葉にした台詞だと思うが、ルーシィにとっては“ずっと欲しかったものをプレゼントされた”ような気分であった。
しかし、ルーシィは素直じゃない。自分が放つ言葉を虚しく感じてしまう。

「…変な顔って、どんな顔よ!?」


(今のあたしは、どんな顔をしているの…?)


怒ったような口調で、ナツに言いながら頬をぷっくりと膨らませていると、

「ホレ!やっぱ、変な顔じゃん!!」
「…っ!?…もう、何よナツってば」

ナツの所為でしょ!?と眉を吊り上げていたルーシィであったが、目の前で楽しそうに笑うナツを見続けていると不思議と笑みが零れる。
自然に笑い合う二人の姿。

「その調子で笑ってろよ!…ルーシィはその顔が一番だ」
「…ナツ」

どうしてそんな嬉しい言葉をくれるのかと涙が出そうになる。

「そんじゃ、ルーシィも機嫌が直ったことだし、オレはギルドに戻るぞ。………まあ、がんばれよ!」

ギルドへ向かって走り出そうとするナツだったが――
前に進まない。

なんだ?と、振り返って確かめようとするナツ。
マフラーを掴んでいたのは勿論ルーシィであったが何故か俯いて、顔が見えない。

「…うお!ルーシィ、どうした?(泣いてるのか?)」

無意識にだが、無性にルーシィの顔が見たいと手を伸ばし掛けたが、その人の声で遮られてしまった。

「…ナツ、聞いて」

真剣な眼差しでナツを見つめる、ルーシィ。

「おう!…なんだ?」

伸ばし掛けた手が名残惜しいように元の位置に戻ってきた。


(ずっと伝えたかった…この想い。もう胸が苦しいよ…)


「好、き…、ナツが大好き…」

勇気を出して、伝えたかった気持ち。
やっと言えた。





☆★☆★☆

うぅ……少々?(かなり)直しましたが、やはりお恥ずかしい(>_<)
でも、このルーシィと同じく私も勇気を出して初投稿したナツルーなので…記念の作品です。
甘いかなぁ。ふふ…(ニヤニヤ(笑))



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