セトさんと日常 | ナノ



セトさんは保護者


『わーいっ!!海だよ海だよっ』


今日はメカクシ団の皆さんで海水浴に来ていた。人生で初めての海ということもあって、とてもはしゃいでいる私。シンタローは熱中症になりかけて倒れそうになっているが、後の皆は私同様いつもよりハイテンションだ。


「んー、そろそろお昼の時間っすから海の家にご飯買いに行くっすよ!!」

いつもメカクシ団でのお出掛けの時はバイトとか何とかで忙しく顔を出せないセトも、今日は珍しくオフらしい。爽やかスマイルを振り撒きながら皆にお昼を買いに行く事を提案していた。



―――――――――



結局、体調の優れないシンタローを一人荷物番として置いて、私達はお昼ご飯を買いに海の家へ行くことになった。



『わっ、ここに小さいカニがいるっ!!』

歩いてる途中、砂浜に小さなカニがいた。


しかし、混雑しているこの砂浜、カニは歩いて行く人に踏まれそうになっているではないか。


『な、何とか助けてあげないと…』



ふと左側に目を向けると、人が少ない岩場の影にちょっとした水溜まりを見つける。私は足元でよちよちしているカニを手で救い、その水溜まりまで運んでいってやった。


『上手くやってくんだよ』

着水したカニは、はじめしどろもどろしていたものの、ようやく落ち着いて水の中を歩き始めた。



『……ふぅ、よし、皆の所にいこ……アレ?』



ここでふと思い出した。



『………皆は、どこ?』

ヤバイヤバイこれはヤバイ、こんな人混みの中からメカクシ団の皆を見つけ出せる訳ないじゃんっ!!



カニを助け出す事を、お昼を買いにいこうとしていた皆には何も言ってない訳で。



#苗字#名前、いい歳した私、


みっ、皆とはぐれてしまいました……





『ぅえっ、うぇっ、ヒック…』



これからもう皆と会えないかも…


そんな焦りと寂しさで、私の目からは涙がこぼれ落ちる



……どうしよう……



そんな時だった。





「ここで、迷子のお知らせをします――――」



何処からともなく迷子のお知らせが聞こえてくる。ああ、ちいさい子がお母さんとはぐれちゃったのかな。



「――県――市からお越しの、#苗字#名前さん、#苗字#名前さん、保護者の方がお待ちです、至急―――」



一瞬にしてフリーズしてしまう。

私は#苗字#名前だし、住んでいる都道府県も市も同じだ。となると、保護者ってのは――誰だよ?いい歳して保護者とか言わねーだろ。おい。



とにかく、メカクシ団の誰かが私が迷子になったことに気がつき呼び出しをしてくれたのだろう。私はほっと胸を撫で下ろした。どうなるかと思ったよ。


目からこぼれ落ちた涙を拭う。私は呼び出された場所に小走りで向かうのであった




―――――――




「あっ、ナマエ!!探したっすよ、何処にいたんすか…」



その場所にはセトが居た。他の皆は何処かでお昼ご飯を食べているのだろう。明るい日差しを浴びたセトの笑顔は、いつもより爽やかに見えた。



『ごめんなさい…』


「気にしなくていいんすよ」


『それにしても保護者って凄く恥ずかしかった…もう子供じゃないのに』



「そうっすね………でもまあしょうがないじゃないっすか、俺はナマエの保護者って事にしとくっすよ」


ははっと笑い、私の頭にぽんぽん、と手を置く。



「よっし、皆待ってるっすから戻るっすよ!!」

『あっ、そうだね』


私はセトの横に並んで、皆が居るところへ向かおうとした。が、




―――――グイッ



セトに腕を引かれる。気がついたら、私と彼の手は繋がれていた。



『ちょっ、恥ずかしいよッ』

「でもナマエまたどっかいっちゃいそうっすよ、だから繋いどくっす」


なんせ、俺はナマエの保護者っすから



そう微笑んだ君の顔は、なんだかホッとできるものだった。





おぐさま、素敵な作品
ありがとうございました!