NARUTO

お蔵入り作品たちのお墓


 サソリと買い出しに出かけた街で、どういう訳か見覚えのある人形が商店街の店先にぽつぽつと並んでいた。西洋のドールとは違い白粉をまぶしたような真っ白な肌、細く小さい黒目、着せられた色とりどりの着物。ついでどこからか慣れ親しんだ曲が流れてきたことで、ようやくそのちょっぴり恐ろしい光景の理由に思い当たる。

「ひな祭りかあ」
「もう2月の下旬だしな。俺らがガキの頃はんな余裕なかったが、この様子じゃ砂でもそれなりの規模で祝ってんじゃねぇか」

 ここは傀儡製作の盛んな砂隠れの里からもさほど離れていない位置であるためか、季節に合わせてお披露目されている人形はどれも精巧でよくできた作りになっている。しかし隣を歩く天才傀儡師の御眼鏡にはいまいち適わないようで、あっちの人形は目の色が悪いとかこっちの店のは関節の作りが甘すぎるとかぶちぶち溢していた。職人さんも殺人を前提とした人形作る変態にあれこれ言われたくないと思う。
 ふとすれ違った少女が歌っていた曲に、かつて前世の小学校で大流行していた替え歌が脳裏を流れた。

「……ほのおをつけましょばくだんにー」
「どっかの爆発馬鹿を思い出すからやめろ」
「どかんといっぱつはげあたまー」
「むしろ爆破に巻き込まれてハゲるだけで済んでんのかそいつは」
「ごーにんばやしはひとごろしー」
「初耳だわ」
「きょーうはかなしいおそうしきー」
「おい誰か殺されてんじゃねーか」

 地味にお互い楽しくなってきたが、歌うのを止めるとサソリはまた目に映るひな人形をあーだこーだと品評し始めた。うるせえ。どうにかこのちっさいおっさんを唸らせるような出来のものはないだろうかとあっちこっちに視線を走らせてみる。と、そこから少し離れた場所にある店の軒先に、素人にも分かるほど抜きんでて目を引く雛壇があった。
 きめ細やかな黒髪にそれぞれの人形が持つ丁寧な作りの小物。絢爛豪華な金の屏風に、女雛には赤系統の色で纏められた華やかな単。ちょいちょいと引っ張って相方を呼ぶと、朱色の段の上に据えられた人形たちを見てサソリもほう、と感嘆の声を上げる。自分で見せといてなんだが珍しいリアクションだ。

「……へえ。こんな辺鄙なところにある街にしちゃ悪くねえ品だな」
「このちっちゃいおっさんの偉そうな態度はどうにかならんのかね」
「でっかいおばさんは黙ってろ。……しかしまあその辺に置いてあったのとはデキが違うどころか、一線を画してんな。アレが特に」
「ああ、それは分かる」

 そう言って同時に、雛壇のとある部分を指差す。

「特にあの、」


「女雛が」「おひな様が」


「……」
「……」
「……サソリはおひな様って呼ぶんだな」
「……」
「……」
「……」
「……なんか可愛いな、お前」

 殴られた。

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -