∴ キドさん、大好き! 「…は?」 キッチンでお菓子を作っていると思われる幼馴染みの木戸つぼみが、珍しく私の話を聞いていたのか、はたまた興味を示したのか…後者はないかなぁ。私が言った質問に対し馬鹿にするような口調で返してきた。 私は思わず携帯画面から顔を上げてキドを凝視した。相変わらず鋭い眼に一瞬怯んでしまったのは絶対カノには言わない。笑われる。 その僅かな間に、私の手にある画面には大きく失敗を表す文字が映し出されていた。 『あ、ゲームオーバー』 「…、すまん」 『いや、大丈夫だよー』 そうか、と一言溢したキドは相変わらず納得いかない表情で、まさかさっきのを聞き間違えたなんて思っているのでは、と自分失敗じゃん、いろんな意味でゲームオーバーじゃん!なんて感じつつ、もう一度彼女に問いかける。 『キドは、カノが好きなの?』 「ありえない」 キッパリ、と今度は断言した。 あーあ、カノ可哀想だねーと言いながらキッチンに立つキドに後ろから抱きついてみた。キドってば相変わらず細い、羨ましい。 「…どうしたんだ、突然」 『いやね?…何となく?』 「はぁ…お前なぁ…」 突拍子にそんなことをするなと少しばかり睨みながら言われた為素直にはーいと返事をしておいた。 『キドさん、大好きだよ』 「!…だから、突然そういう事を言ったりするなって、今言っただろ…」 『え、うん、いやだって、』 こっ恥ずかしい台詞を会話の最初で言うのは何だか嫌だったんだよ、と言えば、名前が俺に大好きだなんて言う日が来ようと思ってなかったと続けた。酷いよキドさん、私キド大好きって毎日思ってるんだからね。 『いつもありがとう。キド、大好きだよ!』 「…あぁ、俺も名前が大好きだよ」 逆崎さま、素敵な作品 ありがとうございました! |