君を呼ぶ声

「キャー、ヤダもー、ジェットさんったらぁ」
 パブで侍らせた行きずりの女達は、アルコールも手伝ってかご機嫌で、ジェット自身も浴びるように酒を飲んでいた。ドロドロに意識も溶けていく。
 ──……ト。
 馬鹿みたいだ。
 これで幾度目だろうか、最早数える事すら止めた。
 お持ち帰りした女を抱く。むせ返るような甘ったるさに更に酔う。気持ちが良くて、何度も何度も。
 ──……ット。
 分かっている。寂しさを紛らわす為の行為だと。
 ──……ジェット。
 少なくとも、その時は空っぽだった心の隙間は埋められた。楽しさの後の虚しさ。
 思い出す笑顔は掠れていく。
 ──シェリル。
 ずっと笑ってくれていたのに。
「シェリル……ッ」
 何度もその名を叫ぶ。
 愛しい、好きだった。大好きだった。
 心底愛した、ただひとりの人。これからも、この先も……──。

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