∴ キドさんをうんと甘やかす 我らが団長、キドさんのことをソファーに座りながらなんとなしに一日目で追っていた時の話。 「カノ!掃除の邪魔だ、退け!!」 「キサラギ、洗濯物干すの手伝ってくれないか?」 「セト、夕飯が出来たからマリーを呼んできてくれ」 「おい、お前も少しは動けカノ!」 キドさんは休むということを知らないのだろうか。それほど彼女は朝から晩まで世話しなく動いては家事をこなしている。まあ、最も殆どカノさんが邪魔をしているから余計に疲れるのだろうけど。 『カノさんカノさん』 「ん?なぁに、名前ちゃん」 『キドさん、カノさんが家事の邪魔するから疲れてるみたいですよ?』 次の日、そうカノさんに釘を刺したのにも関わらず、彼はキドさんの邪魔をするのをやめなかった。あの人話聞いてたの? 「カノ!お前は毎度毎度邪魔だと言ってるだろ!」 あーあ。遂に怒られちゃったよ。それでもいつも通りニコニコして「邪魔をするのは僕の生き甲斐だから」って……ああ、キドさんに殴られた。 『カノさん。自業自得、乙ってやつですね』 「名前ちゃん…酷い」 『私ちゃんと忠告したんですからね』 お腹を抱えて床に倒れているカノさんに一喝。 さてと。それじゃあ、いつも皆のために頑張ってくれているキドさんを甘やかしに行きますか。 『あっ、キドさん!』 「どうした名前?」 丁度洗濯籠を持って洗濯物を干しに行こうとしているキドさんを発見した。ここからが私の出番。 『洗濯物干しておくので、キドさんは休んでいてください』 「え?でも…」 『いいからいいから!』 洗濯籠を奪い、キドさんをソファーに押しやる。 「おい名前!」 『ゆっくりしててくださいね!』 なかなか腑に落ちないと言ったような顔のキドさんを残して、洗濯物を干しにいく。帰ってきた時にはカノさんが復活していて、またキドさんにちょっかいを出していた。 『キドさん、洗濯物干し終わりました!』 「あ、ああ。ありがとう」 『ついでにカノさんも干しておきますね!』 「…え?待って名前ちゃん、それどういうこと!?」 騒ぐカノさんを無視して、私はキドさんに話しかける。 「今日はご飯も私が作りますからね」 『…名前、今日は一体どうしたんだ?』 「いつも頑張ってるキドさんを、甘やかそうと思いまして!」 私がそう言うとキドさんは多少驚いた顔をして、ありがとうと言ってくれた。そして「でも」と続ける。 「動いてないとなんだか落ち着かない。やっぱり俺も手伝うよ」 って、言ってくれた。 本当は私がキドさんの代わりに今日一日家事をやるつもりだったんだけど、そうだよね。それでこそキドさんだ。 『じゃあ、お願いします!』 (それじゃ私はカノさん干してきますね)(ああ、よろしく頼む)(ちょ、二人とも待って!) きりえさま、素敵な作品 ありがとうございました! |