魔法学園物語3







新学期を明日から控えた魔法学園。

帰寮してくる学生が、ちらほらと。





Z.A.F.T魔法学園物語





昨日あれからレイ先輩に個室へと案内された。
ラウンジから左右に伸びる階段の先に、それぞれの個室がある。
右が女子部屋。左が男子部屋へと続いている。

案内された部屋は一番つきあたりの部屋だった。
ドアを開けると、6畳の部屋だ。ゆったりとした広さだ(ベッドと机を本棚しか備え付けられていないからだと思うが)。


初日は結局、レイ先輩としか会話をしなかった。
今は春休み中で、レイ先輩以外は皆、まだ実家に帰っているらしい。

後から知ったことだが、レイ先輩は赤Zのクラス委員長らしく、私の入寮に合わせて二日も前から実家から出てきてもらったのだ。
改めて御礼を言い、今日は早めに部屋へと切り上げた。ちなみにシャワーはラウンジの奥にある。もちろん男女別。キッチンスペースは共有だが、それなりの広さがあるためブッキングすることはあまりないとのこと。



「明日の夕方には、他の赤Zの人たちが来るんだ、よね。」


ふう、と息を吐く。緊張して体が震える。
どんな人たちなんだろう。赤Zの人たちは。

仲良く、なれるのかな…。昨日のレイ先輩の様子から、クラス全員とは仲良くはなれない、と知った今、コハクは不安を一人抱えていた。



「あー。もう寝よっ。そんなの明日になってみなきゃわかんないし。」


先が見えないことをぐちぐち考えても仕方がないと、教わったのは母からだ。
布団を肩までぐい、と上げると疲れていたのかコハクはすぐ眠りについた。

















朝、目が覚めると枕元の携帯が指す時間は午後を越えていた。
びっくりして体を起こすと、頭がくらりとする。まさか…疲れていたからって10時間以上も寝てるなんて。

洗面を済ませ、明日から始まる学園生活に備え(選択科目を選ばなきゃいけない)なければ、自室へ戻ろうとコハクは洗面用具をポーチにしまい、談話室を横切ろうとした時だった。





「俺は聞いてねーよ!女が来るなんてっ!!」

「だから今、言ってるだろ。」

「レイっ!お前はいつもそうやって肝心なことを直前に言う癖やめろよ!」


ぎゃあぎゃあと怒鳴り声が聞こえ、コハクは吃驚しながら談話室を覗いた。と、そこに見えるのは―




「あっ!?…お前が、コハク・サエキか…?」



黒髪に明るい赤色の瞳をした男がコハクを睨みつける。


「…そう、ですけど…」


コハクは一瞬、怯んだ。あまりにも明るい赤色の瞳がまるで炎のようにギラギラと輝き、自分を見る。
次の瞬間、10メートルは離れていたはずの彼は、コハクが瞬きをしたほんの一瞬の刹那―目の前に立ちはだかった。


「!?」


きっと、瞬身魔法だろう。コハクは一瞬にして理解する。



「シン!」


レイ先輩も後を追うかのように私の前に一瞬で移動すると、「シン」と呼ぶ彼の肩に手を置く。まるで宥めるかのように。



「俺は、このクラスに女なんて…認めねえからなッ!」


「シン!やめろ!彼女は正式な試験を受け、校長の了承のもと赤Zに入学が決まったんだぞ。必要以上に仲良くしろとは言わないが、退け者のように扱いはするな!」

「…ちっ。帰寮そうそう嫌なモン見ちまったぜ…」


目の前で繰り広げられる出来ごとにコハクはついて行けず、ただ目を丸くするだけである。
やがてシンと呼ばれる男は、元の場所に飛ぶと自分の荷物を投げ捨てた床から広い、また再び姿を一瞬で消す。

ぽかん、と口を開けた私にレイ先輩はため息とともに説明を始める。




「今の奴は、シン・アスカだ。コハクの…1つ下だ。」

「はあ」

「…シンに代わって非礼を詫びる。急に女が自分と同じクラスに入ることについて行けないんだろう。男ばかりだったからな、このクラスは…」


だから直に慣れるだろう、それまで我慢してくれとレイ先輩は付け足す。






…あれ?





なんだか、不可解な点が…。


コハクは嫌な感じがした。私の聞き間違いじゃなかったら…




「あの、レイ先輩…」


「なんだ?」


恐る恐るコハクは口を開く。



「あの、1つ聞きたいんですが…今、『男ばかりだから』と仰いました?」


「ああ、そうだが?」


「も、もしかして…今赤Zには…私以外女性の学生はいないんですか…?」



まさかまさか…。

そういえば、先ほど使用した洗面室。男女別々になっていたが、明らかに他に学生がいるとは思えないほど使用感がなかった気がする。






「…言ってなかったか?他の女子学生はこの春、俺たちが春休みに入る前に皆、卒業したんだ。」



つまりつまり…。






「このクラス…女は、私だけ、なの…?」





コハクはあまりにも残酷な事実に絶句した。

時はもう、新学期開始間近な昼下がり。













第三話です。ちょこっとシン君登場させました。
シン君の性格からして、女性に慣れていないイメージ。それか女は尻に敷くイメージ。
まあ、王道ですが、「今まで男ばっかな場所に女が」って誰だってやっぱり気が引けますよね。
彼は率先して、ヒロインの嫌われキャラになってくれちゃいました(笑)





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